新規入場者教育とは、建設現場に新たに入って作業する人に、その現場の状況や危険な箇所、作業どうしの関係などを、作業を始める前に伝える教育です。法令では、建設業の元請(特定元方事業者)に、そのための場所や資料を提供する措置が義務づけられています(労働安全衛生規則 第642条の3)。進め方は、通達「元方事業者による建設現場安全管理指針」(平成7年4月21日 基発第267号の2)に示されています。
この記事では、新規入場者教育の法的根拠、誰が実施するのか、雇入れ時教育・送り出し教育との違い、教える内容と時間、記録の残し方、外国人労働者への配慮を、法令の条文と厚生労働省の資料(いずれも2026年11月4日に確認)をもとに整理しました。元請・下請の現場責任者、職長、安全担当の方に向けた内容です。
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■ この記事でわかること
- 新規入場者教育とは何か、法律上の義務なのか(安衛法 第29条・第30条、安衛則 第638条・第642条の3)
- 元請と下請、それぞれが実施すること(建設現場安全管理指針)
- 雇入れ時教育・送り出し教育・新規入場者教育の違い
- 送り出し教育とは(誰が・いつ・何を教えるか)と記入例
- 教育内容の8項目と、時間の考え方
- 記録・実施報告書の記入例(項目例)と残し方、外国人労働者への配慮
■ 新規入場者教育の早見表
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 対象の現場 | 建設業で、元請と下請の作業が同じ場所で行われる現場 | 安衛法 第30条第1項、安衛則 第642条の3 |
| 対象者 | その現場で新たに作業に従事することとなった人(下請の作業員など) | 安衛則 第642条の3、指針 第2の9 |
| 元請(特定元方事業者)の義務 | 周知のための場所の提供、資料の提供等の措置(自ら周知する場合は不要) | 安衛則 第642条の3 |
| 元請の教育への援助 | 下請が行う安全衛生教育への指導・援助(場所・資料の提供等) | 安衛法 第30条第1項第4号、安衛則 第638条 |
| 実施者(指針) | 下請(関係請負人)が、作業に従事する前に職長等から周知し、元請に結果を報告 | 指針 第2の14(8) |
| 教育内容 | 混在作業の状況、危険箇所と立入禁止区域、作業相互の関係、避難の方法、指揮命令系統など8項目 | 指針 第2の14(8) |
| 時間 | 法令・指針に定めなし | (確認した範囲) |
| 記録の保存期間 | 法令の定めは確認できず(特別教育は3年) | 安衛則 第38条(特別教育) |
■ 新規入場者教育とは
結論として、新規入場者教育は、現場ごとに異なる危険を、入場した最初の段階で知らせるための教育です。建設現場は、工事の進み具合で足場や開口部、重機の動線が日々変わります。同じ職種のベテランでも、初めて入る現場の「どこが危ないか」「誰の指示で動くか」「何かあったらどこへ逃げるか」は知りません。
このため、元請と複数の下請が同じ場所で作業する建設現場では、新しく入る人に現場固有の情報を伝える仕組みが、法令と通達の両方で定められています。現場では「新規入場者教育」「新規入場時教育」「受入教育」などと呼ばれますが、いずれも、入場する現場で行う教育を指すことが一般的です。建築工事か土木工事かを問わず、元請と下請が同じ場所で作業する建設現場が対象になります。
▶ 「元方事業者」「特定元方事業者」「関係請負人」とは
結論として、元請が「元方事業者」、そのうち建設業の元請が「特定元方事業者」、下請が「関係請負人」です。労働安全衛生法 第15条第1項は、一の場所で行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせている事業者を元方事業者とし、そのうち建設業などの特定事業を行う者を特定元方事業者としています。
| 法令上の用語 | 現場での呼び方の例 | 根拠 |
|---|---|---|
| 元方事業者 | 元請(最も上位の注文者) | 安衛法 第15条第1項 |
| 特定元方事業者 | 建設業・造船業の元請 | 安衛法 第15条第1項 |
