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ヒヤリハット事例14選|作業別の例文・報告書の書き方と活かし方

ヒヤリハット事例14選|作業別の例文・報告書の書き方と活かし方

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ヒヤリハットとは、作業中に「ヒヤリ」としたり「ハッ」としたりしたものの、けがや事故には至らなかった出来事のことです。厚生労働省のリスクアセスメント指針の施行通達(平成18年3月10日 基発第0310001号)では、「労働災害を伴わなかった危険な事象(ヒヤリハット事例)」と表現され、リスクアセスメントで調べる対象や、集めるべき情報の一つに挙げられています。

ヒヤリハットの報告は、法令で様式や件数が決められたものではなく、事業場が自主的に行う安全活動です。ただ、集めた事例はリスクアセスメント(労働安全衛生法 第28条の2・第57条の3)やKY活動、教育の材料になります。この記事では、7つの作業の「よくある場面の例」14例と、報告書の書き方・記入例、ハインリッヒの法則の読み方、集めた後の活かし方をまとめます。

ご不明点はよくある質問、個別のご相談は問い合わせページからどうぞ。

■ この記事でわかること

  • ヒヤリハットの意味と、法令上の位置づけ(義務・努力義務の区別)
  • 作業別のヒヤリハット事例(よくある場面の例)14例と、要因・対策の考え方
  • ヒヤリハット報告書の項目・5W1Hの書き方・記入例と例文
  • ハインリッヒの法則(1:29:300)の出典と、数字を読むときの注意
  • 集めた事例を共有・リスクアセスメント・対策・KY活動・教育につなげる流れ

■ ヒヤリハット事例の早見表(作業別)

取り上げる作業と事故の型、関連する教育の一覧です。事故の型は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のヒヤリ・ハット事例の分類(墜落・転落、転倒、はさまれ・巻き込まれ など)をもとにしています。

作業事故の型(目安)関連する教育・記事
高所・脚立墜落・転落フルハーネス型墜落制止用器具特別教育
フォークリフト激突され、飛来・落下フォークリフトの運転業務特別教育
機械の挟まれ・巻き込まれはさまれ・巻き込まれ職長教育・作業手順の見直し
刈払機飛来・落下、切れ・こすれ刈払機取扱作業者安全衛生教育
熱中症高温・低温の物との接触(熱中症)熱中症予防安全衛生教育
運搬・腰痛動作の反動・無理な動作、飛来・落下雇入れ時の安全衛生教育
通路の転倒転倒雇入れ時・作業内容変更時の教育

【注意】
この記事の事例は、現場でよくある場面をもとに当社が作成した想定の例です。実際に起きた事例ではありません。実際のヒヤリハット事例や労働災害事例は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」で調べられます(後述)。

■ ヒヤリハットとは

▶ ヒヤリハットの意味

結論として、ヒヤリハットはけがに至らなかった危険な出来事のことで、「ニアミス」とも呼ばれます。「はしごが少し滑ったが、手すりをつかんで落ちなかった」のように、条件が少し違えば労働災害になっていた出来事が該当します。

新潟労働局のサイトに掲載されている報告制度の導入例(「ヒヤリハット事例・想定ヒヤリ 報告制度の導入について(例)」。企業名を伏せた民間企業(安全環境課)名義の例示資料で、労働局が定めた様式ではありません)では、体験したヒヤリハットに加え、起きる前に「このままでは危ない」と気づいたものも「想定ヒヤリ」として報告対象にしています。

結論として、労働安全衛生法令には、ヒヤリハット報告そのものを事業者に義務づける規定は見当たらず、事業場が自主的に行う活動です。一方、ヒヤリハットを活かす先であるリスクアセスメントには、労働安全衛生法で義務と努力義務が分かれて定められています。

