チェーンソーによる伐木等特別教育は、チェーンソーを使って立木の伐木・かかり木の処理・造材を行う業務に労働者を就かせるとき、事業者が行わなければならない特別教育です(労働安全衛生規則 第36条第8号、労働安全衛生法 第59条第3項)。科目と時間は厚生労働省の告示(安全衛生特別教育規程 第10条)で決められており、学科9時間・実技9時間の合計18時間以上です。
この特別教育は、2019年(平成31年)2月12日公布の改正で、木の太さなどで分かれていた2つの特別教育が統合され、時間数が増えました(特別教育の部分は2020年〈令和2年〉8月1日から適用)。この記事では、対象となる業務・カリキュラム・改正前に受講した人の扱い・罰則と、会社として受講を手配するときの段取りを、厚生労働省の告示と資料にもとづいて解説します。
ご不明点はよくある質問、個別のご相談は問い合わせページからどうぞ。
■ この記事でわかること
- チェーンソーの特別教育が必要な業務と、根拠条文
- 学科9時間・実技9時間(合計18時間)のカリキュラム
- 2020年8月に適用された改正の内容と、改正前に受講した人の扱い
- 特別教育を行わずに作業させたときの罰則
- オンライン受講の可否と、当センターの出張講習の費用・条件
■ チェーンソー特別教育の早見表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠条文 | 労働安全衛生規則 第36条第8号/労働安全衛生法 第59条第3項 |
| カリキュラムの根拠 | 安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)第10条「伐木等の業務に係る特別教育」 |
| 対象となる業務 | チェーンソーを用いて行う立木の伐木、かかり木の処理、造材の業務 |
| 対象となる業種 | 林業に限らず、伐木作業等を行うすべての業種(土木工事業・造園工事業など) |
| 教育の時間 | 学科4科目・9時間以上/実技3科目・9時間以上/合計18時間以上 |
| 改正の適用日 | 2020年(令和2年)8月1日(特別教育の統合・時間数の見直し) |
| 罰則 | 特別教育を行わずに業務に就かせると、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(労働安全衛生法 第119条第1号)・両罰規定(同法 第122条) |
| 記録の保存 | 受講者・科目等の記録を作成して3年間保存(労働安全衛生規則 第38条) |
■ チェーンソーによる伐木等特別教育とは
チェーンソーによる伐木等特別教育は、チェーンソーを使う伐木・造材の作業で起きる災害を防ぐため、作業に必要な知識と技能を身につけさせる教育です。厚生労働省の資料では、林業の死亡災害の約6割がチェーンソーによる伐木作業中に発生しているとされています。
▶ 特別教育が必要な業務は?
結論として、チェーンソーで立木の伐木・かかり木の処理・造材のいずれかを行う業務に就かせるなら特別教育が必要です(労働安全衛生規則 第36条第8号)。2020年7月までは、胸高直径70cm以上の立木の伐木などを対象とする特別教育(旧第8号)と、それ以外のチェーンソーによる伐木等の特別教育(旧第8号の2)に分かれていましたが、改正で一本化されました。現在は木の太さによって教育の種類が変わることはありません。倒した木を玉切りする造材だけを行う場合も対象業務に含まれます。
▶ 林業以外の会社も対象?
林業以外でも、チェーンソーで伐木等を行うなら業種を問わず対象です。厚生労働省の資料では、伐木作業等を行うすべての業種(土木工事業、造園工事業など)が対象と示されています。道路や河川の支障木の伐採、造成前の立木の処理、公園・ゴルフ場の樹木管理など、林業以外の現場でもチェーンソーを使う作業は少なくありません。業種ごとに必要な教育の全体像は林業・造園業で必要な資格・特別教育一覧で整理しています。
▶ 免許や技能講習とは何が違う?
