特別教育と技能講習の違い|対象業務・取得方法・必要な資格を徹底解説!

「特別教育」と「技能講習」。どちらも労働現場で必要な教育制度ですが、その違いをご存じでしょうか?「自社の業務はどちらが必要?」「資格を取らずに作業させたらどうなる?」「取得方法や費用は?」と悩む企業担当者の方は少なくありません。実は、この違いを正しく理解していないと、労働災害発生時に会社側の法的責任や補償問題が発生するリスクがあります。また、現場で資格が必要な作業に無資格者が従事した場合、労働安全衛生法違反となり企業の信用にも大きな影響を与えかねません。

本記事では、特別教育と技能講習の違いをわかりやすく比較表で整理し、対象となる業務や取得方法・費用感・注意点まで詳しく解説します。さらに、「自分や自社はどちらが必要なのか?」が一目でわかるチェックリストや、教育を怠った場合のリスクもご紹介。これから特別教育や技能講習の受講を検討している方はもちろん、既に作業を行っているが資格の有無が不安な方も、ぜひ参考にしてください。

安全で信頼される職場環境づくりのために、この記事が必ずお役に立ちます。

はじめに

労働安全衛生法では、作業の危険度や必要な技能レベルに応じて「特別教育」と「技能講習」の二つを定め、事業者に対して受講・修了の義務を課しています。ところが現場では、「どの業務が特別教育の範囲で、どこから技能講習が必要になるのか」「実務経験はどれだけ求められるのか」といった判断でつまずくケースが少なくありません。結果として無資格状態のまま作業をさせてしまい、労災発生時に保険給付が制限されたり、企業が書類送検・指名停止を受けたりする事例も報告されています。

本記事では、まず 特別教育と技能講習の制度的な位置づけ を整理し、それぞれが どのような危険作業を対象とするのか を具体例で示します。そのうえで、取得までのステップ・費用感・必要書類 など「実際にどう動けばいいか」を手順化しました。さらに、「自社の業務をチェックするためのリスト」や「受講を怠った場合のリスク」も網羅しているため、安全衛生担当者はもちろん、経営者・現場責任者・個人事業主 に至るまで幅広く活用できます。

この記事を読み終える頃には、

  1. 自分の業務で本当に必要な教育・講習が判断できる
  2. 受講に必要な手続きとスケジュール感がつかめる
  3. 資格未取得のまま作業させた場合の具体的なリスクを把握できる

——という状態になれるはずです。安全・コンプライアンス・信頼を守る第一歩として、ぜひ参考にしてください。

特別教育と技能講習の違いをざっくり解説

特別教育と技能講習の違いは 「危険度の高低」と 「講習を実施できる主体・資格効力」 で線引きされます。
特別教育は事業者自身が行う社内教育で、危険度が比較的低い作業に必要です。一方、技能講習は厚生労働大臣登録教習機関で受講し、死亡・重大災害を招きやすい高リスク作業に従事する際の全国共通資格になります。以下に概要を整理しました。

ざっくり比較表

項目特別教育技能講習
対象作業の危険度比較的軽度の危険・有害作業(例:フルハーネス使用、高所作業車10 m未満、小型車両系建設機械3 t未満 等)重大災害につながる高リスク作業(例:フォークリフト1 t以上、玉掛け、高所作業車10 m以上 等)
法律上の根拠労働安全衛生規則第36条・安全衛生特別教育規程 労働安全衛生法施行令別表第18・第20条等(就業制限規定) anzeninfo.mhlw.go.jp
実施主体事業者(社内講師で可)/外部委託も可厚労大臣登録教習機関のみ(事業者内では実施不可)
受講時間の目安数時間〜1日(例:フルハーネス=学科4.5h+実技1.5h)2〜4日・19〜31時間程度(例:フォークリフト=31h、玉掛け=19h)
修了証の効力事業者名義の社内証明(会社を変わると無効の可能性大)全国共通で通用する法定資格(転職後も有効)
罰則・リスク未実施で就業させると安衛法59条違反、労災給付減額の恐れ未取得者就業で安衛法61条違反、書類送検・刑事罰・元請指名停止等の恐れ

