石綿取扱作業従事者特別教育(法令上は「石綿使用建築物等解体等業務特別教育」)は、石綿が使われている建築物・工作物・鋼製の船舶の解体や改修の業務に労働者を就かせるとき、事業者が行わなければならない特別教育です(石綿障害予防規則 第27条、労働安全衛生法 第59条第3項)。学科のみの5科目・合計4.5時間以上で、科目と時間は厚生労働省の告示で決められています。
また、2026年(令和8年)1月1日からは、建築物・鋼製の船舶に加えて、特定工作物などの工作物の石綿事前調査も、資格を持つ人に行わせることが義務になりました(石綿障害予防規則 第3条第4項)。この記事では、特別教育の対象・カリキュラム・罰則と、2026年1月1日施行の改正で現場が確認すべき点を、条文と厚生労働省の資料にもとづいて解説します。
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■ この記事でわかること
- 石綿の特別教育が必要な業務と、根拠条文
- 5科目・4.5時間のカリキュラム
- 石綿作業主任者(技能講習)や事前調査者との違い
- 2026年1月から工作物にも広がった有資格者による事前調査と、事前調査結果の報告が必要な工事
- 罰則と、保存が必要な記録(3年・40年)
■ 石綿特別教育の早見表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠条文 | 石綿障害予防規則 第27条/労働安全衛生法 第59条第3項 |
| カリキュラムの根拠 | 石綿使用建築物等解体等業務特別教育規程(平成17年厚生労働省告示第132号) |
| 対象となる業務 | 石綿等が使用されている(使用されているとみなす場合を含む)建築物・工作物・鋼製の船舶の解体・改修(封じ込め・囲い込みを含む)の作業に係る業務 |
| 教育の内容 | 学科のみ・5科目・合計4.5時間以上 |
| 罰則 | 特別教育を行わずに業務に就かせると、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(労働安全衛生法 第119条第1号)・両罰規定(同法 第122条) |
| 2026年1月1日施行の改正 | 建築物・鋼製の船舶(2023年10月1日から)に続き、特定工作物などの工作物の事前調査も有資格者が行うことが義務化(石綿障害予防規則 第3条第4項) |
■ 石綿取扱作業従事者特別教育とは
石綿取扱作業従事者特別教育は、石綿の粉じんにさらされるおそれがある解体・改修の業務に就く労働者に、健康障害を防ぐための知識を身につけさせる教育です。
▶ 特別教育が必要な業務は?
石綿等が使用されている建築物・工作物・鋼製の船舶の解体等の作業(石綿使用建築物等解体等作業)に係る業務に労働者を就かせるときに必要です(石綿障害予防規則 第27条第1項)。解体等の作業には、解体だけでなく改修や、封じ込め・囲い込みも含まれます(同規則 第3条第1項)。事前調査で石綿の有無がわからず、石綿が使用されているものとみなして措置をとる場合も、石綿使用建築物等解体等作業に含まれます(同規則 第4条第1項)。
▶ 免許や技能講習とは何が違う?
特別教育は、事業者が労働者に行う教育で、国家試験のある免許や、登録教習機関で受ける技能講習とは区分が異なります。石綿の作業では、作業を指揮する石綿作業主任者は「石綿作業主任者技能講習」の修了者から選任する必要があり(石綿障害予防規則 第19条)、作業に従事する労働者には特別教育が必要です。区分の違いは特別教育と技能講習の違いで整理しています。
| 立場 | 必要な教育・資格 | 根拠 |
|---|---|---|
| 解体・改修の作業に従事する労働者 | 石綿使用建築物等解体等業務特別教育 | 石綿障害予防規則 第27条 |
| 作業を指揮する人 | 石綿作業主任者技能講習の修了(石綿作業主任者に選任) | 石綿障害予防規則 第19条 |
