床上操作式クレーン運転特別教育とは、つり上げ荷重5トン未満のクレーンの運転の業務に労働者を就かせるとき、事業者が行わなければならない特別教育です(クレーン等安全規則 第21条第1項、労働安全衛生規則 第36条第15号、労働安全衛生法 第59条第3項)。科目と時間は告示で決められており、学科4科目9時間以上・実技2科目4時間以上、合計13時間以上です(クレーン取扱い業務等特別教育規程 第1条)。
「床上操作式クレーン運転特別教育」は通称で、法令上の区分は「つり上げ荷重が5トン未満のクレーンの運転の業務に係る特別の教育」です。5トン未満であれば、床上操作式に限らずこの特別教育の区分になります。一方、つり上げ荷重5トン以上になると、床上操作式クレーンは「床上操作式クレーン運転技能講習」、それ以外のクレーンは「クレーン・デリック運転士免許」が必要です(クレーン等安全規則 第22条)。この記事では、荷重ごとの資格区分、13時間のカリキュラム、玉掛けの資格との関係を、条文と厚生労働省の資料にもとづいて整理します。
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■ この記事でわかること
- 床上操作式クレーン運転特別教育の法令上の名称と、根拠条文
- つり上げ荷重ごとの区分(特別教育・技能講習・免許)
- 学科9時間・実技4時間のカリキュラム
- 玉掛けの資格が別に必要になる場面(1トン未満は特別教育・1トン以上は技能講習)
- 特別教育をしないで運転させた場合の罰則と、受講前のチェックリスト
■ クレーン運転の資格区分 早見表
クレーン(移動式クレーンを除く)の運転に必要な資格は、クレーンの「つり上げ荷重」と運転の方式で決まります。荷の重さではなく、クレーン自体のつり上げ荷重で判断する点に注意してください。
| クレーンの区分 | 必要な資格・教育 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| つり上げ荷重0.5トン未満 | クレーン等安全規則の適用対象外 | クレーン等安全規則 第2条第1号 |
| つり上げ荷重0.5トン以上5トン未満(運転の方式を問わない)/つり上げ荷重5トン以上の跨線テルハ | 特別教育(クレーンの運転の業務に係る特別の教育) | クレーン等安全規則 第21条/労働安全衛生規則 第36条第15号 |
| つり上げ荷重5トン以上の床上操作式クレーン | 床上操作式クレーン運転技能講習の修了、またはクレーン・デリック運転士免許 | クレーン等安全規則 第22条ただし書/労働安全衛生法施行令 第20条第6号 |
| つり上げ荷重5トン以上のその他のクレーン(床上運転式、運転室で運転するものなど) | クレーン・デリック運転士免許(床上運転式クレーンは床上運転式クレーン限定の免許も可) | クレーン等安全規則 第22条・第224条の4/労働安全衛生法施行令 第20条第6号 |
当センターで実施しているのは、このうち特別教育です。技能講習と免許は当センターでは実施していないため、5トン以上のクレーンを運転する場合は、登録教習機関の技能講習や免許試験をご利用ください。特別教育・技能講習・免許の違いは特別教育と技能講習の違いで詳しく比較しています。
■ 床上操作式クレーン運転特別教育とは
工場や倉庫の天井クレーン・ホイストクレーンなどで、つり上げ荷重が5トン未満のものを運転させるときに必要になるのが、この特別教育です。まず名称と対象の範囲を整理します。
▶ 法令上の正式な名称は?
結論として、法令上は「クレーンの運転の業務に係る特別の教育」で、「床上操作式クレーン運転特別教育」は通称です。クレーン等安全規則 第21条第1項は、「つり上げ荷重が五トン未満のクレーン」と「つり上げ荷重が五トン以上の跨線テルハ」の運転の業務に就かせるとき、特別の教育を行うよう事業者に義務づけています。科目と時間は、クレーン取扱い業務等特別教育規程(昭和47年労働省告示第118号)第1条で定められています。講習機関によって「クレーン運転特別教育」「クレーンの運転の業務に係る特別教育」など呼び方が異なりますが、5トン未満のクレーンの運転に必要な教育であれば同じ区分です。
▶ 床上操作式以外の5トン未満のクレーンも対象?
