安全パトロール(安全衛生パトロール)は、職場や工事現場を見て回り、危険な状態・危険な作業を見つけてその場で直すための活動です。「安全パトロール」という言葉そのものは法令にありませんが、法令には「巡視」として、誰が・どのくらいの頻度で見回るかが決められているものがあります。たとえば建設業・造船業の元請(特定元方事業者)は、協力会社と同じ場所で作業する現場では毎作業日に少なくとも1回作業場所を巡視しなければならず(労働安全衛生法 第30条第1項第3号、労働安全衛生規則 第637条第1項)、衛生管理者は少なくとも毎週1回、産業医は原則として毎月1回の巡視が定められています(同規則 第11条・第15条)。
「安全パトロールの担当になったが、何を見ればいいかわからない」「指摘のコメントをどう書けばいいか迷う」という担当者の方に向けて、労働安全衛生法・同施行令・労働安全衛生規則(安衛則)の条文(e-Gov法令検索で2026年11月に確認)と厚生労働省の指針をもとに整理しました。そのまま使えるチェックリストと、指摘事項・講評コメントの例文も載せています。
ご不明点はよくある質問、個別のご相談は問い合わせページからどうぞ。
■ この記事でわかること
- 安全パトロールと、法令で決められた「巡視」の関係
- 誰が・どのくらいの頻度で巡視する義務があるか(早見表)
- 安全パトロールのやり方(準備→巡回→是正→記録→報告)
- 建設現場・工場で使えるチェックリスト
- 指摘事項の書き方と、講評コメントの例文
■ 安全パトロールとは
安全パトロールは、現場の「不安全な状態」(手すりがない、通路に物が置いてある など)と「不安全な行動」(墜落制止用器具(フルハーネス等)を使わずに作業する、立入禁止の区域に入る など)を見つけ、事故が起きる前に直すための見回りです。会社や現場によって「安全衛生パトロール」「安全巡視」「職場巡視」などとも呼ばれます。
法令の「巡視」は、一定の立場の人に義務として課されているものです。一方、社長や役員、安全衛生委員会のメンバー、協力会社の代表者などが合同で行う「パトロール」は、多くの場合、会社や現場が自主的に行う活動です。どちらも目的は同じなので、法令の巡視を土台にして、自主的なパトロールで目を増やす、という組み立て方が基本になります。
■ 巡視が義務になっている人(早見表)
法令で巡視が定められている主な立場と頻度です。
| 誰が | 頻度 | 根拠 |
|---|---|---|
| 特定元方事業者(建設業・造船業の元請。協力会社と同じ場所で作業する現場) | 毎作業日に少なくとも1回 | 労働安全衛生法 第30条第1項第3号、安衛則 第637条第1項 |
| 店社安全衛生管理者 | 少なくとも毎月1回 | 安衛則 第18条の8第1号 |
| 安全管理者 | 頻度の定めなし(作業場等を巡視) | 安衛則 第6条第1項 |
| 衛生管理者 | 少なくとも毎週1回 | 安衛則 第11条第1項 |
| 産業医 | 少なくとも毎月1回(条件を満たせば2か月に1回) | 安衛則 第15条第1項 |
▶ 建設現場の元請(特定元方事業者)
建設業・造船業の元請(特定元方事業者)は、自社と協力会社の作業が同じ場所で行われることによる災害を防ぐため、協議組織の設置・運営、作業間の連絡調整、作業場所の巡視、協力会社が行う安全衛生教育への指導・援助などを行わなければなりません(労働安全衛生法 第30条第1項)。巡視は毎作業日に少なくとも1回で、協力会社(関係請負人)はこの巡視を拒んだり妨げたりしてはいけません(安衛則 第637条)。
協力会社の作業者と同じ場所で作業する現場であれば、この義務は、統括安全衛生責任者を選任しなければならない規模(常時50人以上。ずい道等の建設など一部の仕事は常時30人以上:労働安全衛生法施行令 第7条第2項)に限られません。小さな現場でも、元請には巡視の義務があります。統括安全衛生責任者を選任した現場では、これらの事項を統括安全衛生責任者が統括管理します(労働安全衛生法 第15条第1項)。
厚生労働省の「元方事業者による建設現場安全管理指針」(平成7年4月21日 基発第267号の2)でも、統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者またはこれらに準ずる者に、毎作業日に1回以上作業場所の巡視を行わせることが示されています。
▶ 工場・事業場の安全管理者・衛生管理者・産業医
安全管理者は作業場等を巡視し、設備や作業方法に危険のおそれがあるときは、直ちに危険を防止するための措置を講じなければなりません(安衛則 第6条第1項)。巡視の頻度は条文で決められていないため、事業場で決めて運用します。衛生管理者は少なくとも毎週1回(安衛則 第11条第1項)、産業医は少なくとも毎月1回(衛生管理者の巡視結果などの情報を毎月受け、事業者の同意がある場合は2か月に1回:安衛則 第15条第1項)の巡視が必要です。
▶ 違反した場合
特定元方事業者が労働安全衛生法 第30条第1項の措置(巡視を含む)を講じなかった場合は、50万円以下の罰金の対象です(同法 第120条第1号)。安全管理者・衛生管理者・産業医の巡視(安衛則の規定)について、個々の罰則がどう適用されるかは条文だけでは判断しにくいため、所轄の労働基準監督署に確認してください。
パトロールで「この作業、資格はいるの?」と迷う場面が出てきたら、お電話でご相談ください。
📞 042-497-8840 に電話して相談する(相談無料・年中無休・7:00〜21:00)
