製造業で必要な資格・教育とは、工場で使う機械や化学物質、担当する立場ごとに労働安全衛生法で定められた特別教育・技能講習・免許・作業主任者と、雇入れ時教育・職長教育などの安全衛生教育のことです(労働安全衛生法 第14条・第59条・第60条・第61条)。たとえば研削といしの取替え、動力プレスの金型交換、アーク溶接、産業用ロボットの教示、1t未満のフォークリフトの運転は、いずれも特別教育を受けた人でなければ就かせられません(労働安全衛生規則 第36条)。製造業は職長教育の対象業種で、2024年(令和6年)4月1日からは化学物質を扱う事業場で化学物質管理者の選任も義務になりました。
この記事では、工場の現場で必要になる資格と教育を早見表にまとめ、それぞれの時間・根拠条文・罰則を、機械加工、自動化ライン、構内運搬、化学物質の4つの場面に分けて整理します。各項目の詳しい内容は、個別の解説記事へのリンクからご覧ください。
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■ この記事でわかること
- 製造業で必要な資格・教育の一覧と、特別教育・技能講習・免許・作業主任者の区分
- 研削といし・動力プレス・アーク溶接・産業用ロボット・低圧電気など、工場で多い特別教育の時間
- フォークリフト・クレーン・玉掛けの「1t」「5t」の境目
- 有機溶剤・特定化学物質・粉じんの教育と作業主任者、2024年4月からの化学物質管理者
- 職長教育が製造業で義務になる範囲(対象外の業種)と、未実施の場合の罰則
■ 製造業で必要な資格・教育の早見表
時間は告示・通達で定められた最低時間です。自社の機械・設備と作業者の担当を、下の表と照らし合わせてください。
| 業務・立場 | 必要な資格・教育 | 区分 | 時間(最低) | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 研削といしの取替え・取替え時の試運転 | 研削といしの取替え等の業務に係る特別教育 | 特別教育 | 自由研削用6時間/機械研削用10時間 | 労働安全衛生規則 第36条第1号 |
| 動力プレスの金型・シャーの刃部・安全装置等の取付け・取外し・調整 | 動力プレスの金型等の取付け等の業務に係る特別教育 | 特別教育 | 10時間(学科8・実技2) | 同 第36条第2号 |
| アーク溶接機による金属の溶接・溶断等 | アーク溶接等の業務に係る特別教育 | 特別教育 | 21時間(学科11・実技10) | 同 第36条第3号 |
| 産業用ロボットの可動範囲内での教示等/運転中の検査等 | 産業用ロボットの教示等・検査等の業務に係る特別教育 | 特別教育 | 教示等10時間/検査等13時間 | 同 第36条第31号・第32号 |
| 低圧の充電電路の敷設・修理、充電部分が露出した開閉器の操作 | 低圧電気取扱業務特別教育 | 特別教育 | 14時間(学科7・実技7)※開閉器の操作のみは実技1時間以上 | 同 第36条第4号 |
| 小型ボイラーの取扱い | 小型ボイラー取扱業務特別教育 | 特別教育 | 11時間(学科7・実技4) | 同 第36条第14号 |
| フォークリフトの運転(最大荷重1t未満) | フォークリフト運転特別教育 | 特別教育 | 12時間(学科6・実技6) | 同 第36条第5号 |
| フォークリフトの運転(最大荷重1t以上) | フォークリフト運転技能講習 | 技能講習(就業制限) | 基本35時間(保有資格で短縮あり) | 労働安全衛生法施行令 第20条第11号 |
| クレーンの運転(つり上げ荷重5t未満) | クレーンの運転の業務に係る特別教育 | 特別教育 | 13時間(学科9・実技4) | 労働安全衛生規則 第36条第15号 |