| 関係請負人 | 下請(一次・二次以下を含む) | 安衛法 第15条第1項 |
| 作業従事者 | 現場で作業する人(労働者を含む) | 安衛法 第29条、安衛則 第642条の3 |
なお、2026年11月4日にe-Govで確認した現行の条文では、第29条や安衛則 第642条の3で「労働者」ではなく「作業従事者」という語が使われています。社内の資料に古い条文を引用している場合は、最新の条文と照らし合わせておきましょう。
■ 新規入場者教育の法的根拠
結論として、新規入場者教育の根拠は、元請の義務(労働安全衛生法 第29条・第30条、労働安全衛生規則 第638条・第642条の3)と、通達の指針(平成7年4月21日 基発第267号の2)の二つに分かれます。「新規入場者教育」という名前そのものは条文には出てこず、指針で使われている言葉です。
▶ 労働安全衛生法 第29条:元請の指導・指示
結論として、元請は、下請と下請の作業従事者が法令に違反しないよう必要な指導を行い、違反を認めたときは是正のため必要な指示をしなければなりません(労働安全衛生法 第29条第1項・第2項)。指示を受けた下請と作業従事者は、その指示に従う必要があります(同条第3項)。新規入場者教育の場は、現場のルールや法令上守るべき事項を伝える機会でもあります。
▶ 労働安全衛生法 第30条:特定元方事業者の措置
結論として、建設業の元請(特定元方事業者)は、元請と下請の作業が同じ場所で行われることで生じる労働災害を防ぐため、必要な措置を講じなければなりません(労働安全衛生法 第30条第1項)。主な措置は次のとおりです。
- 協議組織の設置・運営(第1号)
- 作業間の連絡・調整(第2号)
- 作業場所の巡視(第3号)
- 関係請負人が行う労働者の安全または衛生のための教育に対する指導および援助(第4号)
- 工程・機械設備の配置の計画(第5号)ほか
第4号の「教育に対する指導及び援助」について、労働安全衛生規則 第638条は、教育を行う場所の提供、教育に使用する資料の提供等の措置を講じなければならないとしています。
▶ 労働安全衛生規則 第642条の3:周知のための場所・資料の提供
結論として、建設業の特定元方事業者は、現場で新たに作業に従事することとなった下請の作業従事者に、「当該場所の状況(作業従事者に危険を生ずるおそれのある箇所の状況を含む。以下この条において同じ。)、当該場所において行われる作業相互の関係等」を下請が周知させるため、周知のための場所の提供、資料の提供等の措置を講じなければなりません(労働安全衛生規則 第642条の3)。
ただし、特定元方事業者が自ら、下請の作業従事者にその場所の状況や作業相互の関係などを周知させる場合は、この措置は不要です(同条ただし書)。つまり、元請が直接新規入場者教育を行う現場もあれば、下請が元請の資料を使って行う現場もある、という条文の作りになっています。
なお、この措置を講じるのは通常は特定元方事業者ですが、労働安全衛生法 第30条第2項・第3項により措置を講ずべき者の指名が行われた場合は、指名された事業者が行います(労働安全衛生規則 第642条の4による準用)。
▶ 法令の対象と指針の対象の違い(作業従事者)
結論として、安衛則 第642条の3の現行の条文は、対象を「関係請負人に係る作業従事者」としており、雇用される労働者に限りません。厚生労働省の安全衛生分科会資料では、2026年4月1日施行の法改正に伴い、法第30条等の対象が「労働者」から「作業従事者」に拡大され、「関係請負人の労働者」が「関係請負人に係る作業従事者」に改められると説明されています。個人事業者(いわゆる一人親方など)も含み得ますが、作業従事者の範囲の細部は通達等で示されるとされているため、個別のケースは所轄の労働基準監督署に確認してください。
一方、「元方事業者による建設現場安全管理指針」(平成7年)は、関係請負人がその労働者に新規入場者教育を行う方法を示したものです。つまり、場所・資料の提供が必要な法令上の対象は作業従事者まで広がっており、指針はその進め方の目安として読む、という整理になります。現場では、一人親方などにも同じ8項目を伝えておくと漏れがありません。