| 事前調査を行う人 | 建築物石綿含有建材調査者・工作物石綿事前調査者など、厚生労働大臣が定める者 | 石綿障害予防規則 第3条第4項 |
■ 石綿特別教育のカリキュラム(5科目・4.5時間)
特別教育は学科のみで、5科目について告示で定められた時間以上行います(石綿使用建築物等解体等業務特別教育規程)。実技の科目はありません。
| 科目 | 主な範囲 | 時間 |
|---|---|---|
| 石綿の有害性 | 石綿の性状/石綿による疾病の病理と症状/喫煙の影響 | 0.5時間 |
| 石綿等の使用状況 | 石綿を含有する製品の種類と用途/事前調査の方法 | 1時間 |
| 石綿等の粉じんの発散を抑制するための措置 | 解体等の作業の方法/湿潤化の方法/作業場所の隔離の方法/その他の発散抑制の措置 | 1時間 |
| 保護具の使用方法 | 保護具の種類、性能、使用方法及び管理 | 1時間 |
| その他石綿等のばく露の防止に関し必要な事項 | 関係法令の条項/石綿等による健康障害を防止するため当該業務について必要な事項 | 1時間 |
| 合計 | 4.5時間以上 | |
「保護具の使用方法」は、2009年(平成21年)の告示改正で30分から1時間に延長されました。古い資料では合計4時間と書かれていることがあるため、社内教育で使う資料の時間数を確認しておきましょう。
■ 2026年1月施行:工作物の事前調査も有資格者に
石綿の対策は、解体・改修の前の「事前調査」から始まります。事業者は、作業の対象となる部分のすべての材料について、原則として設計図書等の文書の確認と目視の両方で石綿の使用の有無を調べなければなりません(石綿障害予防規則 第3条第1項・第2項)。
▶ 事前調査は誰が行う?
事前調査は、一部の例外を除き、厚生労働大臣が定める知識を持つ人(有資格者)に行わせる必要があります(石綿障害予防規則 第3条第4項)。建築物と鋼製の船舶は2023年(令和5年)10月1日以降に着工する工事から(令和2年厚生労働省令第134号による改正)、工作物は2026年(令和8年)1月1日以降に着工する工事から(令和5年厚生労働省令第2号による改正)、この規定が適用されています。
| 対象 | 有資格者による事前調査の開始 | 主な資格 |
|---|---|---|
| 建築物・鋼製の船舶 | 2023年10月1日以降に着工する工事から | 建築物石綿含有建材調査者 など(船舶は船舶石綿含有資材調査者 など) |
| 工作物 | 2026年1月1日以降に着工する工事から | 工作物石綿事前調査者 など(工作物の種類によって調査できる資格が異なる) |
工作物で有資格者による調査が必要になるのは、反応槽・ボイラー・配管設備・煙突・トンネルの天井板など石綿が使用されているおそれが高いとして厚生労働大臣が定める工作物(特定工作物)の解体等と、それ以外の工作物のうち塗料など石綿が使用されているおそれがある材料の除去等の作業です(石綿障害予防規則 第3条第4項ただし書)。
▶ 事前調査の結果を報告する工事
一定規模以上の工事は、事前調査の結果等を、あらかじめ電子システム(石綿事前調査結果報告システム)で所轄の労働基準監督署長に報告する必要があります(石綿障害予防規則 第4条の2)。この報告は、2022年(令和4年)4月1日以降に着工する工事から義務になっています。
| 工事の種類 | 報告が必要な規模 |
|---|---|
| 建築物の解体工事 | 解体部分の床面積の合計が80平方メートル以上 |
| 建築物の改修工事 | 請負代金の額が100万円以上 |
| 特定工作物の解体工事・改修工事 | 請負代金の額が100万円以上 |
| 船舶の解体工事・改修工事 | 総トン数20トン以上の船舶 |
事前調査の記録は、調査を終了した日から3年間保存します(石綿障害予防規則 第3条第7項)。記録には、調査を行った人の氏名と、有資格者であることを証明する書類の写しも含めます。
■ 罰則と保存が必要な記録
▶ 特別教育をしないと罰則はある?