項目義務のレベル根拠内容
ヒヤリハットの報告・収集法令上の義務づけなし(自主的な活動)義務づける規定・様式・件数の定めは見当たらない各事業場が報告書の様式や運用を決める
リスクアセスメント(化学物質以外)努力義務労働安全衛生法 第28条の2第1項危険性又は有害性等を調査し、結果にもとづく措置を講ずるように努める。化学物質以外は製造業その他厚生労働省令で定める業種の事業者に限る(ただし書き)
化学物質のリスクアセスメント調査は義務/措置は努力義務労働安全衛生法 第57条の3第1項・第2項政令で定める物・通知対象物の危険性又は有害性等を調査しなければならない。措置は努力義務
調査の進め方指針(法第28条の2第2項にもとづく公表)危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成18年3月10日 公示第1号)労働災害や危険な事象が発生した作業などを調査対象とする(指針 6)

施行通達は、指針 6 の「危険な事象が発生した作業等」に「労働災害を伴わなかった危険な事象(ヒヤリハット事例)のあった作業」を含め、入手する情報の例に「ヒヤリハット、トラブルの記録」を挙げています(施行通達 6(2)・7(3)カ)。

【実務ポイント】
元請・発注者の安全管理ルールで、協力会社にヒヤリハット報告の提出を求める現場があります。法令の義務とは別に、現場のルールに従って提出してください。

■ 作業別のヒヤリハット事例(よくある場面の例)

作業ごとに、よくある場面の例を2つずつ示します(いずれも当社が作成した想定の例)。「何が起きかけたか」「なぜか」「どう変えるか」で整理しています。

▶ 高所・脚立のヒヤリハット事例

結論として、高所のヒヤリハットは「無理な姿勢」と「足元・開口部の見落とし」から起きやすい作業です。職場のあんぜんサイトのヒヤリ・ハット事例でも、墜落・転落は15の事故の型の中で最も多い79件が掲載されています(2026年10月確認時点)。

場面ヒヤリ・ハッとしたこと考えられる要因対策の例
脚立に乗り、倉庫の照明を交換していた身を乗り出したら脚立がぐらつき、とっさに棚をつかんだ脚立を移さずに手を伸ばした届かないときは降りて脚立を移す/高さに合った作業台を用意する
足場の上で資材を受け取っていた後ろに下がり、ふさいでいない開口部の手前で足が止まった開口部の囲いが外れていた/フックを掛けていなかった開口部の養生を始業前点検に入れる/フックの掛け替え手順を周知する

フルハーネス型墜落制止用器具を使う作業の教育はフルハーネス特別教育で解説しています。

▶ フォークリフトのヒヤリハット事例

結論として、フォークリフトのヒヤリハットは「人と車両が同じ通路を使う場所」と「荷の扱い」に集中します。

場面ヒヤリ・ハッとしたこと考えられる要因対策の例
倉庫の交差部を右折していた棚の陰から台車の作業者が出てきて急停止した見通しが悪い/歩行者通路が分かれていない一時停止の表示とミラーを設ける/歩行者通路を床に表示する
パレットを運んでいた荷を高く上げたまま走り、段差で荷が落ちかけた荷を下げて走る基本を守っていない/段差を知らない走行時のフォークの高さを朝礼で確認する/段差を構内図に示す

最大荷重1t未満のフォークリフトの運転には特別教育が必要です(労働安全衛生規則 第36条第5号)。詳しくはフォークリフトの運転業務特別教育をご覧ください。

▶ 機械の挟まれ・巻き込まれのヒヤリハット事例

結論として、機械のヒヤリハットは「止めずに手を出す」場面で起きやすく、労働安全衛生規則に関係する定めがあります。

場面ヒヤリ・ハッとしたこと考えられる要因対策の例
コンベヤで製品が詰まった運転したまま手で取ろうとし、手袋の先がローラーに引き込まれかけた止めると遅れるという意識/詰まり除去の手順がない停止してから取る手順を定める/停止中は起動禁止の表示をする
ボール盤で穴あけをしていた軍手のまま切りくずを払い、軍手が回転するドリルに触れかけた手袋を使ってはいけないことを知らなかった手袋禁止を表示する/切りくずは停止後にブラシで取る