| クレーンの運転(つり上げ荷重5t以上) | クレーン・デリック運転士免許(床上操作式は床上操作式クレーン運転技能講習でも可) | 免許・技能講習(就業制限) | ― | 労働安全衛生法施行令 第20条第6号 |
| 玉掛け(つり上げ荷重1t未満のクレーン等) | 玉掛けの業務に係る特別教育 | 特別教育 | 9時間(学科5・実技4) | 労働安全衛生規則 第36条第19号 |
| 玉掛け(つり上げ荷重1t以上のクレーン等) | 玉掛け技能講習 | 技能講習(就業制限) | 19時間(保有資格で短縮あり) | 労働安全衛生法施行令 第20条第16号 |
| 常時、特定粉じん作業に係る業務 | 粉じん作業特別教育 | 特別教育 | 4.5時間(学科のみ) | 粉じん障害防止規則 第22条/労働安全衛生規則 第36条第29号 |
| 酸素欠乏危険場所での作業 | 酸素欠乏危険作業特別教育 | 特別教育 | 第1種4時間/第2種5.5時間(学科のみ) | 酸素欠乏症等防止規則 第12条/労働安全衛生規則 第36条第26号 |
| 有機溶剤業務を行う作業者 | 有機溶剤業務従事者の労働衛生教育 | 通達にもとづく教育(特別教育ではない) | 4.5時間(学科のみ) | 昭和59年6月29日付け 基発第337号 |
| サンダー・インパクトレンチなどの振動工具を使う作業者 | 振動工具取扱作業者安全衛生教育 | 通達にもとづく教育(特別教育ではない) | 4時間(学科のみ) | 昭和58年5月20日付け 基発第258号 |
| リスクアセスメント対象物を製造する事業場の化学物質管理者 | 化学物質管理者講習(製造事業場向け)の修了など | 選任要件 | 12時間(講義9・実習3) | 労働安全衛生規則 第12条の5(2024年4月1日施行) |
| 新たに職務につく職長など | 職長等教育 | 安全衛生教育(製造業は一部業種を除き対象) | 12時間 | 労働安全衛生法 第60条/同法施行令 第19条/労働安全衛生規則 第40条 |
| 雇い入れた労働者・作業内容を変更した労働者 | 雇入れ時等の安全衛生教育(8項目) | 安全衛生教育 | 定めなし | 労働安全衛生法 第59条第1項・第2項/労働安全衛生規則 第35条 |
このほか、プレス機械(5台以上)・有機溶剤・特定化学物質などの作業では、技能講習を修了した作業主任者の選任が必要です。作業主任者の一覧は作業主任者が必要な作業で整理しています。
■ 特別教育・技能講習・免許・作業主任者の違い
一覧に出てくる区分は、誰が実施するか、修了の扱いがどうなるかが異なります。製造業では、同じ機械でも能力(最大荷重・つり上げ荷重)や台数によって区分が変わる点に注意してください。
| 区分 | 実施する者・要件 | 根拠 | 製造業での主な例 |
|---|---|---|---|
| 特別教育 | 事業者(社内実施または外部の講習機関に委託) | 労働安全衛生法 第59条第3項/労働安全衛生規則 第36条 | 研削といし/動力プレス金型/アーク溶接/産業用ロボット/低圧電気/1t未満フォークリフト |
| 技能講習 | 都道府県労働局長の登録を受けた登録教習機関 | 労働安全衛生法 第61条第1項・第76条/同法施行令 第20条 | 1t以上フォークリフト/1t以上の玉掛け/床上操作式クレーン |
| 免許 | 都道府県労働局長が免許証を交付(試験は安全衛生技術試験協会) | 労働安全衛生法 第72条 | 5t以上のクレーン(クレーン・デリック運転士)/ボイラー技士 |
| 作業主任者 | 免許を受けた人・技能講習を修了した人から事業者が選任 | 労働安全衛生法 第14条 | プレス機械作業主任者/有機溶剤作業主任者/特定化学物質作業主任者 |
| 通達にもとづく教育 | 事業者(社内実施または外部委託) | 厚生労働省の通達・指針 | 有機溶剤業務従事者の労働衛生教育/振動工具取扱作業者安全衛生教育 |
