皮膚等障害化学物質とは、皮膚や眼に障害を与えるおそれ、または皮膚から吸収されて健康障害を生ずるおそれが明らかな化学物質として厚生労働大臣が定めるものです。これを製造し、または取り扱う業務では、2024年4月1日から、不浸透性の保護衣・保護手袋・履物・保護眼鏡などの保護具を労働者に使用させることが義務になりました(労働安全衛生規則 第594条の2)。
この記事では、対象となる化学物質の範囲(皮膚刺激性有害物質・皮膚吸収性有害物質)、義務と努力義務の違い、施行の段階、厚生労働省のマニュアルにもとづく保護手袋の選び方、化学物質管理者・保護具着用管理責任者との関係、罰則の扱いを、法令の条文と厚生労働省の資料(いずれも2026年11月4日に確認)をもとに整理しました。
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■ この記事でわかること
- 皮膚等障害化学物質の定義と、皮膚刺激性有害物質・皮膚吸収性有害物質の違い
- 不浸透性の保護具の使用義務(安衛則 第594条の2)と努力義務(第594条の3)の範囲
- 2023年4月1日の努力義務から2024年4月1日の義務への段階と、対象物質の追加
- 耐透過性・破過時間など、保護手袋を選ぶときの考え方
- 化学物質管理者・保護具着用管理責任者の役割と、罰則(6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)
■ 皮膚等障害化学物質の早見表
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 対象物 | 皮膚・眼に障害を与えるおそれ、または皮膚から吸収・侵入して健康障害を生ずるおそれが明らかな物として厚生労働大臣が定めるもの(含有する製剤を含む) | 安衛則 第594条の2第1項 |
| 物質の区分 | 皮膚刺激性有害物質/皮膚吸収性有害物質 | 令和5年7月4日付け基発0704第1号 |
| 事業者の義務 | 不浸透性の保護衣、保護手袋、履物または保護眼鏡等、適切な保護具を使用させる | 安衛則 第594条の2第1項 |
| 除外される業務 | 法令で保護具の使用が義務づけられている業務、皮膚等障害化学物質等を密閉して製造・取扱う業務 | 安衛則 第594条の2第1項 |
| 請負人 | 保護具を使用する必要がある旨を周知させる(義務) | 安衛則 第594条の2第2項 |
| それ以外の化学物質 | 健康障害のおそれがないことが明らかなものを除き、保護具の使用に努める(努力義務) | 安衛則 第594条の3 |
| 施行 | 2023年4月1日から努力義務、2024年4月1日から義務 | 令和4年5月31日付け基発0531第9号 |
| 製剤の裾切値 | 原則1重量%未満は非該当(発がん性区分1等は0.1%、生殖毒性区分1は0.3%) | 基発0704第1号 |
| 保護具の管理 | 化学物質管理者、保護具着用管理責任者(いずれも14日以内に選任) | 安衛則 第12条の5・第12条の6 |
■ 皮膚等障害化学物質とは
結論として、皮膚等障害化学物質は「皮膚に付くと危ない」ことが明らかな化学物質を、国があらかじめ示したものです。労働安全衛生規則 第594条の2第1項は、化学物質または化学物質を含有する製剤のうち、「皮膚若しくは眼に障害を与えるおそれ又は皮膚から吸収され、若しくは皮膚に侵入して、健康障害を生ずるおそれがあることが明らかな物として厚生労働大臣が定めるもの」を、まとめて「皮膚等障害化学物質等」と呼んでいます。
化学物質による健康障害というと、蒸気や粉じんを吸い込む「吸入」を思い浮かべがちです。しかし、皮膚に付いて炎症や薬傷を起こすもの、眼に入って重い障害を残すもの、皮膚から体内に吸収されて全身に影響するものもあります。こうした経路を防ぐために、保護具の使用を事業者に義務づけたのがこの規定です。
▶ 皮膚刺激性有害物質
結論として、皮膚刺激性有害物質は「皮膚または眼に障害を与えるおそれが明らかな化学物質」です(基発0704第1号)。国のGHS分類(化学品の分類と表示の国際的なルールにもとづく分類)で、次のいずれかが区分1とされたものが該当します。
- 皮膚腐食性・刺激性
- 眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性