機械の掃除・給油・検査・修理・調整で労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、機械の運転を停止することが定められています(労働安全衛生規則 第107条。運転中に行う必要がある作業で、危険な箇所に覆いを設けるなどの措置をとった場合を除く)。また、ボール盤など回転する刃物に手が巻き込まれるおそれのあるときは、手袋を使用させてはならないとされています(同規則 第111条)。手順書に反映されているかも確認しましょう。

▶ 刈払機のヒヤリハット事例

結論として、刈払機のヒヤリハットは「飛散物」と「刃の跳ね返り」が中心で、周囲の人との距離の取り方が対策の要になります。

場面ヒヤリ・ハッとしたこと考えられる要因対策の例
2人で道路わきの草刈りをしていた刃が当てた小石が飛び、同僚の足元に当たった間隔を決めていない/石を取り除いていない作業者の間隔を作業前に決める/石や異物を先に取り除く
斜面で草を刈っていた刃が切り株に当たって機体が跳ね、バランスを崩した切り株を確認していない/無理な姿勢障害物に目印を付ける/足場を確保してから刈る

刈払機を使う作業者への教育は刈払機取扱作業者安全衛生教育で解説しています。

▶ 熱中症のヒヤリハット事例

結論として、熱中症のヒヤリハットは「本人が気づかない」「周りも気づかない」ことから起きるため、声かけと報告の仕組みが対策になります。

場面ヒヤリ・ハッとしたこと考えられる要因対策の例
夏の午後、屋外で片付けをしていた同僚の受け答えがおかしく、声をかけるまで誰も気づかなかった離れて作業していた/体調確認の時間がない休憩ごとに互いの体調を確認する/異常の報告先を周知する
工場の炉の近くで作業していた水分をとらないまま続け、立ちくらみがした水分・塩分の補給が本人まかせ補給の時間を作業計画に入れる/飲料を近くに置く

熱中症のおそれがある作業では、熱中症のおそれがある労働者を早く見つけるための報告体制の整備と、重症化を防ぐ手順の作成・周知が事業者の義務です(労働安全衛生規則 第612条の2、2025年6月1日施行)。対象となる作業の条件や教育の内容は熱中症予防安全衛生教育で解説しています。

▶ 運搬・腰痛のヒヤリハット事例

結論として、運搬のヒヤリハットは「持ち上げ方」と「運搬経路」の2つに分けて考えると対策を立てやすくなります。

場面ヒヤリ・ハッとしたこと考えられる要因対策の例
重い箱を床から棚へ移していた前かがみで持ち上げ、腰に痛みが走った床に直置き/持ち上げ方を教わっていない重い荷は腰の高さの台に置く/持ち上げ方を実演で教える
台車で荷を運んでいた段差で台車が止まり、箱が足に落ちかけた積みすぎ/段差を知らない積む高さの目安を決める/段差にスロープや表示を設ける

重量物の取扱い作業などの腰痛予防は、厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日 基発0618第1号)に示されています。

▶ 通路・床の転倒のヒヤリハット事例

結論として、転倒のヒヤリハットは業種を問わずどの職場でも起こり、事務所や店舗でも報告しやすい題材です。

場面ヒヤリ・ハッとしたこと考えられる要因対策の例
加工場の通路を歩いていたこぼれた油で足が滑り、転びかけたこぼれたときの清掃手順がない見つけた人がすぐ表示・清掃する/吸着材を近くに置く
事務所でコピー機へ移動していた床の延長コードに足を引っかけた配線が通路を横切っていた配線を壁ぞいにまとめる/通路に物を置かない

作業の危険のポイントは、雇入れ時安全衛生教育で伝えることが基本です。

▶ 実際のヒヤリハット事例・労働災害事例を調べるには

結論として、実際の事例を調べるときは、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」が使えます。ヒヤリ・ハット事例のページでは、墜落・転落、転倒、はさまれ・巻き込まれなど15の事故の型ごとに、イラスト付きの事例が掲載されています(2026年10月確認時点で全451件。業種はサイト内検索で探します)。

実際に起きた労働災害は、同サイトの労働災害事例のページで、業種・事故の型・起因物・キーワードなどの条件で検索できます。社内の資料に使う場合は、サイトの利用条件を確認し、出典を明記してください。

