安全衛生推進者とは、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場で選任が義務づけられた、職場の安全衛生の業務を担当する人です(労働安全衛生法 第12条の2)。建設業・製造業・運送業などでは「安全衛生推進者」、それ以外の業種では衛生の業務だけを担当する「衛生推進者」を選任します。
この記事では、選任が必要な事業場と業種の見分け方、選任できる人の要件(講習・学歴+実務経験)、14日以内の選任と周知、届出の要否、罰則、安全管理者・衛生管理者との違いを、法令の条文と厚生労働省の資料(いずれも2026年11月4日に確認)をもとに整理しました。
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■ この記事でわかること
- 安全衛生推進者の選任が必要な事業場(常時10人以上50人未満)と人数の数え方
- 安全衛生推進者と衛生推進者の違い(業種による区分)
- 選任できる人の要件(養成講習・学歴+実務経験)と職務
- 14日以内の選任・専属・氏名の周知と、届出が不要なこと
- 罰則の有無と、安全管理者・衛生管理者との違い
■ 安全衛生推進者の早見表
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 選任が必要な事業場 | 常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場 | 安衛法 第12条の2、安衛則 第12条の2 |
| 安全衛生推進者を選ぶ業種 | 林業・鉱業・建設業・運送業・清掃業・製造業(物の加工業を含む)・電気業・ガス業・熱供給業・水道業・通信業・各種商品卸売業・各種商品小売業・燃料小売業・旅館業・ゴルフ場業・自動車整備業・機械修理業など | 安衛令 第2条第1号・第2号 |
| 衛生推進者を選ぶ業種 | 上記以外の業種(各種商品・家具等・燃料以外の小売業、飲食店、医療・福祉、金融・事務所など) | 安衛法 第12条の2 |
| 選任の期限 | 選任すべき事由が発生した日から14日以内 | 安衛則 第12条の3第1項第1号 |
| 専属 | その事業場に専属の人(労働安全コンサルタント等から選ぶ場合を除く) | 安衛則 第12条の3第1項第2号 |
| 選任できる人 | 登録講習機関の養成講習の修了者、学歴+実務経験がある人など | 安衛則 第12条の3(講習)、昭和63年労働省告示第80号(学歴・実務経験) |
| 周知 | 氏名を作業場の見やすい箇所に掲示するなどして周知 | 安衛則 第12条の4 |
| 届出 | 不要(安全管理者・衛生管理者と違い、選任報告はない) | 厚生労働省Q&A |
■ 安全衛生推進者とは
結論として、安全衛生推進者は、安全管理者・衛生管理者の選任が義務づけられていない中小規模の事業場で、安全衛生の業務を担当する人です。労働安全衛生法 第12条の2は、常時50人以上の事業場で選任する安全管理者(第11条)・衛生管理者(第12条)の対象外の事業場のうち、厚生労働省令で定める規模(常時10人以上50人未満。労働安全衛生規則 第12条の2)の事業場に選任を義務づけています。
▶ 担当する業務(労働安全衛生法 第10条第1項の業務)
結論として、安全衛生推進者が担当するのは、総括安全衛生管理者が統括管理する業務と同じ、次の業務です(労働安全衛生法 第12条の2、第10条第1項。一部除外あり)。衛生推進者は、このうち衛生に係る業務に限られます。
- 労働者の危険または健康障害を防止するための措置に関すること
- 労働者の安全または衛生のための教育の実施に関すること
- 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること
- 労働災害の原因の調査と再発防止対策に関すること
- そのほか、安全衛生に関する方針の表明、リスクアセスメントとその結果にもとづく措置、安全衛生に関する計画の作成・実施・評価・改善に関すること(労働安全衛生規則 第3条の2)
■ 選任が必要な事業場と業種
▶ 人数:常時10人以上50人未満
結論として、事業場(工場・支店・営業所など場所ごと)で常時使用する労働者が10人以上50人未満なら選任が必要です。厚生労働省のQ&Aでは、日雇労働者やパートタイマーなどの臨時的な労働者も含めて、常態として使用する労働者の数で判断するとされています。派遣労働者は派遣元・派遣先の双方で数えます。
▶ 業種:安全衛生推進者か衛生推進者か
結論として、安全管理者を選任すべき業種(労働安全衛生法施行令 第2条第1号・第2号の業種)では安全衛生推進者、それ以外の業種では衛生推進者を選任します。
| 区分 | 業種(労働安全衛生法施行令 第2条) |
|---|---|
| 安全衛生推進者(第1号) | 林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業 |
| 安全衛生推進者(第2号) | 製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業 |
| 衛生推進者(第3号) | その他の業種 |
■ 選任できる人の要件