【早見表】特別教育と技能講習の違いまとめ

比較項目特別教育技能講習
対象となる危険度比較的軽度な危険・有害作業(「比較的軽微な危険」と定義される)死亡・重大災害につながる高リスク作業
代表的な業務例フルハーネス型墜落制止用器具使用/高所作業車〈10 m未満〉/小型車両系建設機械〈3 t未満〉/研削といし取替え/酸欠・硫化水素危険作業 などフォークリフト〈1 t以上〉/車両系建設機械〈3 t以上〉/玉掛け/高所作業車〈10 m以上〉/クレーン運転/ガス溶接 など
法律上の根拠労働安全衛生規則 第36条ほか(安衛法59条=事業者が教育義務)労働安全衛生法施行令 別表18・20号ほか(安衛法61条=就業制限)
実施主体事業者(社内講師で可)※外部委託も可厚労大臣登録教習機関のみ
講習時間の目安数時間〜1日(例:フルハーネス=学科4.5 h+実技1.5 h)2〜4日・19〜31 h(例:フォークリフト=31 h、玉掛け=19 h)
修了証の効力事業者名義の社内証明(在籍企業内のみ有効が原則)全国共通で通用する法定資格(転職後も有効)
費用の目安5,000〜15,000円20,000〜50,000円
未受講で作業させた場合安衛法59条違反 → 指導・是正勧告・労災給付減額の可能性安衛法61条違反 → 書類送検・罰金・元請指名停止など重大処分

ポイントまとめ

  1. 危険度の高さで「技能講習」か「特別教育」かが決まる。
  2. 技能講習は登録教習機関で受講し、修了証は全国共通資格。
  3. 未受講で作業を行わせると、企業責任・労災補償・信用すべてに大きなリスク。

特別教育の対象業務と取得方法

特別教育は「危険度は高くないが、誤った手順や知識不足が事故に直結する作業」を行う前に必ず受講すべき法定教育です。
適切な工具の使い方や安全装備の装着方法、作業中に発生し得るリスクとその回避策を体系的に学ぶことで、作業者自身の身を守るだけでなく、現場全体の事故・トラブルを未然に防ぎます。

本章では、どのような作業が特別教育の対象になるのかを具体例で整理し、社内開催と外部講習を含む取得フロー、受講資格、費用相場、修了証の取り扱いまでをわかりやすく解説します。「自社の作業が該当するか不安」「必要な手続きや費用感を知りたい」という安全衛生担当者や現場責任者の方は、ぜひチェックしてください。

対象業務一覧(代表例)|特別教育

労働安全衛生規則第36条・安全衛生特別教育規程に基づき「事業者が受講させる義務」がある業務です。※代表例を抜粋しています。現場作業を計画する際は必ず原文(厚労省告示92号 ほか)で該当有無を確認してください。

大分類特別教育が必要な代表作業
墜落防止・高所- フルハーネス型墜落制止用器具を使用する作業- 高所作業車の運転(作業床高さ10 m未満)- 足場の組立て・解体・変更作業
車両系・運搬機械- 小型車両系建設機械(機体重量3 t未満)の運転(整地・積込・掘削・解体・基礎工事)- 不整地運搬車(最大積載量1 t未満)の運転- ローラー(締固め用機械)の運転
つり上げ・巻上げ- ジャッキ式つり上げ機械の調整・運転- 巻上げ機の運転(ウインチ等)- 軌道装置の動力車の運転
切削・研削・伐木- 自由研削用といしの取替え・試運転- チェーンソー(伐木等の業務)- 刈払機(草刈り作業)
溶接・電気取扱い- アーク溶接等の業務- 高圧・低圧電気取扱い業務
化学・環境- 酸素欠乏・硫化水素危険作業(マンホール・地下槽等)- 石綿(アスベスト)取扱い作業- 粉じん発生作業
その他の建設系作業- 基礎工事用建設機械の運転- ボーリングマシンの運転- コンクリート打設用車両系機械の作業装置操作 など

取得方法|特別教育

  1. 対象業務の確認
    自社の作業内容が特別教育の対象かを法令(労働安全衛生規則・告示 92 号など)で照合する。
  2. 開催形態を決定
    • 社内開催:自社の有資格者・経験者を講師に立てて実施
    • 外部講習機関:労基署や業界団体が紹介する講習会を受講
  3. 教育計画の作成
    学科・実技カリキュラム、受講者リスト、スケジュールを作成。
  4. 講習実施
    学科→実技の順で実施(例:フルハーネス=学科4.5 h+実技1.5 h)。
  5. 理解度確認(テスト)
    法定必須ではないが、社内規程としてテストを行う企業が多い。
  6. 修了証交付・台帳保存
    事業者名義で修了証を渡し、受講者台帳を3年間保管(安衛則38条)。