- 呼吸器感作性または皮膚感作性
施行通達(令和4年5月31日付け基発0531第9号 第4の8(2))でも、GHS分類と譲渡提供者のSDSなどの情報をもとに判断し、上の3項目のいずれかが区分1のものが含まれると説明されています。
▶ 皮膚吸収性有害物質
結論として、皮膚吸収性有害物質は「皮膚から吸収され、または皮膚に侵入して、健康障害を生ずるおそれが明らかな化学物質」です(基発0704第1号)。通達では、次のいずれかに当たるものが示されています。
- GHS分類で健康有害性があるとされ、濃度基準値(安衛則 第577条の2第2項の基準)またはACGIHなどの職業ばく露限界値が設定されていて、ヒトの経皮ばく露による健康障害の情報、動物の経皮ばく露による毒性の情報などがあるもの
- GHS分類で、経皮ばく露によりヒトまたは動物に発がん性(特に皮膚発がん)を示すことが知られているもの
- 濃度基準値等が設定されておらず、動物の経皮急性毒性試験で急性毒性(経皮)が区分1のもの
皮膚刺激性有害物質・皮膚吸収性有害物質のどちらも、特定化学物質障害予防規則(特化則)などの特別規則で、すでに不浸透性の保護衣等の使用が義務づけられている物は除かれています。これらは特別規則の側で保護具の義務が定められているためです。
▶ 製剤(混合物)の裾切値
結論として、製剤に含まれる量が一定の値(裾切値)未満なら、皮膚等障害化学物質等に該当しないものとして扱います(基発0704第1号)。値は重量パーセントで次のとおりです。
| 区分 | 裾切値(重量%) |
|---|---|
| 皮膚刺激性有害物質 | 1% |
| 皮膚吸収性有害物質(原則) | 1% |
| 皮膚吸収性有害物質のうち生殖細胞変異原性区分1・発がん性区分1 | 0.1% |
| 皮膚吸収性有害物質のうち生殖毒性区分1 | 0.3% |
洗浄剤、塗料、接着剤、はく離剤などの混合物は、成分ごとに含有量を確認します。SDSの「組成及び成分情報」の項目に記載された成分と濃度を、次に紹介する一覧と照らし合わせてください。
■ 対象物質の一覧はどこで確認する?
結論として、皮膚等障害化学物質の対象物質は、厚生労働省が公表している「使用義務物質一覧」(Excel)で確認します。法令の条文には物質名が並んでいないため、この一覧とSDSを照らし合わせるのが実務の基本です。
▶ 一覧が公開されている場所
結論として、一覧は厚生労働省の「化学物質による労働災害防止のための新たな規制について」のページで公開されています。リンク名は「皮膚等障害化学物質(労働安全衛生規則第594条の2及び特別規則に基づく不浸透性の保護具等の使用義務物質一覧)」です。厚生労働省の職場のあんぜんサイトの「皮膚等障害化学物質」のページにも一覧が掲載されていますが、2026年11月4日時点では厚生労働省のページの一覧より前の版(令和7年10月10日修正)です。最新版は厚生労働省のページで確認してください。
▶ 一覧の読み方(皮膚刺激性・皮膚吸収性・特別規則)
結論として、一覧に載っている物質は、大きく3つの種類に分けて考えると読みやすくなります。対象物質の通達(基発0704第1号)では、厚生労働省のホームページで次の一覧を公表するとしています。
| 一覧に含まれるもの | 保護具の根拠 |
|---|---|
| 皮膚吸収性有害物質 | 安衛則 第594条の2(不浸透性の保護具の義務) |
| 国のGHS分類結果がある皮膚刺激性有害物質 | 安衛則 第594条の2(不浸透性の保護具の義務) |
| 特別規則で不浸透性の保護衣等の使用が義務づけられている物質 | 特化則などの各特別規則 |
自社の製品に含まれる成分が一覧にあったら、その物質が皮膚刺激性か皮膚吸収性か、特別規則の物質かを確認します。皮膚刺激性有害物質は皮膚や眼への直接の障害、皮膚吸収性有害物質は皮膚から体内に入ることによる健康障害に注意が必要な物質です。どちらに当たるかで、保護眼鏡の重要度や手袋の選び方の重点が変わります。
▶ 裾切値と、2027年4月1日の追加分
結論として、成分が一覧にあっても、製剤中の含有量が裾切値未満なら非該当の扱いです(原則1重量%、発がん性区分1などは0.1%、生殖毒性区分1は0.3%。基発0704第1号)。SDSの含有量と、上の裾切値の表を照らし合わせてください。同じ物質が複数の区分(たとえば生殖毒性区分1と発がん性区分1)に当たる場合は、低いほうの裾切値で判断すると安全側です。