技能講習や免許が必要な就業制限業務に就くときは、資格を証する書面(修了証・免許証)を携帯しなければなりません(労働安全衛生法 第61条第3項)。区分の詳しい違いは特別教育と技能講習の違いで整理しています。
■ 機械加工・プレス・溶接の特別教育
金属加工・機械部品の工場で特に多いのが、研削といし、動力プレス、アーク溶接の3つです。いずれも業種を問わず、対象業務に就かせる時点で特別教育が必要です。
▶ 研削といしの取替え・試運転
結論として、研削といしの取替えと取替え時の試運転には特別教育が必要です(労働安全衛生規則 第36条第1号)。安全衛生特別教育規程では、研削盤に取り付ける機械研削用といしは学科7時間・実技3時間以上(計10時間以上、第1条)、携帯用グラインダーや卓上グラインダーなどの自由研削用といしは学科4時間・実技2時間以上(計6時間以上、第2条)と、別の教育として時間が分かれています。研削する作業そのものではなく、といしの取替えと試運転が対象です。見分け方は研削といしの取替え等業務特別教育で解説しています。
▶ 動力プレスの金型交換・調整
結論として、動力プレスの金型、シャーの刃部、プレス機械やシャーの安全装置・安全囲いの取付け・取外し・調整には、プレスの台数にかかわらず特別教育が必要です(労働安全衛生規則 第36条第2号)。カリキュラムは学科8時間・実技2時間以上の計10時間以上です(安全衛生特別教育規程 第3条)。動力プレスを5台以上有する事業場では、これとは別にプレス機械作業主任者の選任が必要です(労働安全衛生法施行令 第6条第7号)。詳しくは動力プレス金型取付け等特別教育をご覧ください。
▶ アーク溶接・溶断
結論として、アーク溶接機を用いて行う金属の溶接・溶断等には特別教育が必要です(労働安全衛生規則 第36条第3号)。学科11時間・実技10時間以上の計21時間以上です(安全衛生特別教育規程 第4条)。2021年(令和3年)4月1日からは溶接ヒュームが特定化学物質(管理第2類物質)に加わり、屋内作業場での換気・ばく露濃度の測定・呼吸用保護具などの措置も求められています。可燃性ガスと酸素を用いるガス溶接は、別にガス溶接技能講習の修了などが必要な就業制限業務です(労働安全衛生法施行令 第20条第10号)。詳しくはアーク溶接などの業務に係る特別教育、資格の全体像は溶接資格の種類一覧で解説しています。
▶ サンダー・インパクトレンチなどの振動工具
サンダー・インパクトレンチなどの振動工具を使う作業者には、振動工具取扱作業者安全衛生教育(学科4時間)の実施が通達で求められています(昭和58年5月20日付け 基発第258号)。特別教育ではないため直接の罰則はありませんが、振動障害予防対策指針(平成21年7月10日付け 基発0710第2号)では、新たに振動業務に就かせるときや工具の種類を変えるときに教育を行うこととされています。詳しくは振動工具取扱作業者安全衛生教育をご覧ください。
■ 自動化ライン・設備保全の特別教育
ロボットを導入したラインや、電気設備・ボイラーの保全を社内で行う工場では、オペレーターだけでなく保全担当者にも特別教育が必要になります。
▶ 産業用ロボットの教示・検査
結論として、産業用ロボットの可動範囲内で行う教示等と、運転中に可動範囲内で行う検査・修理・調整等には、それぞれ特別教育が必要です(労働安全衛生規則 第36条第31号・第32号)。教示等は学科7時間・実技3時間以上(計10時間以上、安全衛生特別教育規程 第18条)、検査等は学科9時間・実技4時間以上(計13時間以上、同 第19条)です。可動範囲の外で教示等の作業と共同して機器を操作する人も対象に含まれます。定格出力80W以下のものなどは産業用ロボットの規制の対象外とされています。協働ロボットの扱いを含めて産業用ロボット特別教育で解説しています。
▶ 低圧電気の取扱い(設備保全)
