動力プレス金型取付け等特別教育とは?|講習内容・費用・時間を徹底解説!

動力プレス金型取付け等特別教育は、プレス機械の金型交換といった業務に不可欠な法令で定められた安全教育です。本記事では、その講習内容や費用、修了までに必要な時間など、受講前に知っておきたい基本情報を分かりやすく解説していきます。
目次
そもそも動力プレス金型取付け等特別教育って何?
動力プレス金型取付け等特別教育と聞いても、具体的にどのようなものかイメージが湧かない方も多いかもしれません。これは、プレス機械を安全に取り扱うために法律で定められた、非常に重要な安全教育の一つです。ここでは、その基本となる概要から分かりやすく解説していきます。
まずは基本から!法律で定められた安全教育です
動力プレス金型取付け等特別教育は、労働安全衛生法という法律に基づき、事業者に実施が義務付けられている教育です。正式には「動力プレスの金型等の取付け、取外し又は調整の業務に係る特別教育」といいます。
プレス機械は便利な反面、誤った使い方をすると指を挟むなどの重大な労働災害につながる危険性があります。こうした事故を防ぎ、作業者の安全を守るために、専門的な知識と技術を学ぶことが法律で求められているのです。
どんな作業をする人が対象になるの?
この特別教育は、動力プレス機械の金型や刃物の交換、調整といった業務に携わるすべての作業者が対象となります。具体的には、以下のような作業が該当します。
- 動力プレスの金型や刃物の取付け作業
- 動力プレスの金型や刃物の取外し作業
- 動力プレスの金型や刃物の調整作業
正社員や契約社員、パート、アルバイトといった雇用形態に関わらず、これらの危険を伴う業務を行う場合は、必ず事前にこの教育を受けなければなりません。
もし教育を受けずに作業したらどうなる?
もし事業者が、この特別教育を受けさせていない作業者に該当の業務を行わせた場合、法律違反となります。労働安全衛生法第119条に基づき、事業者に対して「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科される可能性があります。
これはプレス機械の業務に限ったことではありません。例えば、高所作業で必須となるフルハーネス型墜落制止用器具特別教育を受けなかった場合も同様に厳しい罰則が定められており、安全教育の重要性がうかがえます。
罰則があるからというだけでなく、従業員の安全を確保し、企業のコンプライアンスを守るという観点からも、対象となる作業者には必ず受講させることが不可欠です。万が一の事故を防ぐためにも、教育の重要性を正しく理解しておきましょう。
講習では何を学ぶ?気になる時間や内容をチェック
動力プレス金型取付け等特別教育は、具体的にどのようなことを学ぶのでしょうか。この講習は、プレス機械の安全な取り扱いに関する「学科教育」と、実際の操作を学ぶ「実技教育」の二本立てで構成されています。ここでは、それぞれのカリキュラム内容や、修了までに必要な時間について詳しく見ていきましょう。
学科で学ぶこと一覧
学科教育では、プレス機械の構造や安全装置に関する知識、作業方法、関連する法令など、安全に業務を行うための理論を学びます。労働安全衛生規則で定められた科目と時間は以下の通りです。
学科教育の科目と時間
科目 | 時間 |
---|---|
プレス機械及びその安全装置又は安全囲いに関する知識 | 2時間 |
動力プレスの金型、ボルスター、スライドに関する知識 | 2時間 |
動力プレスの金型等の取付け、取外し及び調整に関する知識 | 3時間 |
関係法令 | 1時間 |
合計 | 8時間 |
これらの講習を通じて、プレス機械の危険性を理解し、事故を未然に防ぐための知識を体系的に習得します。
実技でやることは?
実技教育では、学科で学んだ知識をもとに、実際に動力プレスを使って金型の取付けや取外し、調整作業を行います。安全な作業手順を体に覚え込ませることが目的です。
実技教育の科目と時間
科目 | 時間 |
---|---|
動力プレスの金型等の取付け、取外し及び調整に関する実技 | 2時間 |
合計 | 2時間 |
講師の指導のもと、金型の運搬から取付け、芯出し、試し打ち、そして最終的な調整までの一連の流れを実践します。これにより、現場ですぐに役立つ実践的なスキルが身につきます。
講習時間を短くできるケースもある?
実は、特定の資格や十分な実務経験がある場合、講習の一部が免除され、合計10時間の講習時間を短縮できることがあります。
例えば、職業能力開発促進法に基づく技能検定で「工場板金(機械板金作業)」「金属プレス加工(金属プレス作業)」などの等級に合格している方や、関連業務に関する職業訓練指導員免許を持っている方などが対象となります。
自分が免除規定に該当するかどうかは、受講を申し込む機関や団体に事前に確認することをおすすめします。該当すれば、より短い時間で効率的に資格を取得することが可能です。
受講前に知っておきたい費用や申し込みのこと
動力プレス金型取付け等特別教育の重要性が分かったところで、次に気になるのは「誰が受けられるのか」「費用はどれくらいか」「どうやって申し込むのか」といった具体的な手続きの部分ではないでしょうか。ここでは、受講を決める前に押さえておきたいポイントを一つひとつクリアにしていきましょう。
講習を受けるのに特別な資格はいる?