一覧は、国のGHS分類の見直しや新しい知見によって更新されます。2026年11月4日時点で厚生労働省のページに掲載されている一覧は「令和8年4月1日更新、令和9年4月1日適用物質の追加」とされ、2027年(令和9年)4月1日から対象になる物質も含まれています。いま非該当の物質でも、2027年4月1日から対象になる場合があります。物質数は更新のたびに変わるため、この記事では示しません。一覧が更新されたら、SDSとの照らし合わせをやり直してください。
■ 不浸透性の保護具の使用義務(安衛則 第594条の2)
結論として、皮膚等障害化学物質等を製造し、または取り扱う業務に労働者を従事させるときは、事業者は「不浸透性の保護衣、保護手袋、履物又は保護眼鏡等適切な保護具を使用させなければならない」とされています(労働安全衛生規則 第594条の2第1項)。「使用させるよう努める」ではなく、使用させる義務です。
▶ 対象となる業務と除外される業務
結論として、皮膚等障害化学物質等を「製造し、又は取り扱う業務」が広く対象で、業種による限定はありません。製造業の配合・充填・洗浄、建設業の塗装・防水・接着、清掃業での薬剤を使った洗浄なども、扱う物が皮膚等障害化学物質等に当たれば対象になり得ます。
ただし、次の業務は第594条の2の対象から除かれています(同条第1項の括弧書き)。
- 労働安全衛生法とこれにもとづく命令(特化則・有機則など)の規定で、すでに労働者に保護具を使用させなければならない業務
- 皮膚等障害化学物質等を密閉して製造し、または取り扱う業務
特別規則で保護具が義務づけられている業務は、その特別規則の規定に従います。有機溶剤や特定化学物質を扱う職場では、第594条の2と特別規則の両方を確認しておくと漏れを防げます。
▶ 「不浸透性」の保護具とは
結論として、不浸透性とは、化学物質が保護具の材料を通り抜けない性能のことです。厚生労働省の「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」では、「不浸透性」はJIS T 8116で定義する「透過」と「浸透」のどちらも含むと説明されています。
| 用語 | 意味(選定マニュアルの定義) |
|---|---|
| 透過 | 材料表面に接触した化学物質が吸収され、内部に分子レベルで拡散を起こし、裏面から離脱する現象 |
| 浸透 | 開閉部、縫合部、多孔質材料及びその他の不完全な部分などを通過する化学物質の流れ |
つまり、手袋に穴やすき間がなくても、材料そのものを化学物質がしみ通る「透過」が起こることがあります。一般的な作業用手袋や、化学物質への性能が確認されていない手袋では、不浸透性の保護具とはいえない場合がある点に注意が必要です。
▶ 保護具の種類(保護衣・保護手袋・履物・保護眼鏡)
結論として、条文は「保護衣、保護手袋、履物又は保護眼鏡等」を例に挙げ、作業に応じた「適切な保護具」を使用させるよう求めています。どの部位に化学物質が付くおそれがあるかを作業ごとに確認し、必要な保護具を組み合わせます。
- 保護手袋:化学防護手袋。手は化学物質に最も触れやすい部位
- 保護衣:化学防護服。ばく露する部位が限られる場合は部分防護服、それ以外は全身防護服(選定マニュアル)
- 保護眼鏡:飛沫が入りにくいゴグル形を優先して選ぶ。使用量が少ないなどリスクが管理できる場合はスペクタクル形も可能(選定マニュアル)
- 履物:化学防護長靴。必要かどうかはリスクアセスメントで判断する(選定マニュアル)
▶ 請負人への周知も義務
結論として、第594条の2第1項の業務の一部を請負人に請け負わせるときは、その請負人に対し、同項の保護具を使用する必要があることを周知させなければなりません(同条第2項)。協力会社や一人親方に作業の一部を任せる場合も、保護具が必要なことを書面や打合せで伝えておきましょう。
■ それ以外の化学物質は努力義務(安衛則 第594条の3)
結論として、皮膚等障害化学物質等に当たらない化学物質でも、「健康障害を生ずるおそれがないことが明らかなもの」でなければ、保護衣・保護手袋・履物・保護眼鏡等の適切な保護具を使用させるよう努めなければなりません(労働安全衛生規則 第594条の3第1項・努力義務)。請負人への周知も努力義務です(同条第2項)。
