足場の組立て等特別教育は、安全衛生特別教育規程で「学科教育のみ(合計6時間以上)」と定められており、実技教育がありません。そのため、厚生労働省の通達が示す条件を満たせば、オンラインだけで受講を完結できます。ただし「動画を流しただけ」では足りず、受講した時間の確認や質問への対応など、実施する側が守るべき条件があります。
この記事では、現場に出る社員に足場の特別教育を受けさせたい法人のご担当者向けに、オンライン受講が認められる根拠と条件、会社として確認・保存しておくこと、作業主任者(技能講習)との違いを、条文をもとに整理します。特別教育そのものの対象や科目の詳細は足場の組立て等特別教育の記事で解説しています。
■ 結論:足場の特別教育はオンラインで完結できる
▶ 根拠は「学科教育のみ」という規程の定め
足場の組立て、解体または変更の作業に係る業務(地上または堅固な床上での補助作業を除く)は、特別教育が必要な業務です(労働安全衛生規則 第36条第39号)。事業者は、この業務に労働者をつかせるときに特別教育を行わなければなりません(労働安全衛生法 第59条第3項)。
教育の中身は、安衛則第39条にもとづく厚生労働大臣の告示「安全衛生特別教育規程」の第22条で定められています。第22条第1項は「学科教育により行うものとする」としており、実技教育の定めがありません。
▶ 実技がある特別教育とは扱いが違う
厚労省の通達は、特別教育の実技について「講師と同一場所で対面により実施していること」を求めています。つまり、実技がある特別教育は学科をオンラインにできても、実技は対面が必要です。
足場の特別教育はもともと実技がないため、この制約を受けません。学科の条件を満たせば、会社や自宅からオンラインで受講し、修了まで進めることができます。
■ 早見表:足場まわりの教育とオンラインの扱い
| 教育 | 規程上の構成 | オンライン |
|---|---|---|
| 足場の組立て等特別教育 | 学科6時間のみ | 条件を満たせば完結可 |
| フルハーネス特別教育 | 学科4.5時間+実技1.5時間 | 学科のみ可・実技は対面 |
| 足場の組立て等作業主任者 | 技能講習(登録教習機関) | 特別教育とは別の扱い |
※時間は安全衛生特別教育規程 第22条・第24条の定め(いずれも「以上」)。技能講習の受講方法は各登録教習機関にご確認ください。
■ オンラインで受ける学科6時間の中身
オンラインでも、規程が定める科目と時間を省くことはできません。第22条の科目と時間は次のとおりです。
- 足場及び作業の方法に関する知識:3時間(足場の種類・材料・構造・組立図、組立て・解体・変更の作業方法、点検・補修、登り桟橋や朝顔など)
- 工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識:30分(工事用設備・機械や器具・工具の取扱い、悪天候時の作業方法など)
- 労働災害の防止に関する知識:1時間30分(墜落防止設備、落下物対策、保護具の使用と点検、感電防止など)
- 関係法令:1時間(労働安全衛生法・施行令・安衛則の関係条項)
合計6時間以上です。オンライン講習では、この6時間を受講者が実際に受けたことを確認できる形で行う必要があります。
■ オンライン受講に必要な3つの条件(厚労省通達)
根拠になるのは、厚労省の通達「インターネット等を介したeラーニング等により行われる労働安全衛生法に基づく安全衛生教育等の実施について」です。この通達(令和3年1月25日付、令和8年9月2日最終改正〔基安計発0902第1号ほか〕)は特別教育もあわせて扱っており、従来の特別教育の通達(令和2年3月26日付)はこの通達により廃止されています。
通達の別表では、特別教育をeラーニング等で行う場合の条件として、主に次の内容が示されています。
▶ 条件1:規程の範囲と時間以上を担保できること
教育内容が規程の範囲を満たし、教育時間が規程の時間以上であることを担保できることが求められます。足場の特別教育なら、先ほどの4科目・6時間以上です。
▶ 条件2:講師に十分な知識・経験があること
講師(動画教材の場合は作成者・監修者も)について、十分な知識または経験を有することが確認できることが求められます。
▶ 条件3:質問を受け付けて回答できる体制があること
受講者から質問があった際に、受け付けて回答できる体制が必要です。ビデオ会議形式ならその場で質問できますし、動画形式の講座でも質問窓口が用意されているかを確認しましょう。