作業の内容をうかがい、必要な特別教育・安全衛生教育と受講方法をご案内します。
■ 安全パトロールのやり方(5つの手順)
当センターで整理した、どの職場でも使える進め方です。
- 準備する:今日の作業内容(高所・重機・クレーン・火気など)、前回の指摘事項、最近のヒヤリハットを確認し、重点的に見る場所を決めます。チェックリストと記録用のカメラ・メモを用意します。
- 見て回る:チェックリストに沿って、設備・保護具・作業のやり方・資格を確認します。作業者に「この作業で一番危ないところはどこですか」と声をかけると、現場の困りごとも見えてきます。
- その場で直す:墜落や挟まれなど、すぐに災害につながる状態は、その場で作業を止めてでも是正します。後回しにしないことが大切です。
- 記録する:日時・場所・指摘内容・是正の期限・担当者・是正後の写真を残します。「良かった点」も一緒に記録します。
- 報告して次に生かす:是正が済んだかを確認し、朝礼や協議組織の会議、安全衛生委員会で共有します。同じ指摘が続く場合は、作業手順や教育の見直しにつなげます。
■ そのまま使えるチェックリスト
当センターで作成した例です。現場の作業に合わせて項目を足し引きしてください。
▶ 共通(建設現場・工場とも)
| 分類 | チェック項目 |
|---|---|
| 整理整頓 | 通路・階段・非常口に物が置かれていないか。工具や材料が散らかっていないか |
| 保護具 | 保護帽のあごひもを締めているか。保護メガネ・手袋・安全靴など作業に合った保護具を着けているか |
| 資格 | フォークリフト・クレーン・玉掛けなど、資格や教育が必要な作業を、資格・教育を終えた人が行っているか。免許や技能講習が必要な業務(就業制限業務)では、免許証・技能講習修了証などを携帯しているか(労働安全衛生法 第61条第3項) |
| 機械・設備 | 安全カバーや非常停止ボタンが外されていないか。始業前点検の記録があるか |
| 表示 | 立入禁止・作業主任者の氏名など、必要な表示や掲示があるか |
| 体調・環境 | 暑さ・寒さ・照明・換気は適切か。体調の悪そうな人はいないか |
▶ 建設現場で追加して見るところ
| 分類 | チェック項目 |
|---|---|
| 墜落・転落 | 高さ2m以上の作業床の端や開口部に、囲い・手すり・覆いがあるか。設けるのが著しく難しい場所や、作業のため一時的に外す場所では、防網や墜落制止用器具(フルハーネスなど)を使わせているか(安衛則 第519条) |
| 足場 | 手すりや中さんが外されたままになっていないか。作業床にすき間や段差がないか |
| 重機・クレーン | 作業半径の中に人が入っていないか。誘導員や合図が決まっているか。つり荷の下に人がいないか |
| 上下作業 | 上で作業しているとき、下に人が立ち入らないようにしているか |
| 電気・火気 | 仮設の電線が傷んでいないか。溶接・溶断の周りに燃えやすい物がないか。消火器があるか |
| 協力会社 | 新しく入った作業者への説明(新規入場者教育)が済んでいるか。作業の打合せどおりの手順で作業しているか |
▶ 工場・倉庫で追加して見るところ
| 分類 | チェック項目 |
|---|---|
| はさまれ・巻き込まれ | 動いている機械に手を入れる作業がないか。掃除や点検のときに機械を止めているか |
| フォークリフト | 歩行者と通路が分けられているか。荷の積み過ぎ・前が見えない走行がないか |
| 化学物質 | 容器にラベルがあるか。保管場所が決まっているか。換気装置が動いているか |
| 荷の積み方 | 棚やパレットの荷が崩れそうになっていないか。重い物が上に積まれていないか |
■ 指摘事項の書き方とコメントの例文
指摘は「どこで・何が・どう危ないか・どう直すか・いつまでに」の5つをそろえると、受け取った側がすぐ動けます。以下は当センターで作成した例文です。
▶ 指摘事項の例文
- 3階東側の開口部の手すりが外されたままになっていました。墜落のおそれがあるため、本日中に復旧し、作業で外す場合は防網とフルハーネスの使用をお願いします。
- 資材置き場の前の通路に台車と資材が置かれ、通路がふさがっていました。つまずき・接触のおそれがあるため、置き場の白線の中へ移してください。
- 移動式クレーンのつり荷の下を、作業者が横切っていました。つり荷の下には立ち入らないよう、合図者が立入禁止の範囲を確保してください。
- グラインダー作業で保護メガネを着けていない方がいました。破片が目に入るおそれがあるため、作業前に着用をお願いします。
- フォークリフトの通路と歩行者の通路が分かれていない場所がありました。ラインの表示やカラーコーンで区分してください。
▶ 講評・総評コメントの例文
- 全体として整理整頓が行き届いており、通路も確保されていました。特に資材置き場の区分けは他の現場の手本になります。一方で、開口部の手すりの外しっぱなしが1か所ありました。外したら必ず戻す、をもう一度徹底してください。
- 前回指摘した保護メガネの着用は、全員が守れていました。ありがとうございます。今月は暑さが残るため、休憩と水分補給の声かけを引き続きお願いします。
- 新しく入った協力会社の方が多い時期です。作業手順と立入禁止の範囲を、朝礼とKY活動で毎日確認するようお願いします。
良かった点を先に伝えてから指摘に入ると、「粗探し」と受け取られにくくなります。指摘の内容は、KY活動やヒヤリハットの共有にも使えます。
■ よくある質問
▶ Q. 安全パトロールは法律で義務ですか?