結論として、低圧(交流600V以下・直流750V以下)の充電電路の敷設・修理や、配電盤室などで充電部分が露出した開閉器の操作には特別教育が必要です(労働安全衛生規則 第36条第4号)。学科7時間・実技7時間以上で、開閉器の操作の業務のみを行う人は実技1時間以上です(安全衛生特別教育規程 第6条)。特別教育は感電を防ぐための教育で、電気工事士の資格の代わりにはなりません。詳しくは低圧電気取扱業務特別教育をご覧ください。
▶ 小型ボイラーの取扱い
製造工程の加熱や洗浄に使う小型ボイラーの取扱いには、学科7時間・実技4時間以上の特別教育が必要です(労働安全衛生規則 第36条第14号、ボイラー及び圧力容器安全規則 第92条)。小型ボイラーより大きいボイラーはボイラー技士免許(小規模ボイラーはボイラー取扱技能講習の修了でも可)が必要です。区分の見分け方は小型ボイラー取扱業務特別教育で解説しています。
■ 構内運搬:フォークリフト・クレーン・玉掛け
材料の受入れから製品の出荷まで、工場の構内運搬では機械の能力によって必要な資格が変わります。運転する人と荷を掛ける人が別なら、それぞれに資格・教育が必要です。
▶ フォークリフトは1tが境目
結論として、最大荷重1t未満のフォークリフトの運転は特別教育(学科6時間・実技6時間以上、安全衛生特別教育規程 第7条)、1t以上は技能講習の修了などが必要です(労働安全衛生規則 第36条第5号、労働安全衛生法施行令 第20条第11号)。技能講習は基本が学科11時間・実技24時間の計35時間で、普通自動車などの運転免許を持つ人などは短いコースを受けられる場合があります。特別教育の内容はフォークリフトの運転業務特別教育(1t未満)、技能講習の取り方はフォークリフト資格の取り方で解説しています。
▶ 天井クレーンは5tが境目
結論として、つり上げ荷重5t未満のクレーンの運転には特別教育(学科9時間・実技4時間以上)が必要です(労働安全衛生規則 第36条第15号、クレーン取扱い業務等特別教育規程 第1条)。5t以上はクレーン・デリック運転士免許が必要ですが、床上操作式クレーンは床上操作式クレーン運転技能講習の修了でも運転できます(労働安全衛生法施行令 第20条第6号)。工場の天井クレーンは、銘板などでつり上げ荷重と運転方式を確認して区分を決めます。詳しくは床上操作式クレーン運転特別教育をご覧ください。
▶ 玉掛けはクレーン等の1tが境目
結論として、玉掛けの資格は荷の重さではなく、使うクレーン等のつり上げ荷重で決まります。1t未満のクレーン等の玉掛けは特別教育(学科5時間・実技4時間、労働安全衛生規則 第36条第19号)、1t以上は玉掛け技能講習(基本19時間)の修了が必要です(労働安全衛生法施行令 第20条第16号)。荷を外す作業も玉掛けに含まれます。詳しくは玉掛け業務従事者安全衛生教育で解説しています。
■ 化学物質・粉じん・酸欠の教育
塗装・洗浄・接着・化学品製造などの工程では、作業者向けの教育と、作業を指揮する作業主任者の両方が必要になることが多くあります。どれが特別教育で、どれが通達にもとづく教育かを分けて確認しましょう。
▶ 有機溶剤:特別教育ではなく通達の教育
結論として、有機溶剤を扱う作業者向けの教育は特別教育ではなく、通達にもとづく労働衛生教育(学科4時間30分)です(昭和59年6月29日付け 基発第337号)。労働安全衛生規則 第36条の特別教育の対象業務に有機溶剤の業務は挙げられていません。「有機溶剤の特別教育」と呼ばれることがありますが、区分の整理が必要です。作業を指揮する有機溶剤作業主任者は、有機溶剤作業主任者技能講習の修了者から選任します(有機溶剤中毒予防規則 第19条)。詳しくは有機溶剤業務従事者安全衛生教育をご覧ください。
▶ 特定化学物質:作業主任者の選任が中心