第594条の3の対象から除かれるものには、皮膚等障害化学物質等と、「皮膚若しくは眼に障害を与えるおそれ又は皮膚から吸収され、若しくは皮膚に侵入して、健康障害を生ずるおそれがないことが明らかなもの」があります。また、第594条の2と同じく、法令の規定で保護具の使用が義務づけられている業務と、密閉して製造し、または取り扱う業務も除かれています(同条第1項の括弧書き)。施行通達(基発0531第9号 第3の6)では、後者には、GHS分類の「皮膚腐食性・刺激性」「眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性」「呼吸器感作性又は皮膚感作性」がいずれも「区分に該当しない」で、かつ経皮による健康有害性の記載がないものが含まれると説明されています。
| 化学物質の区分 | 保護具の使用 | 根拠 |
|---|---|---|
| 皮膚等障害化学物質等(皮膚刺激性・皮膚吸収性有害物質) | 義務(不浸透性の保護具) | 安衛則 第594条の2 |
| 有害性があるか明らかでない化学物質 | 努力義務 | 安衛則 第594条の3 |
| 健康障害を生ずるおそれがないことが明らかな化学物質 | 第594条の3の対象外 | 安衛則 第594条の3(括弧書き) |
| 特別規則で保護具が義務の業務 | 各特別規則に従う | 特化則・有機則など |
■ 施行の段階(2023年4月1日と2024年4月1日)
結論として、皮膚等障害化学物質等に関する規定は、2023年(令和5年)4月1日から努力義務、2024年(令和6年)4月1日から義務として段階的に施行されました(令和4年5月31日付け基発0531第9号「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について」第1の4)。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2022年5月31日 | 改正省令の施行通達(基発0531第9号) |
| 2023年4月1日 | 皮膚等障害化学物質等を扱う業務での保護具の使用が努力義務に。それ以外の化学物質についても努力義務 |
| 2023年7月4日 | 対象物質を示す通達(基発0704第1号)。同年11月9日に一部改正(裾切値の追記など) |
| 2024年4月1日 | 皮膚等障害化学物質等を扱う業務での不浸透性の保護具の使用が義務に(第594条の2)。化学物質管理者・保護具着用管理責任者の選任も施行 |
| 2027年4月1日 | 厚生労働省の一覧で、この日に適用対象となる物質の追加が示されている |
この改正は、特別規則で個別の物質を規制する方式から、事業者がリスクアセスメントをもとに自ら管理する方式へ移るための一連の見直しの一部です。化学物質管理の全体像はリスクアセスメント担当者研修の解説もあわせてご覧ください。
【注意】
「手袋をしているから大丈夫」とは限りません。化学物質への性能が確認されていない手袋では、材料を化学物質が透過して手に届くことがあります。第594条の2の義務は、手袋を着けさせることではなく、扱う物質と作業に適切な不浸透性の保護具を使用させることです。対象物質の一覧は更新されるため、SDSと最新の一覧での確認を定期的に行ってください。
自社で扱う洗浄剤や塗料が皮膚等障害化学物質に当たるか、保護具の管理を誰に任せるかで迷ったら、お電話でご相談ください。
📞 042-497-8840 に電話して相談する(相談無料・年中無休・7:00〜21:00)
扱う薬品と作業の内容をうかがい、担当者に必要な教育と受講の段取りをご案内します。
■ 保護手袋の選び方(選定マニュアルにもとづく手順)
結論として、保護手袋は「物質」「接触の程度」「作業時間」の3つから選びます。厚生労働省は、保護具の選び方をまとめた「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」(2026年11月4日時点で第3版・令和8年3月)と、その概要版を公表しています。ここでは、その内容で確認できた範囲を紹介します。
▶ 耐透過性クラスと破過時間