特別教育は、事業者が労働者に行う教育で、国家試験のある免許や、登録教習機関で受ける技能講習とは区分が異なります。試験に合格して取る資格ではなく、告示で決められた科目と時間の教育を修了することで、その業務に就けるようになります。区分の違いは特別教育と技能講習の違いで詳しく解説しています。
【実務ポイント】
チェーンソーとあわせて、刈払機や振動工具を使う作業がある現場では、それぞれ別の教育が用意されています。作業内容に合わせて、刈払機取扱作業者安全衛生教育や振動工具取扱作業者安全衛生教育の要否もあわせて確認しておくと手配がまとまります。
■ カリキュラム:学科9時間・実技9時間(合計18時間)
特別教育は学科4科目・実技3科目で、それぞれ告示で定められた時間以上行います(安全衛生特別教育規程 第10条)。実技では、実際にチェーンソーを使って伐木・造材や点検整備を行います。
▶ 学科教育(4科目・9時間)
学科教育は4科目・合計9時間以上で、伐木等作業の知識が最も長い4時間です。
| 科目 | 主な範囲 | 時間 |
|---|---|---|
| 伐木等作業に関する知識 | 伐倒の方法/伐倒の合図/退避の方法/かかり木の種類とその処理/造材の方法/下肢の切創防止用保護衣等の着用 | 4時間 |
| チェーンソーに関する知識 | チェーンソーの種類・構造・取扱い方法/点検・整備の方法/ソーチェーンの目立ての方法 | 2時間 |
| 振動障害及びその予防に関する知識 | 振動障害の原因と症状/振動障害の予防措置 | 2時間 |
| 関係法令 | 労働安全衛生法・同法施行令・労働安全衛生規則の関係条項 | 1時間 |
| 合計 | 9時間以上 | |
▶ 実技教育(3科目・9時間)
実技教育は3科目・合計9時間以上で、伐木等の方法の5時間には下肢の切創防止用保護衣等の着用も含まれます。
| 科目 | 主な範囲 | 時間 |
|---|---|---|
| 伐木等の方法 | 伐木の方法/かかり木の処理の方法/造材の方法/下肢の切創防止用保護衣等の着用 | 5時間 |
| チェーンソーの操作 | 基本操作/応用操作 | 2時間 |
| チェーンソーの点検及び整備 | 点検・整備の方法/ソーチェーンの目立ての方法 | 2時間 |
| 合計 | 9時間以上 | |
合計18時間以上の教育のため、1日で終わる講習ではなく、複数日の日程を組むことになります。作業員が現場を離れる日数も含めて、早めに計画しておくと確実です。
■ 2019年公布・2020年8月適用の改正と、改正前に受講した人の扱い
伐木作業の死亡災害が減らないことを受けて、2019年(平成31年)2月12日に労働安全衛生規則の改正省令(平成31年厚生労働省令第11号)が公布されました。伐木作業のルールの強化は2019年(令和元年)8月1日から、特別教育の見直しは2020年(令和2年)8月1日から適用されています。
▶ 特別教育の何が変わった?
結論として、木の太さ等で分かれていた2つの特別教育が統合され、時間数が増えました。改正後のカリキュラムでは、学科の「伐木等作業に関する知識」に造材の方法と下肢の切創防止用保護衣等の着用が加わり、実技の「伐木等の方法」にも造材と保護衣等の着用が含まれています。
▶ 改正前に受講した人は補講が必要?