ヒヤリハットを教育や手順の見直しにどうつなげるか迷ったら、お電話でご相談ください。
📞 042-497-8840 に電話して相談する(相談無料・年中無休・7:00〜21:00)
作業内容をうかがい、必要な教育と受講方法をご案内します。

■ ヒヤリハット報告書の書き方

ヒヤリハット報告書は、書く人が迷わず短時間で書けることが続けるための条件です。法令で決められた様式はないため、次の項目を目安に自社の様式を作ります。

▶ 報告書に入れる項目

結論として、報告書は「事実」「要因」「対策案」「受付後の処理」の4つの欄に分けると、集めた後に活かしやすくなります。

欄主な項目書き方のポイント
事実日時・場所・作業内容・何が起きかけたか見たこと・したことだけを書く。推測は入れない
要因作業環境・設備や機械・作業方法・本人の状態当てはまるものに印を付ける形にすると書きやすい
対策案こうすれば防げると思うこと書けなければ空欄でもよいとする
受付後の処理職長・安全担当のコメント、対策の内容と完了日、周知の方法報告者ではなく受け取った側が記入する

前述の新潟労働局サイト掲載の導入例(企業名義の例示資料)も、問題点を「作業環境」「設備機器」「作業方法」「本人の問題」に分けて印を付ける形です。

▶ 5W1Hで書く方法

結論として、「いつ・どこで・誰が・何をしていて・どうなりかけたか・なぜ」の順に書くと、読んだ人が場面を再現できます。

5W1H書き方の例
いつ(When)10月15日 14時ごろ、出荷準備の終盤
どこで(Where)第2倉庫 B列とC列の交差部
誰が(Who)フォークリフト運転者(本人)と台車の作業者
何をしていて(What)パレットを運ぶため右折していた
どうなりかけたか(How)棚の陰から台車が出てきて、急ブレーキで止まった。接触はなし
なぜ(Why)交差部の見通しが悪い。歩行者通路が分かれていない

▶ ヒヤリハット報告書の記入例

結論として、記入例は手順の見直しにつながる事例で示すと共有しやすくなります。以下は前述のコンベヤの事例を書いた想定の記入例です。

項目記入例
日時10月15日 10時30分ごろ
場所第1工場 包装ライン 2号コンベヤ
作業内容包装済み製品の検品
何が起きかけたか製品がコンベヤの曲がり角で詰まった。運転したまま手袋をした右手で取ろうとしたところ、手袋の指先がローラーに引き込まれかけたので、すぐ手を引いた。けがはなし
要因(印)設備機器(詰まりやすい曲がり角)/作業方法(停止の手順がない)
対策案詰まりを取るときは停止ボタンを押してから行う。停止ボタンを曲がり角の近くにも付けてほしい
受付後の処理(職長記入)同日、ラインの全員に停止してから取る手順を周知。停止ボタンの増設を設備担当に依頼。次回の安全会議で報告

▶ ヒヤリハットの例文(よい書き方・伝わりにくい書き方)

結論として、「気をつける」「注意不足」で終わる書き方は対策につながらないため、場面と要因が分かる書き方にします。

伝わりにくい書き方伝わる書き方
脚立で危なかった。今後気をつける照明交換で脚立の天板近くに立ち、身を乗り出したときに脚立がぐらついた。脚立の位置を変えずに手を伸ばしたのが原因
フォークリフトで人とぶつかりそうになった第2倉庫の交差部で右折中、棚の陰から台車が出てきて急停止した。交差部の見通しが悪い

【実務ポイント】
報告した人が責められると、報告は続きません。報告制度を始めるときは、「報告者を責めない」「手順どおりにしなかった場合も、まず手順に無理がないかを見直す」と最初に決めて周知しておきましょう。前述の導入例でも、責めない取り決めを長続きの条件に挙げています。