▶ 通達「元方事業者による建設現場安全管理指針」
結論として、新規入場者教育の具体的な進め方は、「元方事業者による建設現場安全管理指針」(平成7年4月21日 基発第267号の2)に示されています。この指針には、元方事業者が実施する事項と、関係請負人が実施する事項が分けて示されています。指針の項目は次のとおりです。
| 番号 | 指針の項目(元方事業者の実施事項) |
|---|---|
| 1 | 安全衛生管理計画の作成 |
| 2 | 過度の重層請負の改善 |
| 3 | 請負契約における労働災害防止対策の実施者およびその経費の負担者の明確化等 |
| 4 | 元方事業者による関係請負人およびその労働者の把握等 |
| 5 | 作業手順書の作成(元方事業者が関係請負人に作成を指導する。作成するのは関係請負人=第2の14(4)) |
| 6 | 協議組織の設置・運営 |
| 7 | 作業間の連絡および調整 |
| 8 | 作業場所の巡視 |
| 9 | 新規入場者教育 |
| 10 | 新たに作業を行う関係請負人に対する措置 |
| 11 | 作業開始前の安全衛生打合せ |
| 12 | 安全施工サイクル活動の実施 |
| 13 | 職長会(リーダー会)の設置 |
【注意】
指針は通達で示された行政の指導文書で、条文のように罰則が直接結びつくものではありません。一方、安衛法 第30条第1項の違反は、同法 第120条第1号の罰則(50万円以下の罰金)の対象として列挙されています(2026年11月4日にe-Govで確認)。具体的な事案がどの条文の違反に当たるかは、所轄の労働基準監督署に確認してください。
■ 誰が実施するのか(元請と下請の役割)
結論として、指針では、新規入場者教育を行うのは下請(関係請負人)、場所・資料を出して実施状況を把握するのは元請という役割分担になっています。現場によっては元請が自ら行う場合もあり、そのときは安衛則 第642条の3ただし書のとおり、場所・資料の提供の措置は不要です。
▶ 元請(元方事業者)がすること
結論として、元請は、新規入場者教育の適切な実施に必要な場所・資料の提供等の援助を行い、教育の実施状況を下請に報告させて把握します(指針 第2の9)。指針では、ほかにも次のことが示されています。
- 関係請負人に、毎作業日の作業開始前までに労働者の数を通知させ、把握する(指針 第2の4(2))
- 関係請負人に、雇用する労働者の免許・資格の取得、特別教育・職長教育の受講の有無等を把握するよう指導し、新たに作業に従事する労働者について、作業に従事する前までに通知させて把握する(同)
- 新たに作業を行うこととなった関係請負人に、作業開始前に、それまでの協議組織の会議内容や作業間の連絡調整の結果のうち、その関係請負人に係る事項を周知する(指針 第2の10)
▶ 下請(関係請負人)がすること
結論として、下請は、新たに現場で作業する自社の労働者に、作業に従事する前に、その建設現場の特性を踏まえて、決められた事項を職長等から周知し、その結果を元請に報告します(指針 第2の14(8))。周知する事項は、次の章の8項目です。
職長は、新規入場者教育を担うだけでなく、日々の作業指示や危険予知活動の中心になります。職長に必要な教育は職長・安全衛生責任者教育、安全衛生責任者の役割は安全衛生責任者とはで解説しています。
▶ 元請の社員も対象になるか
結論として、安衛則 第642条の3と指針 第2の9・第2の14(8)が直接の対象としているのは、下請(関係請負人)側で新たに作業に従事する人です。元請の社員が新たに現場に配属された場合について、指針に同じ手続きの定めは確認できませんでした。
ただし、元請の社員も、現場の危険箇所や避難の方法を知らなければ危険は同じです。また元請の社員を雇い入れたとき・作業内容を変更したときには、雇用主として雇入れ時等の教育の義務があります(労働安全衛生法 第59条第1項・第2項)。現場の運用として、元請社員も新規入場者と同じ内容を受けるルールにしておくと、説明の漏れを防げます。
■ 雇入れ時教育・送り出し教育・新規入場者教育の違い