結論として、手袋の性能は「耐透過性クラス(クラス1〜6)」と「耐浸透性クラス(クラス1〜4)」で示されます(選定マニュアル概要版)。耐透過性クラスはJIS T 8116で定められた分類で、標準透過速度0.1μg/cm²/minで測定された材料・縫合部の平均標準破過点検出時間により求められます(選定マニュアル)。
わかりやすく言うと、化学物質が手袋の材料を透過して裏側で検出されるようになるまでの時間(破過時間)の長さで、耐透過性クラスが決まります。同じ手袋でも、物質によって破過時間は大きく変わります。「ある薬品には強いが、別の薬品はすぐ透過する」ということがあるため、物質ごとに性能を確認することが基本です。
▶ 選定の流れ
結論として、選定マニュアル概要版では「作業等の確認」→「化学防護手袋のスクリーニング」→「製品の性能確認」→「選定終了」という流れが示されています(保護具メーカーへの問い合わせは任意)。本記事では、これを次の段階に整理しました。
- 作業等の確認:扱う物質が皮膚等障害化学物質かを確認し、作業内容や作業時間を把握する。
- スクリーニング1:作業時間(60分以下、60分超240分以下、240分超)と作業分類から、使用できる耐透過性クラスを確認する。
- スクリーニング2:耐透過性能一覧表から、そのクラスを満たす手袋の材料を確認する。
- 製品の性能確認:規格への適合、材料・厚さ、耐浸透性能クラス、耐透過性能クラスを確認する。
- 選定終了:条件を満たす製品を選んで終了。判断がつかない場合は、任意で保護具メーカーに問い合わせる。
作業分類ごとの耐透過性クラスの目安や、材料ごとの耐透過性能の一覧は、選定マニュアル本体と参考資料に掲載されています。数値はマニュアルの最新版で直接確認してください。
▶ 作業分類と作業時間
結論として、手が化学物質にどの程度触れるかで、作業は3つに分類されます(選定マニュアル概要版)。
| 作業分類 | 内容 |
|---|---|
| 作業分類1 | 手や腕全体、手のひら全体が化学物質に触れる、接触が大きい作業 |
| 作業分類2 | 指先や手の一部が化学物質に触れる、接触が限られている作業 |
| 作業分類3 | 通常は化学物質に触れないが、異常時に飛沫がかかるおそれがある作業 |
ここでいう作業時間は「化学防護手袋を装着してから脱着するまでの時間」です。作業分類3では、化学物質に触れた時点を起点として、取扱説明書の使用可能時間内に速やかに交換するとされています。長時間の作業では、破過時間を超える前に手袋を交換する計画を立てておくことが大切です。
▶ 混合物を扱う場合と、規格の確認
結論として、混合物を扱う場合は、含まれるすべての物質について、作業時間中に破過しない材料から手袋を選びます(選定マニュアル概要版)。一覧表の情報を使う、混合物に対する耐透過試験を行うなどの方法で確認します。使用する際は、選んだ材料の手袋のうち、最も短い耐透過性能を示す物質の作業時間以内に交換するとされています。
製品を選ぶときは、JIS T 8116、ASTM F 739、EN ISO 374のいずれかに適合しているかを確認します。選定マニュアルでは、基本的にはJIS T 8116に準じた製品が望ましいとされています。カタログや取扱説明書に、扱う物質の耐透過性の記載があるかも確かめましょう。
▶ 保護衣・保護眼鏡・長靴の選び方
結論として、保護衣・保護眼鏡・長靴も、作業の内容とリスクに応じて選びます(選定マニュアル概要版)。
- 化学防護服:ばく露の頻度(A:断続的、B:時々、C:ばく露のおそれ)と作業時間から耐透過性クラスを絞り込む。ばく露する部位が身体の一部に限られる場合は部分防護服、それ以外は全身防護服を選ぶ。
- 保護眼鏡:ゴグル形を優先して選ぶ。ゴグル形でも、通気孔が少ないなど飛沫が入りにくいものを選ぶ。
- 化学防護長靴:必要かどうかをリスクアセスメントで判断し、必要な場合は耐透過性と耐浸透性を備えた材料のものを選ぶ。
■ 化学物質管理者・保護具着用管理責任者との関係
結論として、保護具を選んで配るだけでなく、正しく使わせ、手入れする仕組みが必要です。2024年4月1日から、リスクアセスメント対象物を製造し、取り扱い、または譲渡・提供する事業場では化学物質管理者の選任が、そのうちリスクアセスメントの結果にもとづいて労働者に保護具を使用させる場合は保護具着用管理責任者の選任が施行されています(基発0531第9号)。