特別教育を行わずに石綿の解体・改修の業務に就かせた場合は、労働安全衛生法 第59条第3項の違反として罰則の対象になります。
【違反リスク】
労働安全衛生法 第119条第1号では、第59条第3項に違反した者は6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金とされ、同法 第122条の両罰規定により法人にも罰金刑が科され得ます。罰則が実際にどう適用されるかは事案ごとに判断されるため、詳しくは所轄の労働基準監督署にご確認ください。特別教育を受けさせないとどうなるかは特別教育を受けさせないとどうなる?でも解説しています。
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▶ 保存が必要な記録
石綿の作業では、特別教育の記録のほかに、長期の保存が必要な記録があります。
| 記録 | 保存期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 特別教育の受講者・科目等の記録 | 3年間 | 労働安全衛生規則 第38条 |
| 事前調査(分析調査)の記録 | 調査終了日から3年間 | 石綿障害予防規則 第3条第7項 |
| 石綿の作業に常時従事する労働者の作業の記録(1か月を超えない期間ごと) | 常時従事しなくなった日から40年間 | 石綿障害予防規則 第35条 |
| 石綿健康診断個人票(雇入れ時・配置替え時と、その後6か月以内ごとに1回の健康診断) | 常時従事しなくなった日から40年間 | 石綿障害予防規則 第40条・第41条 |
教育記録の残し方は安全衛生教育の記録の保存期間で詳しく解説しています。
■ 当センターの石綿取扱作業従事者特別教育
当センターの石綿取扱作業従事者特別教育は、1名8,000円(税込・教材費・修了証発行費込み)です。受講人数や開催地に応じた費用は料金シミュレーターで概算を確認できます。受講方法と日程はご相談時にご案内します。
■ よくある質問
▶ 実技はありますか?
ありません。石綿使用建築物等解体等業務特別教育規程で定められているのは学科教育の5科目(合計4.5時間以上)です。
▶ 修了証に有効期限はありますか?
法令に有効期限の定めはありません。ただし、法改正や新しい知見に合わせて知識を更新しておくことが大切です。詳しくは特別教育に有効期限はある?をご覧ください。
▶ 特別教育を受ければ事前調査もできますか?
特別教育を修了しただけでは、資格が必要な事前調査を行うことはできません。事前調査は、一部の例外を除き、建築物石綿含有建材調査者や工作物石綿事前調査者など、厚生労働大臣が定める資格を持つ人が行う必要があります(石綿障害予防規則 第3条第4項)。特別教育は、解体・改修の作業に従事する労働者のための教育です。
■ 着工前のチェックリスト
- 建築物・工作物の事前調査を有資格者が行い、記録を作成した
- 報告対象の工事(解体80平方メートル以上・改修100万円以上など)は、電子システムで報告した
- 石綿がある場合は作業計画を定めた(石綿障害予防規則 第4条)
- 作業に従事する労働者全員が特別教育を修了している
- 石綿作業主任者を選任した(技能講習修了者)
- 特別教育・作業・健康診断の記録の保存方法を決めた
■ まとめ
石綿取扱作業従事者特別教育は、石綿が使われている建築物・工作物・鋼製の船舶の解体や改修の業務に労働者を就かせるときに必要な特別教育で、学科5科目・合計4.5時間以上です(石綿障害予防規則 第27条)。行わずに業務に就かせると、労働安全衛生法の罰則の対象になります。
2026年1月1日からは、特定工作物などの工作物の事前調査も有資格者が行う必要があります。事前調査・報告・特別教育・作業主任者の選任を、着工前にそろえておきましょう。
■ 関連する特別教育・安全衛生教育
■ 講習のお申込み・ご相談
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■ 参考情報・公式リソース
| サイト名 | 概要 | リンク |
|---|---|---|
| e-Gov法令検索|石綿障害予防規則 | 第3条・第4条・第4条の2・第19条・第27条・第35条・第40条・第41条の条文 | 公式サイト |
| e-Gov法令検索|労働安全衛生法 | 第59条・第119条・第122条の条文 | 公式サイト |
| 厚生労働省|石綿使用建築物等解体等業務特別教育規程 | 特別教育の科目・範囲・時間(平成17年厚生労働省告示第132号) | 公式サイト |
| 厚生労働省|石綿障害予防規則の一部を改正する省令(令和5年厚生労働省令第2号) | 工作物の事前調査の有資格者による実施(2026年1月1日施行) | 公式サイト |
| 厚生労働省|石綿総合情報ポータルサイト | 事前調査・報告・調査者講習の総合案内 | 公式サイト |
| 厚生労働省|工事の元請業者のみなさまへ | 事前調査・記録・掲示・報告・届出の義務の整理 | 公式サイト |
| 厚生労働省|石綿事前調査結果報告システム | 事前調査結果の電子報告 | 公式サイト |
| 環境省|アスベスト(石綿)飛散防止対策 | 大気汚染防止法にもとづく石綿の規制 | 公式サイト |