対象です。特別教育の対象は「つり上げ荷重が5トン未満のクレーン」で、運転の方式による区別はありません(クレーン等安全規則 第21条第1項第1号)。床上で操作するクレーンでも、運転室で運転するクレーンでも、5トン未満であればこの特別教育を修了した人が運転できます。床上操作式かどうかで資格が分かれるのは、つり上げ荷重5トン以上のクレーンです。
▶ 床上操作式クレーンとは?
床上操作式クレーンとは、床上で運転し、かつ、運転する人が荷の移動とともに移動する方式のクレーンです(クレーン等安全規則 第22条)。ペンダントスイッチを持って荷と一緒に歩きながら操作する天井クレーンなどが典型です。運転する人がクレーンの走行とともに移動する方式の床上運転式クレーンとは、5トン以上で必要な資格が異なります。
【注意】
2026年(令和8年)4月30日に公布された「クレーン等安全規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令」により、2027年(令和9年)4月1日から、床上で無線により運転するクレーン(床上無線運転式クレーン)を運転できる限定免許の区分が設けられるなど、免許の扱いが見直されます。主につり上げ荷重5トン以上のクレーンの免許に関わる改正です。無線で操作するクレーンを導入・運用している事業場は、施行日までに運転者の資格を確認しておきましょう。
■ 講習内容と時間(学科9時間・実技4時間)
特別教育は学科教育と実技教育で行い、科目ごとに告示で定められた時間以上を実施します(クレーン取扱い業務等特別教育規程 第1条)。合計は13時間以上です。
▶ 学科教育の科目と時間
学科教育は4科目・合計9時間以上です(同規程 第1条第2項)。
| 科目 | 範囲 | 時間 |
|---|---|---|
| クレーンに関する知識 | 種類及び型式/主要構造部分/作動装置/安全装置/ブレーキ機能/取扱い方法 | 3時間 |
| 原動機及び電気に関する知識 | 電気に関する基礎知識/電動機/開閉器、コントローラー等電気を通ずる機械器具/電路の点検及び補修/感電による危険性 | 3時間 |
| クレーンの運転のために必要な力学に関する知識 | 力(合成、分解、つり合い及びモーメント)/重心/荷重/ワイヤロープ、フック及びつり具の強さ/ワイヤロープの掛け方と荷重との関係 | 2時間 |
| 関係法令 | 労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令、労働安全衛生規則及びクレーン等安全規則中の関係条項 | 1時間 |
| 学科 合計 | 9時間以上 | |
▶ 実技教育の科目と時間
実技教育は2科目・合計4時間以上です(同規程 第1条第3項)。
| 科目 | 範囲 | 時間 |
|---|---|---|
| クレーンの運転 | 重量の確認/荷のつり上げ/定められた経路による運搬/荷の卸し | 3時間 |
| クレーンの運転のための合図 | 合図の方法 | 1時間 |
| 実技 合計 | 4時間以上 | |
時間はいずれも「以上」と定められた最低時間です。実施した科目と時間は、受講者ごとに記録を作成し、3年間保存する必要があります(労働安全衛生規則 第38条)。記録の残し方は安全衛生教育の記録の保存期間で解説しています。
■ 玉掛けの資格との違い
クレーンの運転と玉掛け(荷にワイヤロープやスリングを掛け外しする作業)は、法令上別の業務です。クレーンの特別教育を修了しても、玉掛けの資格にはなりません。
▶ 玉掛けに必要な資格の区分
結論として、玉掛けの資格はクレーンのつり上げ荷重1トンを境に分かれます。つり上げ荷重1トン未満のクレーン・移動式クレーン・デリックの玉掛けは特別教育(労働安全衛生規則 第36条第19号、クレーン等安全規則 第222条)、1トン以上は玉掛け技能講習の修了などが必要です(労働安全衛生法施行令 第20条第16号、クレーン等安全規則 第221条)。
| 項目 | クレーンの運転(5トン未満) | 玉掛け(1トン未満) | 玉掛け(1トン以上) |
|---|---|---|---|
| 必要な資格・教育 | 特別教育 | 特別教育 | 玉掛け技能講習の修了など |
| 根拠条文 | クレーン等安全規則 第21条/労働安全衛生規則 第36条第15号 | クレーン等安全規則 第222条/労働安全衛生規則 第36条第19号 | クレーン等安全規則 第221条/労働安全衛生法施行令 第20条第16号 |
| 教育の時間 | 学科9時間・実技4時間以上 | 学科5時間・実技4時間以上 | 技能講習の規程による |