改正前の特別教育だけを修了した人は、不足する科目の受講(いわゆる補講)が必要です。厚生労働省の資料では、改正前の第8号または第8号の2の特別教育を修了した人は、修了した区分に応じて改正後の科目の一部の受講を省略できるとされており、省略できない科目を受講することで改正後の特別教育を修了したことになります。京都府の案内では、補講を受けないと2020年8月1日以降はチェーンソーによる伐木等の業務に従事できなくなると周知されています。
| 改正前に修了した教育 | 省略の扱い |
|---|---|
| 旧第8号の特別教育(チェーンソーに関する知識・振動障害の科目を含む) | 修了した科目に応じて一部を省略できる |
| 旧第8号の特別教育(チェーンソーに関する知識・振動障害の科目を除く) | 修了した科目に応じて一部を省略できる |
| 旧第8号の2の特別教育(チェーンソーを用いて行う立木の伐木等) | 修了した科目に応じて一部を省略できる |
省略できる科目と残る時間は、改正前に修了した区分によって異なります。また、2020年8月1日より前に改正後の科目の全部または一部を受講していた場合、その科目を適用日以降に受け直す必要はないとされています。
【注意】
修了証の日付が2020年7月以前の作業員がいる場合は、補講を修了した記録があるかを確認してください。どの区分で受講したかがわからないときは、受講した教育機関に修了した科目と時間を問い合わせると確実です。
▶ 同時に強化された伐木作業のルール
2019年8月1日からは、伐木作業そのもののルールも強化されました。特別教育の実技で扱う内容と重なるため、現場の作業手順もあわせて見直しておきましょう。
| 項目 | 主な内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 受け口・追い口 | 受け口を作る立木を胸高直径40cm以上から20cm以上に拡大/適当な深さの追い口と、適当な幅の切り残し(つる)の確保 | 労働安全衛生規則 第477条 |
| かかり木の処理 | かかり木は速やかに処理する/かかられている木の伐倒、浴びせ倒しの禁止 | 労働安全衛生規則 第478条 |
| 立入禁止 | 伐倒しようとする立木を中心に、樹高の2倍を半径とする円の内側に、伐倒する者以外の労働者を立ち入らせない | 労働安全衛生規則 第481条 |
| 下肢の切創防止用保護衣 | チェーンソーによる伐木等の作業では、事業者は保護衣を着用させ、労働者も着用する | 労働安全衛生規則 第485条 |
厚生労働省の資料では、下肢の切創防止用保護衣として、JIS T8125-2に適合する防護ズボンなどが示されています。作業の詳しい安全対策は、厚生労働省の「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」にまとめられています。
■ 特別教育を受けさせないと罰則はある?
特別教育を行わずにチェーンソーによる伐木等の業務に就かせた場合は、労働安全衛生法 第59条第3項の違反として罰則の対象になります。
【違反リスク】
労働安全衛生法 第119条第1号では、第59条第3項に違反した者は6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金とされ、同法 第122条の両罰規定により法人にも罰金刑が科され得ます。罰則が実際にどう適用されるかは事案ごとに判断されるため、詳しくは所轄の労働基準監督署にご確認ください。会社としてのリスクは特別教育を受けさせないと会社はどうなる?でも解説しています。
新しく伐木作業に入る人、改正前の教育だけを修了している人、他社から移ってきた人の修了状況をそろえておけば、罰則のリスクを避けると同時に、現場で作業を任せられる人を把握できます。
伐採の工期までに作業員全員の特別教育や補講が間に合うか不安なら、お電話でご相談ください。
📞 042-497-8840 に電話して相談する(相談無料・年中無休・7:00〜21:00)
作業内容をうかがい、必要な教育と受講方法をご案内します。
■ チェーンソーの特別教育はオンラインで受講できる?
当センターでは、チェーンソーによる伐木等特別教育をオンラインでは実施しておらず、出張講習のみで行っています。この特別教育には、実際にチェーンソーを使う実技(伐木等の方法・チェーンソーの操作・点検及び整備)が合計9時間以上含まれるため、講師が現地にうかがい、受講者がそろった場所で実施します。
「チェーンソーの講習をオンラインで済ませたい」というご相談もいただきますが、当センターでお受けできるのは出張講習です。会場や実技の場所の考え方は、ご相談時に現場の状況をうかがったうえでご提案します。
■ 当センターのチェーンソー特別教育(費用・条件)
当センターのチェーンソーによる伐木等特別教育は、1名あたり13,000円〜(税込・教材費・修了証発行費込み)の出張講習です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 料金 | 1名あたり13,000円〜(税込・教材費・修了証発行費込み) |
| 受講方法 | 出張講習のみ(オンライン不可) |
| 人数の目安 | 関東1都6県は5名様から/遠方は20名様以上が目安 |
| 出張費用 | 関東1都6県は交通費・宿泊費・出張基本費なし |
| 日程・会場 | ご相談時にご提案 |
少人数の場合や遠方の場合は、料金が上がることがあります。受講人数や開催地に応じた費用は料金シミュレーターで概算を確認できます。出張講習の詳しい流れは出張講習のご案内をご覧ください。
▶ お申込みから講習日までの流れ
お申込みは、お問い合わせからお見積もり、お振込みを経て講習日が確定する4段階です。
- お問い合わせ(受講人数・開催地・作業内容・希望時期をお伝えください)
- お見積もり(日程と会場もあわせてご提案します)
- お振込み
- 講習日の確定
受講人数の変更は講習日の3日前まで承ります。前日のキャンセルは原則としてお受けできません。
■ よくある質問
▶ Q. 修了証に有効期限はありますか?