特定化学物質を製造し、または取り扱う作業(試験研究のためのものなど一部を除く)では、特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習の修了者から特定化学物質作業主任者を選任します(特定化学物質障害予防規則 第27条)。特定化学物質を扱う作業者向けの特別教育は、労働安全衛生規則 第36条には定められていません。溶接ヒュームを扱う金属アーク溶接等の作業では、2024年(令和6年)1月1日から、金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習の修了者を金属アーク溶接等作業主任者として選任することもできます。選任後の教育は特化則作業主任者能力向上教育で解説しています。
▶ 粉じん:特定粉じん作業だけが特別教育
結論として、粉じん作業特別教育(学科5科目・4.5時間以上)が必要なのは、常時「特定粉じん作業」に係る業務に就かせる場合です(粉じん障害防止規則 第22条、労働安全衛生規則 第36条第29号)。特定粉じん作業とは、粉じんの発生源が粉じん障害防止規則 別表第2の特定粉じん発生源である作業で、屋内で固定した研削盤などを使う研磨・ばり取りが当たり得る一方、手持式・可搬式の動力工具によるものは除かれています。アーク溶接は粉じん作業ですが、特定粉じん作業ではありません。見分け方は粉じん作業に係る特別教育で解説しています。
▶ タンク・ピットの内部作業(酸欠)
タンクや槽の内部など、労働安全衛生法施行令 別表第6に掲げる酸素欠乏危険場所で作業させるときは、酸素欠乏危険作業特別教育が必要です(酸素欠乏症等防止規則 第12条)。硫化水素中毒のおそれがない第1種は学科4時間以上、おそれがある第2種は学科5時間30分以上です(酸素欠乏危険作業特別教育規程)。清掃や点検で年に数回しか入らない設備でも対象になるため、作業計画の段階で確認しましょう。詳しくは酸素欠乏危険作業特別教育をご覧ください。
■ 2024年4月からの化学物質管理者・保護具着用管理責任者
2024年(令和6年)4月1日から、化学物質の「自律的な管理」を進めるための改正規定(令和4年厚生労働省令第91号)が全面施行されました。製造業の工場に関係が深いのは次の3点です。
▶ 化学物質管理者は誰を選ぶ?
結論として、リスクアセスメント対象物を製造・取扱い・譲渡提供する事業場では、化学物質管理者の選任が必要です(労働安全衛生規則 第12条の5)。選任は個別の作業場ごとではなく、工場などの事業場単位です。リスクアセスメント対象物を製造する事業場では、化学物質管理者講習(講義9時間・実習3時間の計12時間、令和4年厚生労働省告示第276号)の修了者またはこれと同等以上の能力を有すると認められる人から選任します。製造はせず取り扱うだけの事業場は資格要件が定められていませんが、通達では準ずる講習(計6時間)を受講した人から選任することが望ましいとされています。
▶ 保護具着用管理責任者が必要なとき
リスクアセスメントの結果にもとづいて労働者に保護具を使用させる事業場では、保護具着用管理責任者の選任が必要です(労働安全衛生規則 第12条の6)。資格を持つ人がいない場合の教育は学科5時間・実技1時間の計6時間です(令和4年5月31日付け 基発0531第9号)。選任要件と教育の内容は保護具着用管理責任者教育で解説しています。
▶ 雇入れ時教育の省略規定の廃止
同じ2024年4月1日から、一部の業種で認められていた雇入れ時教育の一部項目の省略規定が廃止され、業種にかかわらず8項目すべてが対象になりました(労働安全衛生規則 第35条)。化学物質を扱う工場では、ラベル・SDSの読み方や保護具の使い方も、雇入れ時の教育で扱う内容に含めて計画しましょう。リスクアセスメントの進め方はリスクアセスメント担当者研修で解説しています。
■ 作業主任者が必要な作業
作業主任者は、作業者の教育とは別に、作業を直接指揮する人として事業者が選任する立場です。作業者全員が特別教育を修了していても、作業主任者の選任義務はなくなりません。