受講資格|特別教育

区分内容
年齢原則制限なし(18歳未満でも就業が認められる作業なら受講可)
学歴・経験不問(技能講習のような実務経験要件なし)
理解度日本語で講義内容を理解できること(※外国人労働者の場合は母国語通訳か多言語テキストで対応)

申込み方法|特別教育

開催形態手続きフロー
社内開催①安全衛生責任者が日程策定
②講師・教材・会場手配
③受講者へ案内・参加承諾
④講習実施→修了証交付
外部講習機関①Web/電話で申し込み
②受講料支払い(事前振込 or 当日現金)
③受講票受領
④当日受講→修了証受領

ワンポイント:外部機関に申し込む場合は、定員締切やテキスト別売などがあるため 1か月前までの申込み が無難。

費用の目安(外部講習利用時)|特別教育

講習区分相場(円・税込)
フルハーネス特別教育8,000〜15,000
高所作業車〈10 m未満〉10,000〜18,000
研削といし取替え6,000〜12,000
酸欠・硫化水素危険作業8,000〜14,000
刈払機取扱い6,000〜10,000

社内開催の場合は 講師謝金・テキスト・会場費・保険料 を含めた実費精算が必要。

修了証の扱い|特別教育

項目説明
発行主体事業者名義(外部機関で受講しても所属事業者名を併記)
有効期限法令上の期限なし。ただし機材更新・法改正時は再教育を実施する企業が多い。
転職時の効力事業者内限定が原則。転職先が再受講を求めるケースが多い。
保管義務事業者は受講台帳と修了証(写)を 3年間 保存(安衛則38条)。
再発行紛失・破損時は事業者が再発行。ただし外部機関で受講した場合は機関側に再発行申請が必要。

まとめ

  • 特別教育は「社内教育で完結できる法定教育」であり、手続きはシンプルだが 修了証の効力は事業者内に限られる。
  • 外部機関を活用すると教材・講師確保の手間が省け、法改正情報もフォローしてくれるため 初めて実施する企業におすすめ。
  • 受講実績の台帳管理と再教育のタイミングを逃さないことが、安全管理と労基署対応の両面で重要。

技能講習の対象業務と取得方法

労働安全衛生法施行令別表第 18・第 20 号ほかに基づき、「就業制限業務」 として定められている作業は、登録教習機関が実施する「技能講習」を修了した者だけが従事できます。
(下表は主要例です。実際に作業を計画する際は必ず原文を参照し、最新の指定業務を確認してください)

対象業務一覧(代表例)|技能講習

大分類技能講習が必要な主な作業例
運搬・揚重フォークリフト運転〈1 t以上〉/玉掛け作業/床上操作式クレーン/小型移動式クレーン〈1~5 t〉/クレーン運転(つり上げ荷重5 t以上)
車両系建設機械整地・運搬・積込・掘削〈3 t以上〉/解体用機械〈3 t以上〉/基礎工事用機械〈3 t以上〉
高所作業高所作業車運転〈作業床高さ10 m以上〉
ガス・溶接・切断ガス溶接作業/アーク溶接等の業務
巻上げ・ボーリング巻上げ機運転(ウインチ)/ボーリングマシン運転
その他車両系建設機械(締固め用・ローラー)/不整地運搬車〈最大積載量1 t以上〉 など

取得方法(登録教習機関を受講)|技能講習

  1. 対象業務を確認
    就業予定作業が「就業制限業務」に該当するかを法令で照合。
  2. 受講資格を確認
    経験年数要件(下表参照)や年齢・運転免許の有無をチェック。
  3. 講習機関を選定・申込み
    • 厚生労働大臣登録教習機関の一覧から選ぶ
    • Web/電話/窓口で申し込み、受講料を納付
  4. 講習を受講
    モデルカリキュラムに沿い 学科+実技(2~4日) を履修。
  5. 修了試験
    学科試験と実技試験に合格すると修了証が交付される。

受講資格(実務経験が必要なケース)|技能講習

技能講習区分受講前に必要な実務経験・資格例
玉掛けつり上げ荷重1 t未満の「玉掛け特別教育」修了+実務経験6か月以上 または 実務経験1年以上
クレーン運転〈5 t以上〉クレーン等安全規則で定める実務経験(例:5 t未満クレーン操作経験など)
車両系建設機械〈3 t以上〉普通自動車免許保有+不整地運搬車・小型車両系建機の運転経験 など(機種により要件が異なる)
高所作業車〈10 m以上〉普通自動車免許保有(走行操作が必要な場合)