結論として、安全衛生推進者は「都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習を修了した者その他、業務を担当するため必要な能力を有すると認められる者」から選任します(労働安全衛生規則 第12条の3)。養成講習の修了のほか、告示(昭和63年労働省告示第80号「安全衛生推進者等の選任に関する基準」)で学歴・実務経験の基準が定められています。
| ルート | 要件 |
|---|---|
| 養成講習(安衛則 第12条の3) | 都道府県労働局長の登録を受けた機関が行う安全衛生推進者養成講習(衛生推進者は衛生推進者養成講習)の修了 |
| 大学・高専卒(告示第80号) | 卒業後1年以上、安全衛生の実務に従事した経験がある |
| 高校・中等教育学校卒 | 卒業後3年以上、安全衛生の実務に従事した経験がある |
| 実務経験 | 5年以上、安全衛生の実務に従事した経験がある |
| その他 | 上と同等以上の能力があると認められる者 |
衛生推進者の場合は「安全衛生の実務」を「衛生の実務」として考えます。また、安全管理者・衛生管理者の資格を持つ人は、安全衛生推進者の養成講習の科目の一部の免除を受けられます(同規則 第12条の3第2項)。養成講習の修了は必須ではなく、学歴と実務経験のルートでも選任できます。
■ 選任の手続き(14日以内・専属・周知)
- 対象の確認:常時使用する労働者が10人以上50人未満か、業種はどちらの区分かを確認する。
- 14日以内に選任:選任すべき事由が発生した日(10人以上になった日など)から14日以内に選任する(労働安全衛生規則 第12条の3第1項第1号)。
- 専属の人を選ぶ:原則としてその事業場に専属の人を選任する。労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントその他厚生労働大臣が定める人から選ぶ場合は専属でなくてよい(同項第2号)。
- 氏名を周知:作業場の見やすい箇所に掲示するなどして、関係労働者に知らせる(同規則 第12条の4)。
安全管理者・衛生管理者は選任したら所轄の労働基準監督署長に選任報告を出しますが(同規則 第4条・第7条)、安全衛生推進者・衛生推進者には選任報告の手続きはありません(厚生労働省Q&A)。その分、掲示などによる周知を確実に行い、選任した記録を社内に残しておきましょう。
また、安全委員会・衛生委員会などを設けていない事業者は、安全または衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければなりません(労働安全衛生規則 第23条の2)。朝礼や定例のミーティングで、安全衛生推進者が意見を集める場をつくるとよいでしょう。
【違反リスク】
労働安全衛生法 第12条の2の違反は、同法 第119条・第120条の罰則規定に列挙されていません(2026年11月4日にe-Govで確認)。ただし、選任は法律上の義務です。未選任の状態は、労働基準監督署の是正指導の対象となり得ます。
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■ 安全管理者・衛生管理者との違い
| 項目 | 安全衛生推進者・衛生推進者 | 安全管理者 | 衛生管理者 |
|---|---|---|---|
| 対象の事業場 | 常時10人以上50人未満 | 安衛令 第2条第1号・第2号の業種で常時50人以上 | 全業種で常時50人以上 |
| 根拠 | 安衛法 第12条の2 | 安衛法 第11条、安衛令 第3条 | 安衛法 第12条、安衛令 第4条 |
| 資格 | 養成講習の修了、学歴+実務経験など | 学歴+実務経験+厚生労働大臣が定める研修の修了、労働安全コンサルタントなど | 衛生管理者免許、医師、労働衛生コンサルタントなど |
| 労基署への選任報告 | 不要 | 必要(安衛則 第4条) | 必要(安衛則 第7条) |
事業場の人数が50人以上になると、衛生管理者・産業医の選任と衛生委員会の設置が必要です。業種によっては、安全管理者の選任と安全委員会の設置も必要になります(安全委員会は業種により50人以上または100人以上。両方をまとめて安全衛生委員会にできます)。詳しくは安全衛生委員会とは|設置義務・メンバー構成をご覧ください。
■ 選任後の能力向上教育(初任時7時間)
結論として、事業者は、安全衛生推進者・衛生推進者などに、業務に関する能力の向上を図るための教育を行う、または受ける機会を与えるよう努めなければなりません(労働安全衛生法 第19条の2・努力義務)。国の指針(「労働災害の防止のための業務に従事する者に対する能力向上教育に関する指針」平成元年能力向上教育指針公示第1号)では、安全衛生推進者の初任時の教育として、安全衛生管理の進め方3時間、危険性または有害性等の調査等2時間、安全衛生教育1時間、関係法令1時間の合計7時間が示されています。
指針では、実施した能力向上教育の記録を個人別に保存することや、原則として就業時間内に行うことも示されています。
内容と受講方法は安全衛生推進者能力向上教育とは|初任時7時間・努力義務で詳しく解説しています。
■ よくある質問
▶ Q. 安全衛生推進者は何人から選任が必要ですか?