| 作業主任者 | 選任が必要な作業 | 資格 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| プレス機械作業主任者 | 動力により駆動されるプレス機械を5台以上有する事業場で行う当該機械による作業 | プレス機械作業主任者技能講習 | 労働安全衛生法施行令 第6条第7号/労働安全衛生規則 第133条 |
| 有機溶剤作業主任者 | 有機溶剤業務(試験・研究の業務を除く)に係る作業 | 有機溶剤作業主任者技能講習 | 有機溶剤中毒予防規則 第19条 |
| 特定化学物質作業主任者 | 特定化学物質を製造し、または取り扱う作業(一部を除く) | 特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習 | 特定化学物質障害予防規則 第27条 |
| 金属アーク溶接等作業主任者 | 金属アーク溶接等作業(溶接ヒューム) | 金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習(2024年1月1日から)または上記の特定化学物質の技能講習 | 特定化学物質障害予防規則 第27条 |
| 乾燥設備作業主任者 | 一定の規模以上の乾燥設備による物の加熱乾燥の作業 | 乾燥設備作業主任者技能講習 | 労働安全衛生法施行令 第6条第8号/労働安全衛生規則 第297条 |
| 酸素欠乏危険作業主任者 | 第1種・第2種酸素欠乏危険場所における作業 | 酸素欠乏危険作業主任者技能講習(第2種は酸素欠乏・硫化水素の技能講習) | 酸素欠乏症等防止規則 第11条 |
| ボイラー取扱作業主任者 | ボイラー(小型ボイラーを除く)の取扱いの作業 | ボイラー技士免許(規模により技能講習) | ボイラー及び圧力容器安全規則 第24条 |
作業主任者を選任しなかった場合は、労働安全衛生法 第14条違反として、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(同法 第119条第1号)。選任後の能力向上教育は有機溶剤作業主任者能力向上教育などで解説しています。
■ 職長教育は製造業で義務?対象外の業種
▶ 製造業は職長教育の対象業種
結論として、製造業は一部の業種を除き、職長等教育(労働安全衛生法 第60条)の対象業種です(同法施行令 第19条)。新たに職務につく職長など、作業中の労働者を直接指導・監督する人(作業主任者を除く)に、作業手順の定め方や労働者の配置、指導・教育の方法などを計12時間で教育します(労働安全衛生規則 第40条)。
| 区分 | 業種 |
|---|---|
| 製造業のうち対象外の業種 | たばこ製造業/繊維工業(紡績業及び染色整理業を除く)/衣服その他の繊維製品製造業/紙加工品製造業(セロファン製造業を除く) |
| 2023年4月1日から追加された業種 | 食料品製造業(うま味調味料製造業及び動植物油脂製造業は従前から対象)/新聞業・出版業・製本業・印刷物加工業 |
2023年(令和5年)4月1日の改正(令和4年政令第51号)で、食料品製造業や印刷・製本関係の業種も対象になりました。食品工場で「以前は対象外だった」と考えている場合は、改めて確認してください。業種は事業場ごとに判断するため、迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認しましょう。
▶ 職長教育をしないと罰則はある?
職長等教育(第60条)の違反には、労働安全衛生法上の直接の罰則規定はありません。ただし、対象業種の事業者には実施が義務づけられているため、労働基準監督署の指導の対象になり得ます。教育の内容と再教育(おおむね5年ごと)の考え方は職長・安全衛生責任者教育で解説しています。
■ 資格・教育がないまま作業させた場合の罰則
▶ 特別教育なしで作業させるとどうなる?