結論として、三つの教育は「誰が」「いつ」「何を根拠に」行うかが違います。雇入れ時教育は法律上の雇用主の義務、新規入場者教育は元請の措置義務と指針にもとづく現場単位の教育、送り出し教育は法令上の定義が確認できない、業界で使われる言葉です。
| 項目 | 雇入れ時教育 | 送り出し教育 | 新規入場者教育 |
|---|---|---|---|
| 実施する人 | 雇用主(事業者) | 作業員を現場に出す会社(下請など) | 下請が職長等から周知(元請が自ら行う場合もある) |
| タイミング | 雇い入れたとき・作業内容を変更したとき(遅滞なく) | 現場に送り出す前 | その現場で作業に従事する前 |
| 内容 | 従事する業務に関する安全衛生(安衛則 第35条の8項目) | 自社のルール、職種の作業手順、現場に入る前の準備など(法令上の定めは確認できず) | 現場の状況、危険箇所、作業相互の関係、避難の方法など(指針の8項目) |
| 根拠 | 安衛法 第59条第1項・第2項、安衛則 第35条 | 法令上の定義・実施義務は確認できず | 安衛法 第30条第1項、安衛則 第638条・第642条の3、基発第267号の2 |
| 罰則 | 第59条第1項違反は安衛法 第120条第1号(50万円以下の罰金) | — | 教育自体の罰則規定は確認できず(第30条第1項違反は第120条第1号に列挙) |
| 記録の保存期間 | 法令の定めは確認できず | 法令の定めは確認できず | 法令の定めは確認できず |
▶ 雇入れ時教育:雇用主の法律上の義務
結論として、雇入れ時教育は、労働者を雇い入れた事業者が行う法律上の義務です。労働安全衛生法 第59条第1項は「事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない」と定め、作業内容を変更したときにも準用されます(同条第2項)。
内容は労働安全衛生規則 第35条の8項目で、遅滞なく行います。十分な知識・技能を持つと認められる人には、その項目を省略できます(同条第2項)。
- 機械等・原材料等の危険性または有害性と取扱い方法
- 安全装置・有害物抑制装置・保護具の性能と取扱い方法
- 作業手順
- 作業開始時の点検
- 業務に関して発生するおそれのある疾病の原因と予防
- 整理・整頓・清潔の保持
- 事故時等の応急措置・退避
- そのほか業務に関する安全または衛生のために必要な事項
現場を移るたびに受ける新規入場者教育で、雇入れ時教育の代わりにはなりません。詳しくは雇入れ時の安全衛生教育とはをご覧ください。
▶ 新規入場者教育:その現場の危険を知る教育
結論として、新規入場者教育は、入場する現場ごとに行う教育です。送り出し教育が「会社として伝えること」なら、新規入場者教育は「この現場で知っておくべきこと」です。同じ作業員でも、別の現場に入るたびに受けることになります。
■ 送り出し教育とは(誰が・いつ・何を教えるか)
結論として、送り出し教育とは、法令上の用語ではなく建設業界で使われる言葉で、下請などの会社(誰が)が、自社の作業員を現場に送り出す前に(いつ)、自社の安全ルールや職種の作業手順、必要な資格の確認などを教える教育(内容)を指します。入場する現場で行う新規入場者教育の前段階にあたります。
| 項目 | 送り出し教育(業界での一般的な使われ方) |
|---|---|
| 誰が | 作業員を現場に出す会社(下請・協力会社など)。実際に説明するのは職長や安全担当者など、会社が決めた人 |
| いつ | 現場に送り出す前(新規入場者教育を受けるより前) |
| 何を | 自社の安全衛生のルール、職種の作業手順と災害事例、現場の概要、資格・特別教育の確認、元請への提出書類の準備など |
| 法令上の位置づけ | 定義・実施義務の規定は確認できず(2026年11月4日時点) |
2026年11月4日に確認した範囲では、法令に「送り出し教育」の定義や実施義務の規定はなく、「元方事業者による建設現場安全管理指針」の本文にも手続きとしての記載は見当たりませんでした。ただし、送り出す作業員を雇い入れたとき・作業内容を変更したときの雇入れ時等の教育(労働安全衛生法 第59条第1項・第2項)は、雇用主の法律上の義務です。送り出し教育を、この雇入れ時教育とあわせて計画すると漏れを防げます。
