結論から、足場の組立て等特別教育とは、足場の組立て・解体・変更の作業に労働者を就かせるときに事業者が行わなければならない教育です(労働安全衛生法 第59条第3項、労働安全衛生規則 第36条第39号)。対象から除かれるのは「地上又は堅固な床上における補助作業」だけで、教育は学科のみ・合計6時間以上と定められています(安全衛生特別教育規程 第22条)。
足場の作業では「作業主任者がいれば作業員は受けなくてよいのか」「資材を運ぶだけの人も対象か」「5m未満の足場でも必要か」といった判断で迷う担当者が少なくありません。この記事では、対象範囲・科目と時間・作業主任者(技能講習)との違い・2015年からの改正の経緯を、条文と厚生労働省の資料に沿って整理します。
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■ この記事でわかること
- 足場の組立て等特別教育が必要な人と、対象外になる「補助作業」の範囲
- 学科4科目・合計6時間のカリキュラムと、省略できる場合
- 足場の組立て等作業主任者(技能講習)との違い
- 2015年7月の義務化と、2023年10月・2024年4月の足場関連の改正
- 受けさせなかった場合の罰則と、受講手配のチェックリスト
■ 足場の特別教育と作業主任者の早見表
足場の作業に関わる教育・資格は、作業に就く人の「特別教育」と、作業を指揮する人の「作業主任者技能講習」の2つに分かれます。
| 項目 | 足場の組立て等特別教育 | 足場の組立て等作業主任者技能講習 |
|---|---|---|
| 誰が必要か | 足場の組立て・解体・変更の作業に就く労働者 | 作業を直接指揮する作業主任者として選任される者 |
| 対象の足場 | 高さの限定なし/地上又は堅固な床上の補助作業は除く | つり足場(ゴンドラのつり足場を除く)・張出し足場・高さ5m以上の構造の足場 |
| 根拠 | 労働安全衛生法 第59条第3項/労働安全衛生規則 第36条第39号 | 労働安全衛生法 第14条/同法施行令 第6条第15号 |
| 実施者 | 事業者(外部の講習機関への委託も可) | 都道府県労働局長の登録を受けた登録教習機関 |
| 内容・時間 | 学科のみ・4科目・合計6時間以上(安全衛生特別教育規程 第22条) | 受講資格(足場作業の実務経験など)があり、修了試験を行う |
| 未実施・未選任の場合 | 6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(同法 第119条) | 未選任は同法 第14条違反として、同法 第119条の罰則(6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)の対象 |
■ 足場の組立て等特別教育とは
足場の組立て等特別教育は、2015年7月1日に特別教育の対象業務に追加された教育です。まず「誰が対象になるか」を条文の文言で確認します。
▶ 足場の特別教育は誰が受ける必要がある?
結論として、足場の組立て・解体・変更の作業に就く労働者は、補助作業だけを行う人を除いて受講が必要です(労働安全衛生規則 第36条第39号)。条文の対象は「足場の組立て、解体又は変更の作業に係る業務(地上又は堅固な床上における補助作業の業務を除く。)」です。
第39号の文言には足場の高さによる限定が置かれていないため、高さ5m未満の足場でも、組立て・解体・変更の作業に就くのであれば対象になります。特別教育を行う義務を負うのは事業者で、とび職などの専門業者に限らず、足場を組み立てる作業に労働者を就かせるすべての事業者が対象です。
▶ 対象外になる「補助作業」とは?
結論として、補助作業とは地上または堅固な床上での材料の運搬・整理などの作業で、足場上の作業は含まれません。厚生労働省の施行通達(平成27年3月31日 基発0331第9号)に基づく労働局の解説では、足場材の緊結・取り外しの作業や、足場上での補助作業は補助作業に含まれないと整理されています。
つまり「地上で足場材を運んで渡すだけ」の人は対象外ですが、足場に上がって材料を受け取る、緊結を手伝うといった作業をする人は対象です。現場では担当が日によって入れ替わることが多いため、足場に上がる可能性のある人は全員受講させておくと手配の漏れを防げます。
▶ フルハーネス特別教育とは別に必要?