「安全パトロール」という名前の義務はありませんが、「巡視」は立場によって義務です。建設業・造船業の元請(特定元方事業者)は毎作業日に少なくとも1回(労働安全衛生法 第30条第1項第3号、安衛則 第637条)、衛生管理者は毎週1回以上(安衛則 第11条)、産業医は原則毎月1回以上(安衛則 第15条)などと決められています。
▶ Q. 安全パトロールは誰がやるのですか?
法令の巡視は、元請(特定元方事業者)、店社安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医など、それぞれ決められた立場の人が行います。それとは別に、社長・役員・安全衛生委員会のメンバー・協力会社の代表者などが合同でパトロールを行う会社も多くあります。
▶ Q. 小さな現場でも元請の巡視は必要ですか?
協力会社(関係請負人)の作業者が同じ場所で作業する現場であれば、規模にかかわらず必要です。労働安全衛生法 第30条第1項に人数の要件はありません。人数で選任が必要かどうかが決まるのは統括安全衛生責任者(常時50人以上など:施行令 第7条第2項)で、巡視そのものとは別の話です。
▶ Q. 安全パトロールの腕章は決まっていますか?
腕章の形や色を定めた法令はありません。パトロールをしている人だと現場の誰もがわかるよう、会社や現場で決めて着用するのが一般的です。
▶ Q. パトロールの記録は何年保存すればよいですか?
巡視の記録そのものの保存期間を定めた条文は、この記事で確認した範囲ではありません。安全衛生委員会で巡視の結果を扱った場合は、委員会の議事で重要なものの記録を3年間保存する必要があります(安衛則 第23条第4項)。社内の規程で保存期間を決めておくと安心です。
■ まとめ
- 「安全パトロール」は法令用語ではないが、法令では「巡視」として立場ごとに義務がある。
- 建設業・造船業の元請は、協力会社と同じ場所で作業する現場で毎作業日に少なくとも1回(安衛法 第30条第1項第3号・安衛則 第637条)。人数の要件はない。
- 衛生管理者は毎週1回以上、産業医は原則毎月1回以上、店社安全衛生管理者は毎月1回以上。
- やり方は「準備→巡回→その場で是正→記録→報告」。指摘は「どこで・何が・どう危ないか・どう直すか・いつまでに」をそろえる。
- 資格が必要な作業を、有資格者が行っているかも必ず確認する。
■ 講習のお申込み・ご相談
産業技能センターでは、パトロールで見つかった「資格・教育が足りていない作業」を解消するための講習を行っています。特別教育・安全衛生教育は多くの科目で1名様8,000円〜(税込・教材費・修了証発行費込み)です。技能講習修了者の安全衛生教育や管理者・主任者の能力向上教育などは、オンライン講習(Google Meet)で1名様から受講でき、出張講習は関東1都6県で5名様からです。なお、伐木等特別教育(チェーンソー)・職長・安全衛生責任者教育・アーク溶接等特別教育はオンラインでは受講できません。受講方法はオンライン講習のご案内をご覧ください。
パトロールの指摘で、作業者の教育や資格を急いでそろえる必要が出てきたら、お電話でご相談ください。
📞 042-497-8840 に電話して相談する(相談無料・年中無休・7:00〜21:00)
業種・人数・作業内容をうかがい、必要な教育と受講の段取りをご案内します。
カメラ映像から不安全行動をAIで検知する取組は、建設業のAI活用事例で紹介しています。