厚生労働省のサイトに掲載された「安全衛生経費確保のためのガイドブック」の安全衛生経費の費目総括表(建設業労働災害防止協会の報告書を一部改編)には、教育訓練費の項目として「新規入場者教育、送り出し教育」が挙げられています。費用の負担区分は、元請・下請の契約で明確にしておくことが求められています。
▶ 送り出し教育で教える内容の例
結論として、送り出し教育では、現場が変わっても共通する自社のルールと、入場前に準備しておくことを教えます。次の内容はいずれも法令で決められた項目ではなく、新規入場者教育や現場での作業を円滑にするための例です。
- 自社の安全衛生のルールと、現場で守る基本事項(保護具の着用、立入禁止の順守など)
- その職種の作業手順と、過去の災害事例
- 入場する現場の元請・工事の概要と、職長・連絡先
- 必要な免許・資格・特別教育の修了証の確認と、元請に提出する書類の準備
- 体調の自己管理と、体調が悪いときに申し出る方法
▶ 送り出し教育の記入例(記録の項目例)
結論として、送り出し教育にも法定の様式はないため、誰に・いつ・何を教えたかがわかる記録を自社で残しておきます。次は項目の例で、法令で定められた様式ではありません。元請から書式の指定がある場合は、その書式に従ってください。
| 項目(例) | 記入例 |
|---|---|
| 実施日・場所 | 2026年11月4日、本社会議室 |
| 実施者 | 職長 氏名 |
| 受講者氏名・所属 | 氏名、自社名・職種 |
| 送り出す現場 | ○○新築工事(元請 ○○建設)、入場予定日 |
| 教えた内容 | 自社の安全ルール、作業手順、災害事例、保護具、体調の申し出方法 など |
| 資格・特別教育の確認 | 修了証の種類と確認方法(写しの準備など) |
| 時間 | 30分 など実際にかかった時間 |
| 本人署名 | 受講者の署名 |
【違反リスク】
雇入れ時教育(労働安全衛生法 第59条第1項。第2項で準用する作業内容変更時を含む)の違反は、同法 第120条第1号により50万円以下の罰金の対象として列挙されています(2026年11月4日にe-Govで確認)。新規入場者教育や送り出し教育を行っていても、雇用主としての雇入れ時教育が済んでいるかは別に確認してください。
新規入場者教育と雇入れ時教育、送り出し教育の線引きが社内であいまいなら、お電話でご相談ください。
📞 042-497-8840 に電話して相談する(相談無料・年中無休・7:00〜21:00)
元請・下請の立場と人数をうかがい、自社で行う教育と、外部で受ける教育の整理をお手伝いします。
■ 新規入場者教育の内容(指針の8項目)
結論として、指針では、関係請負人が新たに作業する労働者に、作業に従事する前に、建設現場の特性を踏まえて次の8項目を職長等から周知するとしています(指針 第2の14(8))。
| 番号 | 指針の項目 | 現場で伝える内容の例 |
|---|---|---|
| 1 | 元方事業者および関係請負人の労働者が混在して作業を行う場所の状況 | 現場の全体図、工区と各社の作業場所、通路・出入口 |
| 2 | 労働者に危険を生ずる箇所の状況(危険有害箇所と立入禁止区域) | 開口部・端部、重機の旋回範囲、吊り荷の下、立入禁止区域の表示 |
| 3 | 混在作業場所において行われる作業相互の関係 | 同じ時間帯の上下作業、重機と人の動線、ほかの職種の作業予定 |
| 4 | 避難の方法 | 避難経路、集合場所、緊急時の連絡方法、消火器・救急用品の場所 |
| 5 | 指揮命令系統 | 元請の担当者、自社の職長、合図者、作業の指示を受ける相手 |
| 6 | 担当する作業内容と労働災害防止対策 | 作業手順、使用する機械・工具、必要な保護具、KY活動の進め方 |
| 7 | 安全衛生に関する規程 | 現場の安全ルール、合図の統一、喫煙・休憩場所、持込機械の届出 |
| 8 | 建設現場の安全衛生管理の基本方針、目標、その他基本的な労働災害防止対策を定めた計画 | 現場の安全目標、月間・週間の重点項目 |
「現場で伝える内容の例」の列は、指針の項目を現場で説明するときの例として当センターが整理したものです。現場の状況に合わせて加減してください。