結論として、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場で選任が必要です(労働安全衛生法 第12条の2、労働安全衛生規則 第12条の2)。人数にはパートタイマーなど臨時的な労働者も含め、常態として使用する人数で数えます。
▶ Q. 安全衛生推進者と衛生推進者の違いは何ですか?
結論として、業種で分かれます。林業・鉱業・建設業・運送業・清掃業・製造業などの業種(労働安全衛生法施行令 第2条第1号・第2号)は安全衛生推進者、それ以外の業種は衛生推進者を選任し、衛生推進者は衛生に係る業務だけを担当します。
▶ Q. 安全衛生推進者を選任したら労働基準監督署への届出は必要ですか?
結論として、届出(選任報告)は不要です。代わりに、氏名を作業場の見やすい箇所に掲示するなどして、関係労働者に周知しなければなりません(労働安全衛生規則 第12条の4)。
▶ Q. 安全衛生推進者になるには講習が必須ですか?
結論として、必須ではありません。登録講習機関の養成講習を修了した人のほか、大学・高専卒業後1年以上、高校卒業後3年以上、または5年以上の安全衛生の実務経験がある人なども選任できます(昭和63年労働省告示第80号)。
▶ Q. 安全衛生推進者を選任しないと罰則はありますか?
結論として、労働安全衛生法 第12条の2の違反は、同法 第119条・第120条の罰則の対象として列挙されていません。ただし選任は法律上の義務で、労働基準監督署の指導の対象になります。
■ 選任前のチェックリスト
- パート・アルバイトも含め、常時使用する労働者の数を数えた(10人以上50人未満か)
- 業種から、安全衛生推進者か衛生推進者かを判断した
- 養成講習の修了、または学歴+実務経験の要件を満たす人を選んだ
- その事業場に専属の人を選んだ(コンサルタント等を除く)
- 14日以内に選任し、氏名を作業場に掲示した
- 選任した人に、初任時の能力向上教育を受ける機会を用意した
■ まとめ
- 安全衛生推進者は、常時10人以上50人未満の事業場で選任する(労働安全衛生法 第12条の2)。
- 建設業・製造業・運送業などは安全衛生推進者、それ以外の業種は衛生推進者(衛生の業務のみ)。
- 養成講習の修了のほか、大学卒1年・高校卒3年・実務5年以上の経験などでも選任できる。
- 14日以内に専属の人を選任し、氏名を掲示などで周知する。労基署への届出は不要。
- 第12条の2の違反は罰則規定に列挙されていないが、選任は法律上の義務。選任後は能力向上教育(初任時7時間・努力義務)も検討する。
■ 講習のお申込み・ご相談
産業技能センターでは、選任された安全衛生推進者向けの「安全衛生推進者能力向上教育(初任時)」を行っています。受講料は1名様8,000円〜(税込・教材費・修了証発行費込み)で、オンライン講習(Google Meet・1名様から)または出張講習(関東1都6県は5名様から)で受講できます。選任要件となる養成講習は、都道府県労働局長の登録を受けた機関でお申し込みください。
選任した安全衛生推進者に、何をどこまで学ばせればよいか迷ったら、お電話でご相談ください。
📞 042-497-8840 に電話して相談する(相談無料・年中無休・7:00〜21:00)
業種・人数・選任の状況をうかがい、必要な教育と受講の段取りをご案内します。
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