結論として、足場の特別教育とフルハーネス特別教育は対象業務が異なる別の教育です。フルハーネス特別教育は、高さ2m以上で作業床を設けることが困難な箇所でフルハーネス型の墜落制止用器具を用いて行う作業が対象です(労働安全衛生規則 第36条第41号)。
足場の組立て・解体の途中は作業床が完成していない箇所で作業することがあり、そこでフルハーネス型を使う作業者は、両方の特別教育の対象になり得ます。詳しくはフルハーネス特別教育で解説しています。
■ 足場の特別教育の科目と時間(学科6時間)
科目・範囲・時間は、安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)第22条で定められています。
▶ 足場の特別教育は何時間?
結論として、足場の組立て等特別教育は学科教育のみで、4科目の合計は6時間以上です(安全衛生特別教育規程 第22条)。同条第1項は、この特別教育を「学科教育により行うものとする」と定めており、実技教育の時間は規定されていません。
| 科目 | 主な範囲 | 時間 |
|---|---|---|
| 足場及び作業の方法に関する知識 | 足場の種類・材料・構造・組立図/組立て・解体・変更の作業方法/点検・補修/登り桟橋・朝顔等の構造と作業方法 | 3時間 |
| 工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識 | 工事用設備・機械・器具・工具の取扱い/悪天候時の作業方法 | 30分 |
| 労働災害の防止に関する知識 | 墜落防止のための設備/落下物による危険防止/保護具の使用方法と保守点検/感電防止 | 1時間30分 |
| 関係法令 | 労働安全衛生法・同法施行令・労働安全衛生規則中の関係条項 | 1時間 |
| 合計 | 学科のみ(実技の規定なし) | 6時間 |
▶ 特別教育を省略できる人はいる?
結論として、十分な知識・技能があると認められる労働者は、該当する科目を省略できます(労働安全衛生規則 第37条)。労働局の解説では、全科目を省略できる例として、足場の組立て等作業主任者技能講習の修了者、とびの1級または2級の技能検定の合格者、職業訓練指導員免許(とび科)を受けた者などが挙げられています。
省略の判断と記録は事業者が行います。特別教育を行ったときは、受講者・科目等の記録を作成して3年間保存する必要があります(同規則 第38条)。記録の管理方法は安全衛生教育の記録の保存期間で解説しています。
■ 足場の組立て等作業主任者との違い
特別教育と作業主任者は、名前が似ていても役割・根拠・取得方法がまったく異なります。区分の考え方は特別教育と技能講習の違いでも整理しています。
▶ 作業主任者が必要になる足場は?
結論として、作業主任者の選任が必要なのは、つり足場・張出し足場・高さ5m以上の構造の足場の組立て・解体・変更の作業です(労働安全衛生法施行令 第6条第15号)。条文上は「つり足場(ゴンドラのつり足場を除く。)、張出し足場又は高さが五メートル以上の構造の足場」と定められています。
作業主任者は、足場の組立て等作業主任者技能講習を修了した者の中から選任し(労働安全衛生法 第14条)、作業の方法と労働者の配置を決め、作業の進行状況を監視するなどの職務を行わせます(労働安全衛生規則 第566条)。技能講習は登録教習機関が行い、足場作業の実務経験などの受講資格と修了試験があります。
▶ 作業主任者がいれば作業員は受けなくてよい?
結論として、作業主任者を選任していても、組立て等の作業に就く作業員一人ひとりに特別教育が必要です。作業主任者の選任(法第14条)と特別教育(法第59条第3項)は別の条文に基づく義務で、一方を満たしても他方は免除されません。
逆に、作業主任者技能講習の修了者が作業員として作業に就く場合は、前述のとおり特別教育の全科目を省略できます。また、作業主任者には、労働安全衛生法 第19条の2に基づく能力向上教育を定期的に受講させるよう努めることが求められています。詳しくは足場の組立て等作業主任者能力向上教育で解説しています。
■ 足場の特別教育の義務化と改正の経緯
足場の特別教育は2015年の改正で始まり、その後も足場からの墜落防止に関する規定が見直されています。現場の段取りに関わる改正を時系列で確認します。
▶ 足場の特別教育はいつから義務化された?
結論として、足場の組立て等特別教育は2015年(平成27年)7月1日から義務化されました(平成27年3月31日 基発0331第9号)。施行時点ですでにこの業務に従事していた労働者には、2017年(平成29年)6月30日までの経過措置があり、その期間に短縮した時間で教育を行うことも認められていました。
経過措置はすでに終了しているため、現在は経験年数にかかわらず、補助作業を除く組立て・解体・変更の作業に就くすべての労働者に特別教育が必要です。「以前からやっているので不要」という扱いはできません。
▶ 2023年・2024年の足場関連の改正は?