経験要件は講習機関ごとに 事前書類(実務証明書など)の提出 が求められます。不足している場合は「特別教育→実務→技能講習」という段階取得が必要です。

申込み方法|技能講習

手順内容
講習日程検索登録教習機関のWebサイト/案内チラシで日程・空席を確認
必要書類準備申込書、顔写真、健康診断書、運転免許写し、実務証明書など
受講料支払い銀行振込・クレジット決済・当日現金など機関指定方法で支払い
受講票受領メール・郵送で受講票が届く(当日持参)
受講 → 修了試験学科・実技試験に合格後、その場で〈プラスチックカード/紙〉の修了証を受領

費用の目安(全国平均)|技能講習

技能講習受講料相場
フォークリフト(31 h)30,000~50,000円
玉掛け(19 h)20,000~35,000円
車両系建設機械(整地等・31 h)40,000~60,000円
高所作業車(17 h)25,000~45,000円
ガス溶接(16 h)15,000~30,000円

価格はテキスト・保険料込みの例。繁忙期・地域・取得機種により変動します。

修了証の扱い(法的資格になる違い)|技能講習

項目説明
交付主体登録教習機関(厚労大臣登録)
法的効力全国共通で通用する技能資格 → 転職・現場変更後も有効
更新義務原則なし(法改正・安全衛生再教育が告示された場合を除く)
再発行紛失・破損時は講習機関へ申請(手数料1,000~3,000円程度)
労基署対応資格証の提示・写し提出で就業制限解除を証明できる

ポイント

  • 技能講習修了証は「就業制限解除の証明書」。提示できなければ法的に作業に従事できません。
  • 資格番号・氏名・生年月日がカードに刻印され、履歴書やキャリアアップにも通用します。

まとめ|技能講習

技能講習は、高リスク作業者に必須の全国共通ライセンス。受講前に 経験要件と受講枠の空き を確認し、早めに講習スケジュールを確保しておくことが安全管理と現場運用のカギとなります。

【チェックリスト】自分は特別教育?技能講習?どちらが必要?

手順はシンプルに3ステップ

  1. 作業内容をチェックする
  2. よくある誤解を潰す
  3. 不明点は専門窓口へ相談する

作業内容から判断する

凡例
● = その講習(特別教育または技能講習)が必要
× = 不要(もう一方の講習が必要または法定教育対象外)

作業カテゴリ具体的な作業例特別教育技能講習
墜落防止フルハーネス型墜落制止用器具を使用する高所作業(作業床設置困難・高さ2 m以上)×
高所機械高所作業車〈作業床高さ 10 m 未満〉の運転×
高所機械高所作業車〈作業床高さ 10 m 以上〉の運転×
車両系建機小型車両系建設機械〈機体重量 3 t 未満〉の運転×
車両系建機車両系建設機械〈機体重量 3 t 以上〉の運転×
運搬・揚重フォークリフト〈1 t 未満〉の運転×
運搬・揚重フォークリフト〈1 t 以上〉の運転×
運搬・揚重玉掛け〈つり上げ荷重 1 t 未満〉×
運搬・揚重玉掛け〈つり上げ荷重 1 t 以上〉×
研削作業研削といしの取替え・試運転×
溶接作業ガス溶接×
酸欠・有害ガス酸素欠乏・硫化水素危険作業×

よくある誤解と注意点

誤解正しい理解
「社内OJTだけで十分」法令で定める教育(特別教育または技能講習)の修了が必須。OJTのみでは違反。
「1日だけの作業だから不要」作業時間の長短に関係なく、該当作業を行うなら教育・講習は必須。
「特別教育修了証は全国どこでも有効」原則、事業者内限定。転職・出向時は再受講を求められる場合が多い。
「技能講習も社内開催できる」技能講習は厚労大臣登録の教習機関でのみ実施可能。社内講師では行えない。

相談先(迷ったらすぐ確認)

  • 労働基準監督署(安全衛生課)
    対象業務区分・必要講習、登録教習機関の確認など
  • 元請・発注者の安全衛生部門
    下請け作業員に求める資格・推奨講習機関の情報
  • 業界団体/講習機関
    受講日程・費用・実務経験証明書の書き方など詳細相談