| 荷重の判断基準 | クレーンのつり上げ荷重 | クレーン等のつり上げ荷重 | クレーン等のつり上げ荷重 |
玉掛けの特別教育の時間は、学科が「クレーン等に関する知識」1時間・「クレーン等の玉掛けに必要な力学に関する知識」1時間・「クレーン等の玉掛けの方法」2時間・「関係法令」1時間、実技が「クレーン等の玉掛け」3時間・「クレーン等の運転のための合図」1時間です(クレーン取扱い業務等特別教育規程 第5条)。玉掛けについては玉掛け業務従事者安全衛生教育の解説もあわせてご覧ください。
▶ 1人で運転と玉掛けをするなら両方必要
運転する人が自分で荷を掛け外しする場合は、クレーンの運転の資格と玉掛けの資格の両方が必要です。床上操作式のクレーンでは、1人で玉掛けと運転を行う現場が多いため、受講計画を立てるときに両方をそろえておきましょう。
【実務ポイント】
玉掛けの資格は「つり荷の重さ」ではなく「クレーンのつり上げ荷重」で判断します(労働安全衛生法施行令 第20条第16号)。たとえば、つり上げ荷重2.8トンの天井クレーンで500キログラムの荷をつる場合でも、クレーンが1トン以上なので玉掛け技能講習の修了などが必要です。クレーンの運転は5トン未満なので特別教育で足ります。
■ 移動式クレーン・巻上げ機との区分
名前が似ていても、移動式クレーンや巻上げ機は別の特別教育です。この特別教育を修了しても、移動式クレーン(トラッククレーン、積載形トラッククレーンなど)は運転できません。
| 機械 | 特別教育の対象 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| クレーン(移動式クレーンを除く) | つり上げ荷重5トン未満 | 労働安全衛生規則 第36条第15号 |
| 移動式クレーン | つり上げ荷重1トン未満(1トン以上5トン未満は小型移動式クレーン運転技能講習、5トン以上は移動式クレーン運転士免許) | 労働安全衛生規則 第36条第16号/クレーン等安全規則 第67条・第68条 |
| デリック | つり上げ荷重5トン未満 | 労働安全衛生規則 第36条第17号 |
移動式クレーンの区分は小型移動式クレーンの運転の業務に係る特別教育、ウインチなどの巻上げ機は巻上げ機運転特別教育で解説しています。
■ 特別教育をしないで運転させた場合の罰則
▶ 特別教育をしないと罰則はある?
あります。特別教育を行わずに5トン未満のクレーンの運転の業務に就かせると、労働安全衛生法 第59条第3項の違反として罰則の対象になります。
【違反リスク】
労働安全衛生法 第119条第1号では、第59条第3項に違反した者は6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金とされ、同法 第122条の両罰規定により法人にも罰金刑が科され得ます。また、5トン以上のクレーンを技能講習・免許のない人に運転させることは、就業制限(労働安全衛生法 第61条第1項、クレーン等安全規則 第22条)の違反です。罰則が実際にどう適用されるかは事案ごとに判断されるため、詳しくは所轄の労働基準監督署にご確認ください。会社側のリスクは特別教育を受けさせないとどうなる?でも解説しています。
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■ 当センターの床上操作式クレーン運転特別教育
当センターの床上操作式クレーン運転特別教育は、1名あたり8,000円〜(税込・教材費・修了証発行費込み)です。少人数の出張や遠方での実施は、費用が上がる場合があります。受講人数や開催地に応じた費用は料金シミュレーターで概算を確認できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 料金 | 1名あたり8,000円〜(税込・教材費・修了証発行費込み) |
| 受講方法 | オンライン(1名から)/出張(関東1都6県は5名様から・遠方は20名様以上が目安) |
| 出張の費用 | 関東1都6県は交通費・宿泊費・出張基本費なし |
| 実技の実施方法 | 科目ごとの対応形式・実技の実施方法はお問い合わせください |
| 当センターで実施していないもの | 床上操作式クレーン運転技能講習/クレーン・デリック運転士免許 |
会場講習は現在、定期の受付を停止しています。受講人数に応じて近隣の会場で開催できるかもご相談ください。申込みは、お問い合わせ、お見積もり、お振込み、講習日確定の順に進みます。
■ よくある質問
▶ Q. 4.8トンの天井クレーンを運転するのに技能講習は必要ですか?