結論として、2023年10月1日から足場の点検者の指名と点検者氏名の記録・保存が、2024年4月1日から一側足場の使用範囲の明確化が施行されています(厚生労働省リーフレット)。いずれも特別教育の時間数を変える改正ではありませんが、足場の組立て等を行う現場の段取りに直接関わります。
| 施行日 | 改正の内容 | 現場での対応 |
|---|---|---|
| 2015年7月1日 | 足場の組立て等の業務を特別教育の対象に追加(安衛則 第36条第39号)/高さ2m以上の足場の組立て等の作業の墜落防止措置の強化 など | 補助作業以外の作業者に特別教育(経過措置は2017年6月30日まで) |
| 2023年10月1日 | 足場の点検の際、あらかじめ点検者を指名/組立て・一部解体・変更等の後の点検で、点検者の氏名を記録・保存(安衛則 第567条・第568条・第655条) | 書面・朝礼での伝達などで点検者を指名し、点検後に氏名を記録 |
| 2024年4月1日 | 一側足場の使用範囲の明確化 | 幅1m以上の箇所では原則として本足場を使用(つり足場や障害物などで本足場の使用が困難な場合を除く) |
厚生労働省のリーフレットでは、組立て等の後の点検者には、能力向上教育を受けた足場の組立て等作業主任者など、十分な知識・経験を有する者を指名することが適切とされています。
■ 足場の特別教育を受けさせないとどうなる?
特別教育を行わずに足場の組立て等の作業に就かせることは、事業者の法令違反になります。
▶ 特別教育を行わないと罰則はある?
結論として、特別教育を行わずに作業に就かせた場合、違反行為者は6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(労働安全衛生法 第119条第1号・第59条第3項)。両罰規定により、法人にも罰金刑が科されることがあります(同法 第122条)。
【違反リスク】
罰則の対象は、教育を受けていない労働者本人ではなく、作業に就かせた事業者です。下請の作業員であっても、教育の実施義務はその労働者を雇用する事業者にあります。元請として現場に入場させる際は、入場前に修了証や教育記録で受講を確認しておくと、是正の手戻りを防げます。
罰則や行政指導の流れは特別教育を受けさせないとどうなる?で詳しく解説しています。
次の現場までに足場に上がる作業員全員の特別教育が間に合うか不安なら、お電話でご相談ください。
📞 042-497-8840 に電話して相談する(相談無料・年中無休・7:00〜21:00)
作業内容をうかがい、必要な教育と受講方法をご案内します。
■ 産業技能センターの足場の組立て等特別教育
当センターでは、安全衛生特別教育規程 第22条の科目・時間に沿って足場の組立て等特別教育を実施し、修了者には修了証を発行しています。
▶ 受講料はいくら?
結論として、当センターの受講料は1名あたり8,000円〜(税込・教材費・修了証発行費込み)です。少人数での出張や遠方への出張の場合は、料金が上がる場合があります。人数・受講方法ごとの概算は料金シミュレーターで確認できます。
▶ 受講方法は?
結論として、受講方法はオンライン講習(1名から)と出張講習(関東1都6県は5名様から)の2つです。関東1都6県の出張講習は、交通費・宿泊費・出張基本費がかかりません。遠方への出張は20名様以上が目安です。会場講習は現在定期の受付を停止しており、人数に応じて近隣会場での開催をご相談いただけます。科目ごとの対応形式はお問い合わせください。
| 受講方法 | 人数の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|
| オンライン講習 | 1名から | 新規入場者・中途採用者など、少人数をすぐに受講させたい |
| 出張講習(関東1都6県) | 5名様から | 自社の作業員をまとめて受講させたい/交通費・宿泊費・出張基本費なし |
| 出張講習(遠方) | 20名様以上が目安 | 関東以外の拠点でまとめて実施したい |
■ 足場の特別教育 手配前のチェックリスト
受講者の洗い出しと記録の準備を、次の項目で確認してください。
- 足場に上がって組立て・解体・変更の作業をする人を全員洗い出した(地上での運搬・整理だけの人と区別した)
- 高さ5m未満の足場だけを扱う作業員も対象に含めた
- 作業主任者技能講習の修了者・とび技能検定の合格者など、科目を省略できる人を修了証などで確認した
- 作業床のない箇所でフルハーネス型を使う作業員に、フルハーネス特別教育が必要か確認した
- つり足場・張出し足場・高さ5m以上の足場の現場に、技能講習修了者を作業主任者として選任する段取りがある
- 足場の点検者の指名方法と、点検者氏名の記録の様式を決めている
- 特別教育の受講者・科目等の記録を3年間保存する担当と保管場所を決めている
■ よくある質問
▶ Q. 高さ2m未満の足場でも特別教育は必要ですか?