特別教育をせずに対象業務に就かせた場合や、技能講習・免許のない人に就業制限業務をさせた場合は、労働安全衛生法の罰則の対象になります。
【違反リスク】
特別教育の未実施(労働安全衛生法 第59条第3項違反)、無資格者を就業制限業務に就かせること(同法 第61条第1項違反)、作業主任者の未選任(同法 第14条違反)は、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(同法 第119条第1号)。雇入れ時・作業内容変更時の教育の未実施(同法 第59条第1項・第2項違反)は50万円以下の罰金です(同法 第120条第1号)。いずれも両罰規定により法人にも罰金刑が科され得ます(同法 第122条)。罰則が実際にどう適用されるかは事案ごとに判断されるため、詳しくは所轄の労働基準監督署にご確認ください。会社としての影響は特別教育を受けさせないとどうなる?でも解説しています。
特別教育を行ったときは、受講者・科目などの記録を作成して3年間保存する必要があります(労働安全衛生規則 第38条)。十分な知識・技能を有していると認められる労働者は、該当する科目を省略できます(同 第37条)。
工場の作業者全員に必要な特別教育がそろっているか不安なら、お電話でご相談ください。
📞 042-497-8840 に電話して相談する(相談無料・年中無休・7:00〜21:00)
作業内容をうかがい、必要な教育と受講方法をご案内します。
■ 工場で教育をそろえる段取り
資格・教育の抜けは、新しい設備の導入、ラインの増設、配置転換、派遣スタッフの受入れのときに起こりやすくなります。次の順で棚卸しをすると、抜けを見つけやすくなります。
| 手順 | 確認すること |
|---|---|
| ① 設備の一覧を作る | 研削盤・グラインダー/動力プレスの台数/アーク溶接機/産業用ロボット/フォークリフトの最大荷重/クレーンのつり上げ荷重/小型ボイラー |
| ② 化学物質と作業場所を洗い出す | 有機溶剤・特定化学物質・リスクアセスメント対象物の有無/特定粉じん発生源/タンク・槽など酸素欠乏危険場所 |
| ③ 作業者と業務を対応させる | 誰が金型交換・といし交換・ロボットの教示・玉掛けを担当するか(保全・段取り担当者を含む) |
| ④ 修了証と記録を確認する | 技能講習・免許の原本(携帯が必要)/特別教育の修了証と社内の記録(3年保存) |
| ⑤ 選任・配置を決める | 作業主任者/化学物質管理者/保護具着用管理責任者/職長 |
| ⑥ 足りない教育を手配する | 特別教育・通達の教育は社内実施または外部委託/技能講習・免許は登録教習機関・試験機関 |
派遣労働者の場合、雇入れ時教育は雇用主である派遣元が行い、特別教育と職長等教育は派遣先が行います。派遣スタッフに金型交換やフォークリフトを担当させる場合は、派遣先として教育を手配する必要があります。教育の記録の残し方は安全衛生教育の記録の保存期間で解説しています。
■ 当センターで受講できる製造業向けの教育
当センターの特別教育・安全衛生教育の料金は、1名8,000円〜(税込・教材費・修了証発行費込み)です。研削といし・動力プレス・産業用ロボット・低圧電気・フォークリフト(1t未満)・玉掛け(1t未満)など、この記事で紹介した教育のうちどの科目に対応できるかは、お問い合わせください。アーク溶接等特別教育は10,000円〜で5名様以上の対面講習(出張または会場)のみ、【初回】職長・安全衛生責任者教育は13,000円〜で出張講習のみです(いずれもオンライン不可)。
受講方法はオンライン(1名から)と出張講習(関東1都6県は5名様から、遠方は20名様以上が目安)です。関東1都6県の出張講習は、交通費・宿泊費・出張基本費がかかりません。少人数の出張や遠方での開催は、料金が上がる場合があります。科目ごとの対応形式・実技の実施方法はお問い合わせください。技能講習・免許(1t以上のフォークリフト、作業主任者の技能講習など)は、登録教習機関・試験機関で受講・受験します。当センターで扱う講習については、お問い合わせください。費用の概算は料金シミュレーターで確認できます。
■ よくある質問
▶ Q. 従業員が少ない工場でも特別教育は必要ですか?
必要です。特別教育の義務(労働安全衛生法 第59条第3項)には、事業場の規模や業種による限定はありません。対象業務に就かせる労働者が1人でも、事前に特別教育を行う必要があります。
▶ Q. 有機溶剤を使う作業者に特別教育は必要ですか?
有機溶剤の業務は特別教育の対象業務(労働安全衛生規則 第36条)に含まれていません。作業者には、通達(基発第337号)にもとづく学科4時間30分の労働衛生教育を行い、作業主任者は技能講習の修了者から選任します。
▶ Q. 特別教育は社内で行ってもよいですか?
行えます。特別教育は事業者が行う教育で、告示で定められた科目・時間を満たせば社内で実施できます。技能講習は登録教習機関でなければ実施できず、社内で行っても修了にはなりません。
▶ Q. 特別教育や技能講習の修了に有効期限はありますか?
法令に有効期限の定めはありません。ただし、危険・有害な業務に就いている人への定期的な教育は努力義務とされています(労働安全衛生法 第60条の2)。詳しくは特別教育に有効期限はある?をご覧ください。
▶ Q. 化学物質管理者は製造業の工場すべてに必要ですか?