ポイント
迷ったら「危険度の高い方=技能講習」を優先するのが安全側判断。資格不足で作業させると、就業停止命令・書類送検・労災給付減額 など重大リスクに直結します。

特別教育・技能講習を受けない場合のリスク

リスク区分具体的な影響実際に起こり得る事態
労働災害発生時の影響無資格作業による事故は「安全配慮義務違反」と判断されやすく、労働基準監督署から重度の行政指導や作業停止命令を受ける可能性が高い。・現場全面停止による工期遅延、違約金発生
・元請・施主からの損害賠償請求
労災給付への影響労災保険支給時に給付減額・不支給となるケースがある(安衛法119条違反を理由に「第三者行為」扱い)。・被災労働者への追加補償を会社が全額負担
・遺族補償における訴訟リスク
会社側の法的責任安衛法59条・61条違反で書類送検・罰金刑(50万円以下)
重大災害では業務上過失致死傷が適用されることも。
・経営者・現場所長が刑事責任を問われる
・公共事業の入札参加資格停止や建設業許可取消し
信用リスク・対外的影響元請の安全評価ランクや取引先の監査でマイナス評価。SNS・報道で拡散するとイメージ悪化が長期化。・取引停止・サプライチェーンからの排除
・人材採用難・離職率増加

まとめ

  1. 無資格作業は事故発生時に補償コストが倍増し、経営リスクが急拡大する。
  2. 法令違反が表面化すると行政処分・刑事罰・取引停止の三重苦。
  3. 「教育コストを惜しんだ結果、はるかに高い社会的コストを負う」──これが未受講の最大リスク。

まとめ|「違い」を理解して安全と信用を同時に守る

特別教育と技能講習は 危険度・実施主体・修了証効力 で明確に区分されます。
無資格で作業させると、労災給付が減額されるだけでなく、書類送検や元請からの指名停止に発展するおそれがあります。
――教育コストを惜しんで発生する損失のほうがはるかに大きい、これが本記事の最大の教訓です。

受講コスト vs. 未受講リスク(早見表)

観点教育を受けた場合教育を受けない場合
直接コスト受講料・教材費(1〜5万円程度)0 円
事故時の補償労災給付+追加補償ほぼ不要労災減額 → 企業が全額負担
法的処分なし書類送検・罰金・作業停止命令
取引評価安全体制が高評価指名停止・契約解除のおそれ
企業イメージ「安全第一」のブランド確立SNS炎上・採用難・離職率増

結論:教育費は保険料
受講を怠った場合の損失(補償・罰則・信用低下)は、教育費をはるかに上回ります。

次に取るべきステップ

  1. 作業棚卸し
    • 安衛則別表で自社作業を照合し、「特別教育 or 技能講習」を分類する。
  2. 講習計画を立案
    • 社内開催 or 外部講習機関のどちらで進めるかを決定し、日程・費用・受講枠を確保。
  3. 修了証管理と再教育
    • 台帳を3年間保存し、機材更新・法改正のタイミングでフォローアップ講習を実施。

安全で信頼される職場づくりへ

教育は「人を守る」だけではなく、会社と取引先を守る最も手堅い投資です。
今日から資格の棚卸しと受講計画を進め、事故ゼロ・信用損失ゼロの現場を実現しましょう。

参考URL

本記事で解説した特別教育や技能講習、またその根拠となる法律について、より詳細な情報や原文を確認したい場合は、以下の公的なウェブサイトが非常に役立ちます。

  • 厚生労働省 | 職場のあんぜんサイト 労働安全衛生に関する法令や通達、各種教育の概要、災害事例など、信頼性の高い情報が網羅されています。特別教育や技能講習の対象業務を調べる際の基本となるサイトです。 https://anzeninfo.mhlw.go.jp/
  • e-Gov法令検索 | 労働安全衛生法・労働安全衛生規則 本記事で解説した多くの義務の根拠となる法律・規則の原文を直接確認することができます。
  • 厚生労働省 | 登録教習機関一覧 技能講習を実施している、厚生労働大臣の登録を受けた教習機関を全国から検索することができます。お近くの講習機関を探す際に便利です。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei06.html
  • 中央労働災害防止協会(中災防) 各種技能講習や特別教育のテキスト発行、安全衛生に関する最新情報や講習会の案内などを提供している中心的な機関です。 https://www.jisha.or.jp/