労働安全衛生規則 第36条第39号の文言には足場の高さによる限定がないため、組立て・解体・変更の作業に就く場合は対象になると考えられます。個別の現場で判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確認してください。
▶ Q. 実技はありますか?
安全衛生特別教育規程 第22条は、足場の組立て等特別教育を学科教育により行うと定めており、実技の時間は規定されていません。学科4科目・合計6時間以上です。
▶ Q. 修了後に更新は必要ですか?
足場の組立て等特別教育には、法令上の有効期限や更新の定めはありません。有効期限の考え方は特別教育に有効期限はある?で解説しています。
▶ Q. 特別教育を受ければ作業主任者になれますか?
なれません。作業主任者には、登録教習機関が行う足場の組立て等作業主任者技能講習の修了が必要です(労働安全衛生法 第14条)。特別教育は作業に就く労働者のための教育で、作業主任者の資格にはなりません。
▶ Q. 下請の作業員の特別教育は元請が行うのですか?
特別教育の実施義務は、その労働者を作業に就かせる事業者(雇用する会社)にあります(労働安全衛生法 第59条第3項)。元請は、入場時に修了証や教育記録で受講を確認しておくと安心です。
■ まとめ
足場の組立て等特別教育は、足場の組立て・解体・変更の作業に就く労働者に事業者が行う教育で、地上または堅固な床上での補助作業だけが対象外です(労働安全衛生規則 第36条第39号)。内容は学科4科目・合計6時間以上で、実技の規定はありません(安全衛生特別教育規程 第22条)。
つり足場・張出し足場・高さ5m以上の足場では、これとは別に技能講習修了者を作業主任者に選任する必要があります(労働安全衛生法施行令 第6条第15号)。2023年10月からの点検者の指名・記録、2024年4月からの一側足場の使用範囲の明確化もあわせて、現場の段取りを確認しておきましょう。
■ 関連する特別教育・安全衛生教育
■ 講習のお申込み・ご相談
足場の組立て等特別教育のお申込みやご相談は、受講方法の案内ページまたは問い合わせページから受け付けています。お問い合わせ後、お見積もり・お振込みを経て講習日が確定します。
受講人数や日程が決まっていない段階でも、お見積もり・日程のご相談を承ります。
📞 042-497-8840 に電話して相談する(相談無料・年中無休・7:00〜21:00)
オンライン(1名から)と出張(関東1都6県は5名様から)のうち、作業員の人数と現場の日程に合った受講方法をご案内します。
■ 参考情報・公式リソース
| サイト名 | 概要 | リンク |
|---|---|---|
| e-Gov法令検索|労働安全衛生規則 | 第36条第39号・第37条・第38条・第566条〜第568条の条文 | 公式サイト |
| e-Gov法令検索|労働安全衛生法 | 第14条・第59条・第119条・第122条の条文 | 公式サイト |
| 厚生労働省|安全衛生特別教育規程 | 第22条(足場の組立て等の業務に係る特別教育)の科目・範囲・時間 | 公式サイト |
| 静岡労働局|足場からの墜落防止措置が強化されます(平成27年) | 特別教育の追加・補助作業の範囲・経過措置(基発0331第9号) | 公式サイト |
| 秋田労働局|足場の組立て等特別教育 | 科目・時間、全部省略できる者、作業主任者能力向上教育 | 公式サイト |
| 厚生労働省|足場からの墜落防止措置が強化されます(令和5年・令和6年施行) | 点検者の指名・氏名の記録、一側足場の使用範囲の明確化 | 公式サイト |
| 富山労働局|足場に関する法令改正 | 施行日ごとの改正内容 | 公式サイト |
| 厚生労働省|職場のあんぜんサイト「作業主任者」 | 作業主任者の選任が必要な作業と技能講習 | 公式サイト |