▶ 災害事例や合図も伝える
結論として、指針の8項目を伝えるとき、その現場や同じ職種で起きた災害事例、現場で統一している合図をあわせて示すと、内容が具体的になります。危険箇所の説明だけでは、なぜ危ないのかが伝わりにくいためです。ヒヤリハットの共有にはヒヤリハット事例、日々の危険予知にはKY活動とはも参考にしてください。
▶ 資格・特別教育の確認
結論として、新規入場の段階で、担当する作業に必要な免許・資格・特別教育を持っているかを確認しておきます。指針では、元請は下請に免許・資格の取得、特別教育・職長教育の受講の有無等を把握するよう指導し、新たに作業に従事する労働者について作業に従事する前までに通知させて把握するとしています(指針 第2の4(2))。特別教育が必要な業務は特別教育の一覧で確認できます。
■ 新規入場者教育の時間の目安
結論として、新規入場者教育の時間は法令にも指針にも定められていません(2026年11月4日に確認した範囲)。「何分やれば足りる」という基準はなく、8項目を作業に従事する前に伝えきり、本人が理解したかを確かめられたかどうかが基準になります。
現場の規模や作業の種類、入場者の経験によって必要な時間は変わります。説明を短くしすぎないために、次の工夫が役立ちます。
- 危険箇所は図面と写真で示し、可能なら実際の場所を歩いて確認する
- 説明の最後に、避難場所や立入禁止区域を本人に答えてもらう
- 送り出し教育で済ませた内容(自社ルールなど)と重ならないよう、現場固有の情報に時間を使う
- 外国人労働者には、通訳や図解の資料を用意する(後述)
■ 記録・実施報告書の残し方
結論として、指針では、関係請負人は新規入場者教育の結果を元方事業者に報告し、元方事業者は実施状況を報告させて把握しておくとされています(指針 第2の9・第2の14(8))。報告と把握の手段として、実施記録を書面やデータで残しておきます。
▶ 記録・実施報告書の記入例(項目例)
結論として、新規入場者教育の記録・実施報告書に法令で定められた様式はありません。次の表は項目の例で、法定の様式ではありません。この項目を押さえた書式をエクセルなどで作っておくと、元請への報告にもそのまま使えます。元請から全建統一様式など書式の指定がある場合は、その書式に従ってください。教育で使うテキストや資料も、元請が用意した現場の資料を使うのが基本です。
| 項目(例) | 記入例 |
|---|---|
| 現場名・工事名 | ○○新築工事(建築)、○○改良工事(土木)など |
| 実施日・場所 | 2026年11月4日、現場詰所 |
| 実施者 | 職長 氏名、または元請の担当者 氏名 |
| 受講者氏名・所属 | 氏名、会社名(一次・二次などの次数)、職種、経験年数 |
| 教育項目(指針の8項目) | 項目ごとにチェック:1 混在作業の場所の状況/2 危険箇所と立入禁止区域/3 作業相互の関係/4 避難の方法/5 指揮命令系統/6 担当作業と災害防止対策/7 安全衛生に関する規程/8 安全衛生管理の基本方針・目標・計画 |
| 時間 | 8:00〜8:40(40分)など実際の時間 |
| 使用した資料 | 現場全体図、危険箇所の写真、作業手順書 など |
| 資格・特別教育の確認 | 保有する免許・資格・特別教育の種類と確認方法(修了証の写しなど) |
| 本人署名 | 受講者の署名(内容を理解したことの確認) |
| 元請への報告日 | 報告日と提出先 |
▶ 保存期間の考え方
結論として、新規入場者教育の記録について、保存期間を定めた法令の規定は確認できませんでした。指針にも保存期間の定めは見当たりません(2026年11月4日に確認した範囲)。参考として、特別教育は受講者・科目等の記録を作成して3年間保存する義務があります(労働安全衛生規則 第38条)。
記録は、事故が起きたときに「何を、いつ、誰に伝えたか」を示す資料になります。報告書の控えは、工事の完了後も社内のルールで期間を決めて保存しておきましょう。安全衛生教育の記録全般については安全衛生教育の記録はいつまで保存が必要?で整理しています。
▶ 新規入場者調査票(アンケート)と健康状態の確認