■ ハインリッヒの法則(1:29:300)とヒヤリハット

▶ ハインリッヒの法則とは

結論として、ハインリッヒの法則は、1件の重い災害の背後に29件の軽い災害と300件の傷害のない事故があるとする考え方です。厚生労働省「職場のあんぜんサイト」の安全衛生キーワードでは、アメリカの損害保険会社の安全技師ハインリッヒの説として、「同じ人間が起こした330件の災害のうち、1件は重い災害」があったとすると29回の軽傷、300回の傷害のない事故がある、と紹介しています。原著は H.W.ハインリッヒの著書『Industrial Accident Prevention(産業災害防止論)』です。

同ページでは、バードの事故比率として、297社の175万件の事故報告を分析した「1(重傷又は廃失):10(傷害):30(物損のみ):600(傷害も物損もない事故)」の比率も紹介しています。

▶ ハインリッヒの法則を使うときの注意

結論として、1:29:300は「どの職場でもこの比率になる」という統計ではありません。職場のあんぜんサイトも、比率は「鉄骨の組立と事務員では自ずから異なっている」とし、重要なのは比率の数字ではなく、ヒヤリハット等の情報をできるだけ把握し、迅速・的確に対策を講ずることだとしています。

また、300件は原著では「傷害のない事故(no injury accident)」で、事故にならなかったヒヤリハット(ニアミス)とは本来区別されるという指摘もあります(田口豊郁「ハインリッヒの法則の再考――間違った解釈の拡がり――」川崎医療福祉大学)。社内教育では「けがのない事故やヒヤリハットが数多く背後にある」と伝えるほうが正確です。

■ ヒヤリハットを集めた後の活かし方

▶ 集めた後の流れ(共有→リスクアセスメント→対策→KY・教育)

結論として、ヒヤリハットは「受付→共有→リスクアセスメント→対策→KY・教育→確認」の順に回すと、現場の改善につながります。

段階やること
① 受付内容を確認し、急ぐものは当日中に応急の対策をとる
② 共有朝礼・掲示・安全会議で、似た作業をする人に知らせる
③ リスクアセスメント事故の型・起因物で分類し、けがの重さと起こりやすさで優先度を決める
④ 対策優先度の高いものから、設備・手順・表示などの対策を決めて実施する
⑤ KY・教育KY活動の題材にする。新人教育や作業手順の教育に事例を入れる
⑥ 確認同じヒヤリハットが減ったかを確認し、報告者に結果を返す

③のリスクアセスメントの進め方はリスクアセスメント担当者研修で解説しています。指針では、安全衛生委員会等の活用などを通じて労働者を参画させることも示されています(指針 4(1)ウ)。

▶ 対策を決めるときの優先順位

結論として、対策は「危険をなくす」ものから順に検討し、注意喚起や保護具だけで終わらせないことが基本です。指針 10(1)では、リスク低減措置を次の優先順位で検討するとしています。

  • ア 危険な作業の廃止・変更など、設計や計画の段階から危険性又は有害性を除去又は低減する措置
  • イ インターロック、局所排気装置等の設置等の工学的対策
  • ウ マニュアルの整備等の管理的対策
  • エ 個人用保護具の使用

前述のコンベヤの事例なら、詰まりにくい形への改造(ア)、停止しないと開かないカバー(イ)、停止してから取る手順(ウ)の順に検討します。

▶ KY活動・安全標語・教育に活かす

結論として、自社で出たヒヤリハットは、KY活動の題材として最も身近で効果的です。実際に出た事例を題材にすると、具体的な対策が出やすくなります。KY活動の進め方はKY活動(危険予知活動)、職場で使う標語づくりは安全標語の例で解説しています。

新しく入った人に過去のヒヤリハットを教えると、危ない場面を先に知ってもらえます。新人教育の組み立ては新入社員の安全衛生教育をご覧ください。

■ ヒヤリハット報告制度の運用チェックリスト

報告制度を始めるとき、見直すときに確認したい項目です。

  • 報告書は1件1枚で、数分で書ける様式になっている
  • 「想定ヒヤリ」(起きる前の気づき)も報告してよいと伝えている
  • 報告者を責めないことを、制度の開始時に周知している
  • 事故の型・起因物で分類し、リスクアセスメントに使っている
  • 対策が注意喚起や保護具だけで終わっていないか確認している
  • KY活動・新人教育・作業手順の見直しに事例を使っている
  • 件数をノルマにして、形だけの報告が増えていないか確認している

■ ヒヤリハットに関するよくある質問

▶ Q. ヒヤリハット報告は法律で義務づけられていますか?