▶ 受講時間の確認方法は3通り示されている
通達の注記では、受講した事実と教育時間が法令の時間以上であることを、教育を実施する者が担保する必要があるとされ、確認方法の例として次の3つが挙げられています。
- (ア)受講者を1か所に集めず、ビデオ会議ツール等でリアルタイムに講師が受講状況を確認しながら行う方法
- (イ)映像教材や動画について、再生記録やパソコンの操作記録等にもとづき受講状況を確認する方法
- (ウ)上記のほか、教育時間を実施者が合理的に証明できる方法
講師がリアルタイムで進めるビデオ会議形式は(ア)にあたり、受講者が画面越しに参加しているかを講師が確認しながら進められます。
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■ 会社として確認・保存しておくこと
▶ 申し込む前に確認したい点
- 4科目・合計6時間以上の内容になっているか
- 受講時間をどの方法で確認するのか(リアルタイム/再生記録など)
- 講師の経歴や、質問を受け付ける方法
- 修了証の発行方法と、受講記録を受け取れるか
▶ 特別教育の記録は3年間保存
事業者は、特別教育を行ったときは、受講者・科目等の記録を作成して3年間保存しなければなりません(安衛則 第38条)。外部の講習を利用した場合も、修了証の写しや受講記録を社内でまとめて保管しておくと、元請けへの提出や監督署の確認に対応しやすくなります。保存の考え方は安全衛生教育の記録の保存で詳しく解説しています。
▶ 受講環境は会社で整えると確実
オンライン受講では、通信が途切れて受講時間が足りなくなる、受講者の様子が確認できないといったトラブルが起こりえます。会議室などに通信の安定したパソコンとカメラを用意し、受講中は現場の仕事から外すと、確実に修了できます。
▶ 現場での実地の指導は別途あると安心
足場の特別教育に実技の定めはありませんが、実際の組立て・解体では、部材の扱い方や墜落防止措置を現場で身につけることが欠かせません。法令上の特別教育とは別に、配属後に先輩作業者や作業主任者のもとで段階的に作業を覚えてもらう体制をとると、オンライン受講の弱点を補えます。
■ オンラインでも省略・違反の扱いは同じ
▶ 十分な知識がある科目は省略できる
特別教育の科目の全部または一部について十分な知識・技能があると認められる労働者は、その科目を省略できます(安衛則 第37条)。どの科目を省略できるかは、受講者の経歴や保有資格をもとに個別に判断が必要です。迷う場合は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
▶ 条件を満たさないオンライン教育は「実施した」と言えない
通達の条件を満たさない形で行った教育は、規程どおりの特別教育を行ったと説明できないおそれがあります。特別教育を行わずに業務につかせた場合、安衛法第59条第3項違反として、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります(安衛法 第119条第1号)。罰則の詳細は特別教育の罰則の記事をご覧ください。
■ 作業主任者(技能講習)とは別物
つり足場、張出し足場、高さ5m以上の構造の足場の組立て・解体・変更の作業では、作業主任者の選任が必要です(安衛法 第14条、施行令 第6条第15号)。作業主任者は「足場の組立て等作業主任者技能講習」を修了した者から選任しなければなりません(安衛則 第565条)。
技能講習は登録教習機関が行うもので、特別教育とは制度が異なります。足場の特別教育をオンラインで修了しても、作業主任者になれるわけではありません。技能講習の受講方法は各登録教習機関にご確認ください。特別教育と技能講習の違いは特別教育と技能講習の違いで整理しています。
▶ フルハーネス特別教育とセットで考える
足場の上で、作業床を設けることが困難な高さ2m以上の箇所でフルハーネス型の墜落制止用器具を使う作業は、別の特別教育の対象です(安衛則 第36条第41号)。こちらは規程第24条で実技1時間30分が定められているため、実技は講師と同じ場所で対面で受ける必要があります。足場の特別教育だけで済むのか、フルハーネス特別教育も必要かは、社員の作業内容から判断してください。
▶ 2027年4月からは役員・一人親方も対象に