結論として、現場によっては、入場時に本人の経験・資格・連絡先・健康状態などを記入する調査票(アンケート)の提出を求められます。こうした調査票の提出や血圧などの記入は、法令や指針で定められたものとしては確認できませんでした。提出の要否と書式は、元請に確認してください。
健康状態の確認は、高所作業や暑い時期の作業で体調不良による災害を防ぐ目的で行われます。一方、健康に関する情報は慎重な取扱いが必要です。労働安全衛生法 第104条は、事業者が法令にもとづく措置のために労働者の心身の状態に関する情報を扱うとき、健康の確保に必要な範囲内に限って収集し、その目的の範囲内で保管・使用しなければならないとしています(本人の同意がある場合などを除く)。元請が下請の作業員の情報を集める場面にどう当てはまるかは、所轄の労働基準監督署などに確認すると確実です。記入させる項目は必要なものに絞り、保管する人と場所を決めておきましょう。
■ 外国人労働者への配慮
結論として、外国人労働者への新規入場者教育は、本人が内容を理解できる方法で行います。「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年厚生労働省告示第276号)の「安全衛生の確保」では、次のように示されています(厚生労働省掲載資料で確認した範囲)。
| 指針の項目 | 内容 | 表現 |
|---|---|---|
| 安全衛生教育の実施 | 外国人労働者がその内容を理解できる方法により行う。使用させる機械設備等の使用方法が確実に理解されるよう留意する | 行うこと |
| 労働災害防止のための日本語教育等 | 労働災害防止のための指示等を理解できるよう、必要な日本語および基本的な合図等を習得させる | 努めること |
| 標識・掲示等 | 図解等の方法を用いる等、外国人労働者がその内容を理解できる方法により行う | 努めること |
新規入場者教育では、危険箇所や立入禁止区域を写真・図で示す、避難の合図を実際にやって見せる、通訳できる同僚に同席してもらう、といった方法が考えられます。この指針は、雇用する事業主に向けたものです。下請が外国人を雇用している場合は、まず下請が送り出し教育・雇入れ時教育でこれらに対応し、元請は資料の提供などで支えるとよいでしょう。詳しくは外国人労働者の安全衛生教育をご覧ください。
■ よくある質問
▶ Q. 新規入場者教育は法律上の義務ですか?
結論として、「新規入場者教育」という名前で実施を義務づける条文は、労働安全衛生法・同規則には確認できません。ただし、建設業の特定元方事業者には、現場に新たに入る関係請負人の作業従事者に場所の状況や危険箇所などを周知させるため、場所・資料の提供等の措置を講じる義務があります(労働安全衛生規則 第642条の3)。また通達「元方事業者による建設現場安全管理指針」(平成7年4月21日 基発第267号の2)で、新規入場者教育の進め方が示されています。
▶ Q. 新規入場者教育は誰が実施しますか?
結論として、指針では、関係請負人(下請)が自社の労働者に、作業に従事する前に職長等から周知し、その結果を元方事業者(元請)に報告するとされています。元請は、教育に必要な場所・資料の提供等の援助を行い、実施状況を把握します。元請が自ら周知する場合は、場所・資料の提供の措置は不要です(労働安全衛生規則 第642条の3ただし書)。
▶ Q. 送り出し教育と新規入場者教育の違いは何ですか?
結論として、送り出し教育は、下請などの会社が自社の作業員を現場に出す前に、自社で行う教育として使われる言葉です。新規入場者教育は、入場する現場で、その現場の状況や危険箇所などを周知する教育です。送り出し教育について、法令上の定義や実施義務を定めた規定は確認できませんでした。
▶ Q. 新規入場者教育の時間は何分と決まっていますか?
結論として、法令・指針で時間は定められていません(2026年11月4日に確認した範囲)。指針に示された8項目(混在作業の状況、危険箇所と立入禁止区域、作業相互の関係、避難の方法、指揮命令系統など)を、作業に従事する前に伝えきることが基準になります。
▶ Q. 新規入場者教育の記録は何年保存すればよいですか?