▶ 化学物質管理者(安衛則 第12条の5)
結論として、リスクアセスメント対象物を製造し、または取り扱う事業場ごとに、化学物質管理者を選任しなければなりません(労働安全衛生規則 第12条の5第1項)。リスクアセスメント対象物を譲渡・提供するだけの事業場でも選任が必要です(同条第2項)。選任は、選任すべき事由が発生した日から14日以内です(同条第3項)。
化学物質管理者が管理する事項には、ラベル表示・SDSに関すること、リスクアセスメントの実施、その結果にもとづくリスク低減措置の内容と実施、労働災害が起きたときの対応、記録の作成・保存・周知、労働者への必要な教育が含まれます(同条第1項各号)。皮膚等障害化学物質を扱う作業で、どの保護具を使わせるかを決めることも、リスク低減措置の一部として関わります。詳しくは化学物質管理者の解説をご覧ください。
▶ 保護具着用管理責任者(安衛則 第12条の6)
結論として、化学物質管理者を選任した事業者は、リスクアセスメントの結果にもとづく措置として労働者に保護具を使用させるときは、保護具着用管理責任者を選任しなければなりません(労働安全衛生規則 第12条の6第1項)。管理させる事項は次の3つです。
- 保護具の適正な選択に関すること
- 労働者の保護具の適正な使用に関すること
- 保護具の保守管理に関すること
選任は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に、保護具に関する知識および経験を有すると認められる人の中から行います(同条第2項)。事業者は、保護具着用管理責任者に業務を行うための権限を与え(同条第3項)、氏名を事業場の見やすい箇所に掲示するなどして関係労働者に周知させなければなりません(同条第4項)。
不浸透性の保護具は、材料・サイズ・交換時期を誤ると効果が落ちます。手袋の選定、着け方・外し方の指導、交換の記録などを保護具着用管理責任者に任せると、現場での運用が安定します。教育の内容は保護具着用管理責任者教育の解説をご覧ください。
■ 罰則について
結論として、第594条の2の違反は罰則の対象です。厚生労働省の「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」(第3版 1.2)は、第594条の2について「労働安全衛生法第22条に基づく罰則を伴う義務規定であることに留意が必要である」としています。
労働安全衛生法 第119条第1号は「第二十条から第二十五条まで」の規定の違反を挙げており(2026年11月4日にe-Govで確認)、第22条の違反は6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です。選定マニュアルでは、リスクアセスメントの結果にもとづく保護具の着用が行政指導の位置づけであるのに対し、第594条の2の不浸透性の保護具の使用は罰則を伴う義務であると説明されています。
なお、第594条の3は努力義務です。個別の事案で違反に当たるかどうかの判断は、所轄の労働基準監督署にご確認ください。化学物質が皮膚に付いて起きる薬傷や皮膚炎、皮膚からの吸収による中毒は労働災害につながります。義務を守ることは、従業員の健康と会社を守ることでもあります。
■ 職場で進める5つのステップ
- 物質の洗い出し:職場で使う薬品・塗料・洗浄剤などを一覧にし、SDSを集める。
- 該当の確認:SDSの成分と含有量を厚生労働省の一覧と照らし合わせ、裾切値も確認する。特別規則の対象かもあわせて確認する。
- 作業の把握:作業ごとに、手への接触の程度(作業分類)、作業時間、飛沫の有無を確認する。
- 保護具の選定:選定マニュアルにもとづき、手袋・保護衣・保護眼鏡・長靴を選ぶ。メーカーの耐透過性データも確認する。
- 運用と教育:保護具着用管理責任者を中心に、着け方・外し方・交換時期を教え、請負人にも保護具が必要なことを周知する。
現場に周知するときは、どの作業でどの手袋を使うかを写真つきで掲示する、朝礼のKY活動で確認するといった方法が役立ちます。KY活動の進め方はKY活動とはをご覧ください。
■ よくある質問
▶ Q. 皮膚等障害化学物質とは何ですか?