令和7年の法改正(令和7年法律第33号)により、2027年(令和9年)4月1日から、中小事業者や個人事業者で自ら作業に従事する「作業従事役員等」も、労働者と同じ場所で特別教育の対象業務に就くときは特別教育を受けなければならなくなります(改正後の労働安全衛生法第59条第4項)。詳しくは安衛法改正まとめ(2026年)をご覧ください。
■ 産業技能センターの足場の組立て等特別教育
産業技能センターでは、足場の組立て等特別教育をオンラインで実施しています。
- 受講方法:Google Meetを使ったオンライン講習(1名様から)
- 料金:多くの科目が1名8,000円〜(税込・教材費・修了証発行費込み。人数・地域・実技の準備などにより変わる場合があり、正確な金額はお見積もりでご案内します)
- 出張講習:関東1都6県は5名様から(交通費・宿泊費・出張基本費なし)。遠方は20名様以上が目安です。遠方で少人数の場合はオンラインをご案内します。
お申込みの流れは、お問い合わせ → お見積もり → お見積もりのご確認後、お振込みをもって講習日を確定、となります。人数の変更は講習日の3日前まで承ります。受講方法の詳細はお問い合わせの際にご案内します。
フルハーネス特別教育もあわせて受けたい場合など、実技の進め方はご相談ください。お見積もりのご依頼はお問い合わせフォームからも受け付けています。
■ よくある質問
▶ Q. 足場の特別教育はオンラインだけで修了できますか?
A. できます。安全衛生特別教育規程 第22条で学科教育のみと定められているため、厚労省通達の条件(規程の時間以上の担保、講師の知識・経験、質問対応の体制)を満たすオンライン講習であれば、オンラインだけで修了できます。
▶ Q. 足場の特別教育に実技はありますか?
A. 規程上の実技教育はありません。学科4科目・合計6時間以上です。ただし実際の作業は現場での指導のもとで身につけることが大切です。
▶ Q. オンラインでも6時間かかりますか?
A. かかります。オンラインでも規程の時間以上の受講が必要で、科目の省略が認められる場合(安衛則 第37条)を除き、時間を短縮することはできません。
▶ Q. 足場の特別教育はスマホで受講できますか?
A. 通達が求めているのは端末の種類ではなく、受講した事実と時間を確認できることです。ただし6時間の受講になるため、画面の見やすさや通信の安定性を考えると、パソコンとカメラでの受講をおすすめします。
▶ Q. オンラインで修了した場合も修了証はもらえますか?
A. 当センターでは修了証を発行します(料金に修了証発行費を含みます)。会社は修了証の写しなどの記録を3年間保存してください(安衛則 第38条)。
■ まとめ
- 足場の組立て等特別教育は安衛則第36条第39号の業務が対象で、規程第22条により学科6時間のみ
- 実技がないため、厚労省通達(令和8年9月2日改正)の条件を満たせばオンラインで完結できる
- 条件は「規程の時間以上の担保」「講師の知識・経験」「質問対応の体制」の3つ
- 会社は受講記録を3年間保存(安衛則第38条)。フルハーネス特別教育の実技は対面が必要
- 作業主任者は技能講習の修了者から選任(安衛則第565条)で、特別教育とは別の制度
■ 講習のお申込み・ご相談
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■ 関連する記事
■ 参考情報・公式リソース
- 労働安全衛生法 第14条、第59条第3項、第119条(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法施行令 第6条第15号(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則 第36条第39号・第41号、第37条、第38条、第39条、第565条(e-Gov法令検索)
- 安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)第22条・第24条(厚生労働省 法令等データベース)
- 「インターネット等を介したeラーニング等により行われる労働安全衛生法に基づく安全衛生教育等の実施について」の改正について(令和8年9月2日 基安計発0902第1号ほか・厚生労働省)
- 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係省令の整備等に関する省令の改正について(概要)(労働政策審議会安全衛生分科会 資料)