結論として、新規入場者教育の記録について、保存期間を定めた法令の規定は確認できませんでした。特別教育は記録を3年間保存する義務があります(労働安全衛生規則 第38条)。新規入場者教育の記録は、元請への報告書の控えとして、工事の完了後も一定期間社内に残しておくと、事故の際の確認に役立ちます。
■ 新規入場者教育のチェックリスト
元請・下請それぞれの立場で、入場前に確認しておきたい項目です。
元請(特定元方事業者)
- 新規入場者教育を行う場所(詰所・会議室など)を用意した
- 現場全体図・危険箇所・立入禁止区域・避難経路などの資料を用意し、工事の進み具合に合わせて更新している
- 元請が自ら周知するか、下請に資料を渡して行わせるかを決めた
- 下請から実施結果の報告を受け、実施状況を把握している
- 新たに入る下請に、それまでの協議組織の会議内容・連絡調整の結果のうち関係する事項を伝えた
- 新たに作業に従事する人の免許・資格・特別教育の受講状況を、作業に従事する前までに把握した
下請(関係請負人)
- 送り出す作業員の雇入れ時教育(作業内容変更時を含む)を済ませ、記録を残した
- 担当作業に必要な免許・資格・特別教育を確認し、修了証の写しなどを準備した
- 作業に従事する前に、職長等から指針の8項目を周知した
- 外国人労働者には、理解できる方法(図解・通訳など)で説明した
- 実施結果を元請に報告し、控えを社内に保存した
■ まとめ
- 新規入場者教育は、現場に新たに入る人に、現場の状況・危険箇所・作業相互の関係などを作業前に伝える教育。
- 建設業の元請には、周知のための場所・資料の提供等の措置義務がある(安衛則 第642条の3。元請が自ら周知する場合は不要)。教育への指導・援助は安衛法 第30条第1項第4号・安衛則 第638条。
- 指針(基発第267号の2)では、下請が職長等から8項目を周知して元請に報告し、元請は援助と実施状況の把握を行う。
- 雇入れ時教育は雇用主の法律上の義務(安衛法 第59条第1項)。送り出し教育は法令上の定義・実施義務が確認できない、業界の言葉。
- 時間と記録の保存期間は法令・指針に定めが確認できない。報告書の控えは社内ルールで保存する。
■ 講習のお申込み・ご相談
新規入場者教育は現場ごとに元請・下請が行う教育です。一般的な外部講習を受けただけでは、入場先の現場固有の状況や危険箇所等の周知を行ったことにはなりません。産業技能センターでは、その担い手になる職長向けの「職長・安全衛生責任者教育」(初回は出張講習のみ・5名様以上・1名様13,000円〜、再教育は9,000円〜)や、作業に必要な特別教育などを行っています。多くの科目は1名様8,000円〜(税込・教材費・修了証発行費込み)で、オンライン講習(Google Meet・1名様から)または出張講習(関東1都6県は5名様から)で受講できます。
現場に送り出す前に、職長や作業員にどの教育を受けさせておけばよいか迷ったら、お電話でご相談ください。
📞 042-497-8840 に電話して相談する(相談無料・年中無休・7:00〜21:00)
職種・人数・現場の状況をうかがい、必要な教育と受講の段取りをご案内します。
■ 関連する記事
■ 参考(一次情報・2026年11月4日確認)
- e-Gov法令検索|労働安全衛生法(第15条・第29条・第30条・第59条・第104条・第120条)
- e-Gov法令検索|労働安全衛生規則(第35条・第38条・第638条・第642条の3・第642条の4)
- 厚生労働省|安全衛生経費確保のためのガイドブック(元方事業者による建設現場安全管理指針〔平成7年4月21日 基発第267号の2〕を収録)
- 厚生労働省|第179回労働政策審議会安全衛生分科会 資料1-2(作業従事者への対象拡大・令和8年4月1日施行)
- 厚生労働省|元方事業者による建設現場安全管理指針のポイント
- 厚生労働省|外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(抄)