必要ありません。つり上げ荷重5トン未満のクレーンの運転は、特別教育の修了で行えます(クレーン等安全規則 第21条第1項第1号)。ただし、玉掛けも行う場合は、クレーンのつり上げ荷重が1トン以上なので玉掛け技能講習の修了などが別に必要です。
▶ Q. 0.5トン未満の小さなホイストにも特別教育は必要ですか?
つり上げ荷重0.5トン未満のクレーンには、クレーン等安全規則が適用されません(同規則 第2条第1号)。そのため、同規則 第21条の特別教育の対象にもなりません。設備のつり上げ荷重は、銘板や取扱説明書で確認してください。
▶ Q. 修了証に有効期限はありますか?
法令に有効期限の定めはありません。詳しくは特別教育に有効期限はある?をご覧ください。
▶ Q. オンラインで受講できますか?
当センターのオンライン講習は1名から受け付けています。この特別教育には実技教育(クレーンの運転3時間・合図1時間以上)が含まれるため、科目ごとの対応形式・実技の実施方法はお問い合わせください。
▶ Q. 5トン以上の床上操作式クレーンの技能講習は受けられますか?
床上操作式クレーン運転技能講習は、当センターでは実施していません。技能講習は都道府県労働局に登録された登録教習機関で受講してください。当センターでは、5トン未満のクレーンの運転に必要な特別教育を実施しています。
■ クレーンの運転前のチェックリスト
- 運転するクレーンのつり上げ荷重を銘板で確認した(0.5トン以上5トン未満か、5トン以上か)
- 5トン以上の場合、床上操作式か、床上運転式・運転室式などかを確認した
- 運転する人全員が、必要な特別教育・技能講習・免許を修了または取得している
- 玉掛けをする人が、クレーンのつり上げ荷重に応じた資格(1トン未満は特別教育、1トン以上は技能講習など)を持っている
- 移動式クレーンを使う作業がある場合は、別の資格を確認した
- 特別教育の記録(受講者・科目・時間)を作成し、3年間保存する準備ができている
■ まとめ
床上操作式クレーン運転特別教育は通称で、法令上は、つり上げ荷重5トン未満のクレーンの運転の業務に係る特別の教育です(クレーン等安全規則 第21条、労働安全衛生規則 第36条第15号)。学科9時間・実技4時間以上で、5トン未満であれば運転の方式を問わずこの区分になります。
5トン以上では、床上操作式クレーンは床上操作式クレーン運転技能講習、それ以外はクレーン・デリック運転士免許が必要です。玉掛けはクレーンのつり上げ荷重1トンを境に、特別教育と技能講習に分かれます。運転と玉掛けを同じ人が行う現場では、両方の資格をそろえておきましょう。
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■ 参考情報・公式リソース
| サイト名 | 概要 | リンク |
|---|---|---|
| e-Gov法令検索|クレーン等安全規則 | 第2条・第21条・第22条・第221条・第222条・第224条の4の条文 | 公式サイト |
| e-Gov法令検索|労働安全衛生規則 | 第36条第15号・第19号、第38条の条文 | 公式サイト |
| e-Gov法令検索|労働安全衛生法 | 第59条・第61条・第119条・第122条の条文 | 公式サイト |
| 安全衛生情報センター|クレーン取扱い業務等特別教育規程 | クレーン・玉掛けの特別教育の科目と時間(昭和47年労働省告示第118号) | 公式サイト |
| 安全衛生情報センター|同規程 第1条第2項の表 | 学科教育の科目・範囲・時間 | 公式サイト |
| 安全衛生情報センター|同規程 第1条第3項の表 | 実技教育の科目・範囲・時間 | 公式サイト |
| 安全衛生情報センター|法令改正概要一覧(令和8年) | クレーン等安全規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令(2027年4月1日施行) | 公式サイト |
| 山口労働局|就業制限業務・特別教育の資格一覧 | クレーン・移動式クレーン・デリック・玉掛けの資格区分と根拠条文 | 公式サイト |
| 厚生労働省|職場のあんぜんサイト | 安全衛生・労働災害の情報 | 公式サイト |