法令に有効期限の定めはありません。ただし、改正前の教育だけを修了している人は、補講を修了しているかを確認する必要があります。詳しくは特別教育に有効期限はある?をご覧ください。
▶ Q. 細い木を切るだけでも必要ですか?
必要です。2020年8月の改正で木の太さによる区分はなくなり、チェーンソーを用いて行う立木の伐木・かかり木の処理・造材の業務であれば、同じ特別教育の対象です。
▶ Q. 会社で保存しておく記録はありますか?
特別教育を行った事業者は、受講者・科目等の記録を作成し、3年間保存する必要があります(労働安全衛生規則 第38条)。記録の残し方は安全衛生教育の記録の保存期間で解説しています。
▶ Q. オンラインで受講できますか?
当センターでは、チェーンソーによる伐木等特別教育は出張講習のみで、オンラインでは受講できません。関東1都6県は5名様から、講師がうかがって実施します。
■ 伐木作業の前のチェックリスト
- チェーンソーで伐木・かかり木の処理・造材を行う作業員を洗い出した
- 全員が改正後(2020年8月以降の基準)の特別教育を修了している
- 2020年7月以前に修了した作業員は、補講の修了を確認した
- 下肢の切創防止用保護衣を全員分用意した(労働安全衛生規則 第485条)
- 伐倒する立木の樹高の2倍の範囲の立入禁止と、伐倒の合図の方法を決めた
- 特別教育の記録(受講者・科目等)を3年間保存する方法を決めた
■ まとめ
チェーンソーによる伐木等特別教育は、チェーンソーで立木の伐木・かかり木の処理・造材を行う業務に就かせるときに必要な特別教育で、学科9時間・実技9時間の合計18時間以上です(労働安全衛生規則 第36条第8号、安全衛生特別教育規程 第10条)。行わずに業務に就かせると、労働安全衛生法の罰則の対象になります。
2020年8月の改正前に受講した人は、補講の修了も確認が必要です。伐採の予定が決まったら、対象者の修了状況を確認し、複数日にわたる講習の日程を早めに確保しておきましょう。
■ 関連する特別教育・安全衛生教育
■ 講習のお申込み・ご相談
チェーンソーによる伐木等特別教育のお申込み・ご相談は、出張講習の案内ページまたは問い合わせページから受け付けています。
受講人数や日程が決まっていない段階でも、お見積もり・日程のご相談を承ります。
📞 042-497-8840 に電話して相談する(相談無料・年中無休・7:00〜21:00)
出張講習(関東1都6県は5名様から)として、日程と会場をご提案します。
■ 参考情報・公式リソース
| サイト名 | 概要 | リンク |
|---|---|---|
| e-Gov法令検索|労働安全衛生規則 | 第36条・第38条・第477条・第478条・第481条・第485条の条文 | 公式サイト |
| e-Gov法令検索|労働安全衛生法 | 第59条・第119条・第122条の条文 | 公式サイト |
| 厚生労働省|安全衛生特別教育規程 | 第10条「伐木等の業務に係る特別教育」の科目・範囲・時間 | 公式サイト |
| 厚生労働省|伐木等作業の労働災害防止(改正の概要) | 改正の背景・特別教育の統合・受講を省略できる条件・伐木作業の規制 | 公式サイト |
| 厚生労働省|伐木作業等の労働災害防止(リーフレット) | 施行日・特別教育の科目・保護衣・受け口等の規制 | 公式サイト |
| 厚生労働省|チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン | ガイドラインの改正内容と施行日 | 公式サイト |
| 青森労働局|伐木作業等の安全対策の規制が変わります | 改正の周知・リーフレット | 公式サイト |
| 厚生労働省|職場のあんぜんサイト | 安全衛生・労働災害の情報 | 公式サイト |