A. 労働安全衛生法令に、ヒヤリハット報告そのものを義務づける規定は見当たらず、事業場が自主的に行う活動です。ただし、ヒヤリハットは、労働安全衛生法 第28条の2(努力義務)にもとづくリスクアセスメント指針の施行通達で、調査の対象や入手する情報として挙げられています(化学物質のリスクアセスメントは第57条の3で調査が義務)。元請・発注者の現場ルールで求められている場合はそれに従います。

▶ Q. ヒヤリハットは何件くらい集めればよいですか?

A. 法令に件数の定めはありません。ノルマにすると形だけの報告が増えがちなので、件数より、報告に対策を返し同じヒヤリハットが減っているかを見ることが大切です。

▶ Q. ハインリッヒの法則の「300」はヒヤリハットのことですか?

A. 職場のあんぜんサイトでは300を「傷害のない事故」と説明しています。ニアミスとは本来区別されるという指摘もあり、比率も作業内容で異なります。

▶ Q. ヒヤリハットとKY活動の違いは何ですか?

A. ヒヤリハットは「起きかけた出来事」を事後に報告・共有する活動で、KY活動は作業の前に「どんな危険があるか」を話し合って対策を決める活動です。ヒヤリハットで集めた事例は、KY活動の題材として使えます。

■ まとめ

ヒヤリハットとは、けがや事故に至らなかった危険な出来事のことで、リスクアセスメント指針の施行通達では「労働災害を伴わなかった危険な事象」とされています。報告そのものを義務づける法令の規定は見当たりませんが、リスクアセスメント(労働安全衛生法 第28条の2は努力義務、第57条の3の化学物質の調査は義務)の大切な情報になります。

報告書は5W1Hで事実と要因を分けて書き、共有→リスクアセスメント→対策→KY・教育→確認の順に回します。報告者を責めない仕組みで、出た報告を現場の改善に返していきましょう。

■ 安全衛生教育のご相談

産業技能センターでは、特別教育・安全衛生教育を、オンライン講習と出張講習でご案内しています。ヒヤリハットで見えた課題に合わせて、どの教育が必要かのご相談も承ります。

職場の安全衛生教育の進め方に悩んだら、お電話でご相談ください。
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■ 参考情報・公式リソース

サイト名概要リンク
厚生労働省 職場のあんぜんサイト|ヒヤリ・ハット事例事故の型別のヒヤリ・ハット事例(イラスト付き)公式サイト
厚生労働省 職場のあんぜんサイト|労働災害事例業種・事故の型・起因物などで検索できる労働災害事例公式サイト
厚生労働省 職場のあんぜんサイト|ハインリッヒの法則安全衛生キーワード(1:29:300の説明)公式サイト
安全衛生情報センター|労働安全衛生法 第28条の2危険性又は有害性等の調査等(努力義務)公式サイト
安全衛生情報センター|労働安全衛生法 第57条の3化学物質の危険性又は有害性等の調査公式サイト
厚生労働省 熊本労働局|危険性又は有害性等の調査等に関する指針指針(平成18年3月10日 公示第1号)と施行通達(基発第0310001号)公式サイト
厚生労働省 愛知労働局|危険性又は有害性等の調査等に関する指針 同解説指針・解説・施行通達(ヒヤリハットの記載あり)公式サイト
厚生労働省 新潟労働局|ヒヤリハット事例・想定ヒヤリ 報告制度の導入について(例)報告制度の導入例と報告書の様式例(企業名義の例示資料)公式サイト
厚生労働省 岐阜労働局|製造業の重篤な労働災害事例集安衛則 第107条・第111条の解説を含む公式サイト
厚生労働省 愛知労働局|職場における腰痛予防対策指針平成25年6月18日 基発0618第1号公式サイト
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