結論から言うと、この特別教育を受けるために特別な資格や学歴、実務経験などは一切必要ありません。プレス機械の業務にこれから就く予定の方や、すでに就いているけれどまだ教育を受けていない方など、年齢や経験を問わず誰でも受講することが可能です。
安全に作業するための知識と技術を学ぶことが目的の教育ですので、経験の有無にかかわらず、対象業務に携わるすべての方が受講対象者となります。
費用はいくらくらい?料金の目安と内訳
受講費用は実施する機関によって異なりますが、一般的には15,000円から20,000円程度が相場です。この費用には、講習の受講料だけでなく、テキスト代や修了証の発行手数料などが含まれていることがほとんどです。
料金の内訳(一例)
項目 | 内容 |
---|---|
受講料 | 学科および実技の講習費用 |
テキスト代 | 講習で使用する教材の費用 |
修了証発行手数料 | 講習修了を証明するカード等の発行費用 |
その他 | 消費税など |
詳細な金額や含まれる内容は、申し込みを検討している講習機関のウェブサイトなどで必ず事前に確認するようにしてください。
また、企業が従業員に受講させる場合、各種助成金を活用することで費用負担を軽減できるケースがあります。特に多くの特別教育が求められる建設業などでは、様々な制度が用意されています。利用できる制度の概要については、建設業で必要な特別教育をまとめたこちらの記事も参考になりますので、ぜひご活用ください。
どこで受けられる?申し込みから受講までの流れ
この特別教育は、全国の様々な機関で実施されています。主な受講場所としては、建設機械メーカー系の教習センターや、各都道府県の労働基準協会連合会、建設業協会などが挙げられます。
申し込みから受講までの一般的な流れは以下の通りです。
- 講習機関を探す: インターネットで「動力プレス 特別教育 (地域名)」などと検索し、近くの講習機関を探します。
- 日程確認・申し込み: ウェブサイトで講習スケジュールを確認し、WebフォームやFAX、電話などで申し込みます。
- 受講料の支払い: 指定された方法(銀行振込など)で受講料を支払います。
- 講習受講: 当日、指定された会場で講習を受けます。本人確認書類や証明写真が必要な場合もあるため、持ち物は事前に確認しておきましょう。
- 修了証の交付: 全てのカリキュラムを修了すると、後日または当日に修了証が交付されます。
会社に来てもらう出張講習という選択肢も
受講対象者が複数名いる企業の場合、講師を会社に招いて講習を実施する「出張講習(講師派遣)」を利用するのも一つの手です。
受講者が会場へ移動する手間や時間を省けるほか、日程の調整がしやすい、受講者数によっては一人あたりの費用を抑えられる可能性があるといったメリットがあります。また、自社の設備を使って実技教育を行える場合もあり、より実践的な学びにつながります。
一定の受講人数(5名以上など)が条件となることが多いですが、企業単位での受講を検討している場合は、各講習機関に一度問い合わせてみるとよいでしょう。
これってどうなの?修了証や関連資格のよくある質問
講習の概要が分かってくると、今度は修了証の扱いや、似たような名前の資格との違いなど、細かい部分が気になってきますよね。ここでは、受講後によく寄せられる質問について、分かりやすくお答えしていきます。
「プレス機械作業主任者」とは何が違う?
「動力プレス金型取付け等特別教育」とよく混同されがちなのが「プレス機械作業主任者」です。この二つは役割が全く異なります。簡単に言うと、特別教育は作業者自身のための安全教育、作業主任者は現場全体を監督するための資格です。
両者の違いを下の表にまとめました。
項目 | 動力プレス金型取付け等特別教育 | プレス機械作業主任者 |
---|---|---|
役割 | プレス作業を行うプレイヤー | 作業全体を指揮する監督 |
対象者 | 該当の業務を行う作業者全員 | 事業者から選任された管理者 |
資格の種類 | 特別教育(講習の修了) | 技能講習(国家資格) |
主な仕事 | 金型の取付け・取外し・調整作業 | 作業方法の決定、指揮、安全装置の点検など |
このように、作業者向けの「特別教育」と、管理者向けの「技能講習」では、その目的や位置づけが大きく異なります。この特別教育と技能講習の根本的な違いについては、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
また、プレス機械作業主任者が現場の安全を管理・監督する役割は、建設現場における職長・安全衛生責任者とも通じる、現場の要となる重要なポジションです。
修了証はずっと使える?更新手続きは必要?
一度取得した「動力プレス金型取付け等特別教育」の修了証に、有効期限はありません。したがって、定期的な更新手続きも不要です。一度修了すれば、その資格は生涯有効となります。
ただし、注意点もあります。技術の進歩によって新しいプレス機械が導入されたり、関連する法令が改正されたりした場合には、知識を最新の状態に保つための追加教育(安全衛生教育)を受けることが望ましいとされています。
また、修了証を紛失してしまった場合は、講習を受けた機関に問い合わせることで再発行が可能です。いざという時のために、どこで受講したかは控えておくと安心です。
建設キャリアアップシステム(CCUS)には登録できる?
はい、この特別教育の修了証は、建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録することが可能です。CCUSは、建設業界で働く技能者の資格や現場での就業履歴などを記録・証明するためのシステムです。
この資格をCCUSに登録しておくことで、自身のスキルレベルを客観的に証明でき、キャリアアップや適正な評価につながるというメリットがあります。建設業に従事している方、またはこれから目指す方は、ぜひ登録を検討してみてください。
参考URL
- 厚生労働省 安全衛生情報センター - 労働安全衛生法や関連規則の条文など、法令に関する詳細情報を確認できます。
- 中央労働災害防止協会(中災防) - 安全衛生に関する教育や情報提供を行っている機関です。講習内容の参考にできます。
- 建設キャリアアップシステム - 建設キャリアアップシステムの公式サイトです。技能者登録の方法などを確認できます。