結論として、皮膚や眼に障害を与えるおそれ、または皮膚から吸収され・侵入して健康障害を生ずるおそれが明らかな化学物質(それを含む製剤を含む)として厚生労働大臣が定めるものです(労働安全衛生規則 第594条の2第1項)。通達では「皮膚刺激性有害物質」と「皮膚吸収性有害物質」に分けて示されています(令和5年7月4日付け基発0704第1号)。
▶ Q. 不浸透性の保護具の着用はいつから義務ですか?
結論として、2024年(令和6年)4月1日から義務です(労働安全衛生規則 第594条の2)。2023年(令和5年)4月1日から2024年3月31日までは努力義務の段階でした(令和4年5月31日付け基発0531第9号)。
▶ Q. 自社で扱う薬品が対象かどうかは、どうやって確認しますか?
結論として、譲渡提供者から受け取ったSDS(安全データシート)で成分と含有量を確認し、厚生労働省が公表している「皮膚等障害化学物質」の一覧と照らし合わせます。製剤の場合は、皮膚刺激性有害物質・皮膚吸収性有害物質ともに原則1重量%未満なら該当しない扱いですが、発がん性区分1などは0.1%、生殖毒性区分1は0.3%と低い裾切値が定められています(基発0704第1号)。
▶ Q. 保護手袋は何を基準に選べばよいですか?
結論として、厚生労働省の「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」では、扱う化学物質、作業分類(手への接触の程度)、作業時間(装着から脱着までの時間)をもとに、必要な耐透過性クラスを満たす材料・製品を選ぶ手順が示されています。製品がJIS T 8116などの規格に適合しているかも確認します。
▶ Q. 第594条の2に違反すると罰則はありますか?
結論として、あります。厚生労働省の「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」は、第594条の2を「労働安全衛生法第22条に基づく罰則を伴う義務規定」としています。労働安全衛生法 第22条の違反は、同法 第119条第1号により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です。
■ 皮膚等障害化学物質のチェックリスト
- 職場で使う化学物質のSDSをすべて手元にそろえた
- SDSの成分を厚生労働省の最新の一覧と照らし合わせ、裾切値も確認した
- 特化則・有機則など特別規則の対象となる業務かを確認した
- 作業ごとに作業分類と作業時間を把握した
- 扱う物質に対する耐透過性が確認された手袋・保護衣・保護眼鏡・長靴を選んだ
- 手袋の交換時期を決め、作業者に教えた
- 請負人にも保護具を使用する必要があることを伝えた
- 化学物質管理者・保護具着用管理責任者を選任し、氏名を掲示した
■ まとめ
- 皮膚等障害化学物質等を製造し、または取り扱う業務では、不浸透性の保護衣・保護手袋・履物・保護眼鏡等を使用させる義務がある(安衛則 第594条の2)。
- 対象は皮膚刺激性有害物質と皮膚吸収性有害物質。厚生労働省の一覧で確認し、一覧は更新される(2027年4月1日適用の追加あり)。
- 2023年4月1日から努力義務、2024年4月1日から義務。それ以外の化学物質も、おそれがないことが明らかなもの以外は努力義務(第594条の3)。
- 保護手袋は、物質・作業分類・作業時間から耐透過性クラスを確認して選ぶ(選定マニュアル)。
- 化学物質管理者・保護具着用管理責任者を選任し、選定・使用・保守管理の仕組みをつくる。第594条の2の違反は安衛法 第22条・第119条第1号により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象。
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■ 関連する記事
■ 参考(一次情報・2026年11月4日確認)
- e-Gov法令検索|労働安全衛生規則(第12条の5・第12条の6・第594条の2・第594条の3)
- e-Gov法令検索|労働安全衛生法(第22条・第119条)
- 厚生労働省|労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について(令和4年5月31日付け基発0531第9号)
- 厚生労働省|皮膚等障害化学物質等に該当する化学物質について(令和5年7月4日付け基発0704第1号)
- 厚生労働省|化学物質による労働災害防止のための新たな規制について(対象物質の一覧)
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト|皮膚等障害化学物質
- 厚生労働省|皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル(第3版・1.2に罰則の記載)
- 厚生労働省|皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル 概要版