リスクアセスメント対象物を製造・取扱い・譲渡提供する事業場で必要です(労働安全衛生規則 第12条の5)。塗料・接着剤・洗浄剤など、使っている製品のSDSで対象物が含まれるかを確認してください。
■ 製造現場の資格・教育チェックリスト
- 研削といしの取替え・試運転をする人が、自由研削用・機械研削用の区分に合った特別教育を修了している
- 動力プレスの金型交換・調整をする人が特別教育を修了し、5台以上ならプレス機械作業主任者を選任している
- アーク溶接をする人が特別教育を修了し、溶接ヒュームの措置(換気・測定・保護具)を行っている
- 産業用ロボットの教示・検査をする人が、それぞれの特別教育を修了している
- フォークリフト・クレーンの運転者と玉掛けをする人が、能力(1t・5t)に合った資格を持っている
- 有機溶剤・特定化学物質の作業に作業主任者を選任し、化学物質管理者の選任要否を確認している
- 新任の職長に職長等教育を行い、パートを含めて雇入れ時教育(8項目)を行っている(派遣スタッフは派遣元の実施を確認している)
- 特別教育の記録を作成し、3年間保存している
■ まとめ
製造業で必要な資格・教育は、研削といし(6時間・10時間)、動力プレス金型(10時間)、アーク溶接(21時間)、産業用ロボット(10時間・13時間)、低圧電気(14時間)などの特別教育と、フォークリフト・クレーン・玉掛けの能力に応じた資格、有機溶剤・特定化学物質などの作業主任者が中心です。特別教育の未実施や無資格での作業は、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(労働安全衛生法 第119条第1号)。
製造業は一部の業種を除いて職長教育の対象業種で、2024年4月からは化学物質管理者・保護具着用管理責任者の選任も求められています。設備の一覧と作業者の修了証を照らし合わせ、足りない教育を早めに手配しましょう。
■ 関連する特別教育・安全衛生教育
■ 講習のお申込み・ご相談
製造業向けの特別教育・安全衛生教育のお申込み・ご相談は、受講方法の案内ページまたは問い合わせページから受け付けています。お問い合わせ→お見積もり→お振込み→講習日確定の流れで進みます。
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オンライン(1名から)と、工場に講師が伺う出張講習(関東1都6県は5名様から)から、現場に合った受講方法をご提案します。
■ 参考情報・公式リソース
| サイト名 | 概要 | リンク |
|---|---|---|
| e-Gov法令検索|労働安全衛生法 | 第14条・第59条・第60条・第61条・第119条・第120条・第122条の条文 | 公式サイト |
| e-Gov法令検索|労働安全衛生法施行令 | 第6条(作業主任者)・第19条(職長等教育の業種)・第20条(就業制限) | 公式サイト |
| e-Gov法令検索|労働安全衛生規則 | 第12条の5・第12条の6・第35条〜第40条の条文 | 公式サイト |
| 厚生労働省|安全衛生特別教育規程 | 研削といし・動力プレス・アーク溶接・低圧電気・フォークリフト・産業用ロボットなどの科目と時間 | 公式サイト |
| 安全衛生情報センター|クレーン取扱い業務等特別教育規程 | クレーン・玉掛けの特別教育の科目と時間 | 公式サイト |
| 厚生労働省|化学物質による労働災害防止のための新たな規制 | 化学物質管理者・保護具着用管理責任者・雇入れ時教育の改正(2024年4月1日施行) | 公式サイト |
| 厚生労働省|化学物質管理者講習に関する通達(基発0907第1号) | 化学物質管理者講習の告示(令和4年厚生労働省告示第276号)と準ずる講習の科目 | 公式サイト |
| 兵庫労働局|職長等に対する安全衛生教育の対象業種の拡大 | 2023年4月1日からの施行令第19条の改正 | 公式サイト |
| 岡山労働局|資格が必要な作業(作業主任者) | プレス機械・有機溶剤・特定化学物質・乾燥設備などの作業主任者 | 公式サイト |
